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第一章 第三節 動き始めた運命
9 戦意喪失
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トーヤが言う通り、あの剣で打たれるままになっていては命を落とさぬとしてもどのようなケガをするか分からない。
さすがのルギが、僅かに剣に手を伸ばすような仕草をしたその時、
「ルギ、相手をしてあげなさい」
透き通る声が、さほど大きくはないのに澄み渡るような声が、その場の全員の耳に心地よく届いた。
マユリアであった。
ミーヤが急いで片膝を付いてその場で頭を下げる。
ルギもフェイも、そしてダルも、周囲で見ていた侍女や衛士、みんなが同じ姿勢を取る。
その中でトーヤ一人が闘志を身にまとわせたまま、立ったままでそちらを見た。
「おじぎを……」
ミーヤが慌てて声をかけるが、トーヤの耳には入らない。
「よう、お久しぶりだな、マユリア」
仮にも神たるマユリアに対するあまりに不遜な物言いに、トーヤ以外の誰もが固まった。
ルギが、頭を下げたまま殺気をみなぎらせる。
次の瞬間、マユリアが微笑んだ。
「お久しぶりですね、トーヤ」
誰もが息をするのを忘れた。
「先程から見せていただいていました。本当にルギは役目に真面目過ぎて。申し訳ないことをしましたね」
こぼれるような笑顔でそう言う。
「あんたはいっつもそうだよなあ……」
トーヤが剣を下ろし、ふうっとため息をついた。
「いっつもそうやってこっちの気持ちを削いじまう」
「あら、そうなのですか?」
マユリアはころころと笑いながらトーヤたちに近寄ってくる。
「ルギ」
「はっ」
低頭したままルギが答える。
「おまえもあまり頑なにならず、少しぐらいお役目を楽しめば良いのですよ」
「申し訳ありません」
さらに低く頭を下げる。
「トーヤ、この者は実直なのです。あまりそういじめてやってはくださいますな」
「俺は別にいじめてなんか……」
心の中では舌打ちしたいぐらいの気分だったが、トーヤも大人しく矛を収めることにした。
「でもまあ、あんたからちょっと言ってやってくれよな」
「何をですか?」
「この人さあ、あまりにも目障りなんだよ。ずーっとそばにくっついて、だまーったまんまで、じろじろじろじろ。さっきあんたが言った通り、少しぐらい馴染もうってしてもいいんじゃねえか?」
「まあ」
またマユリアがころころと笑った。
「ルギは体が大きいので、確かに少しばかり目につきやすいかも知れませんね」
「そんだけじゃねえよ、俺の何が気に入らねえのか、なんか言ったら皮肉言うしよ。それ以外は何言っても丸無視だ、俺がいらっとしてもしゃあないだろう?」
そこまで聞いて、さらに楽しくてたまらないと言うようにマユリアが笑う。
光がこぼれるような、そんな笑顔にも周囲の誰もがとまどい続けていた。
『あんた』
さっきからトーヤがマユリアをそう呼ぶのを聞き、誰もが信じられない思いでいっぱいいっぱいになっている。しかもずっと友達扱いのように親しげに話しかけ、マユリアもそれを許している。
自分の目の前で何が起こっているのか。一番トーヤの近くにいたミーヤでさえも、気持ちが事実に追いついていかない。
「とにかくさ、さっき言ったように俺だけじゃせっかくのダルの修行にちょっとばかり足りねえからさ、その人にも手伝ってやってくれるように言ってくれねえかな」
トーヤが さっき言ったように「マユリアに言いつけ」る。
「ダル」
「は、はい!」
マユリアに直接話しかけられ、ダルが飛び上がるように返事をした。
「剣の修行をしたいのですか?」
「あ、あの、いえ、あの、はい」
どちらか分からないような返事をするダルに、またマユリアが笑った。
「何事も励むのは良いことです。必要ならばルギにも相手をしてもらってください」
「は、はい!」
胸いっぱいになったダルが、感激したまま深く深く頭を下げる。
「邪魔をいたしました。わたくしは戻りますから続けてください。そうそう、シャンタルもそちらでご覧になっていますよ」
マユリアが指差す方を一度見上げ、その存在を確かめるともう一度全員が頭を下げた。
トーヤをのぞく全員が。
さすがのルギが、僅かに剣に手を伸ばすような仕草をしたその時、
「ルギ、相手をしてあげなさい」
透き通る声が、さほど大きくはないのに澄み渡るような声が、その場の全員の耳に心地よく届いた。
マユリアであった。
ミーヤが急いで片膝を付いてその場で頭を下げる。
ルギもフェイも、そしてダルも、周囲で見ていた侍女や衛士、みんなが同じ姿勢を取る。
その中でトーヤ一人が闘志を身にまとわせたまま、立ったままでそちらを見た。
「おじぎを……」
ミーヤが慌てて声をかけるが、トーヤの耳には入らない。
「よう、お久しぶりだな、マユリア」
仮にも神たるマユリアに対するあまりに不遜な物言いに、トーヤ以外の誰もが固まった。
ルギが、頭を下げたまま殺気をみなぎらせる。
次の瞬間、マユリアが微笑んだ。
「お久しぶりですね、トーヤ」
誰もが息をするのを忘れた。
「先程から見せていただいていました。本当にルギは役目に真面目過ぎて。申し訳ないことをしましたね」
こぼれるような笑顔でそう言う。
「あんたはいっつもそうだよなあ……」
トーヤが剣を下ろし、ふうっとため息をついた。
「いっつもそうやってこっちの気持ちを削いじまう」
「あら、そうなのですか?」
マユリアはころころと笑いながらトーヤたちに近寄ってくる。
「ルギ」
「はっ」
低頭したままルギが答える。
「おまえもあまり頑なにならず、少しぐらいお役目を楽しめば良いのですよ」
「申し訳ありません」
さらに低く頭を下げる。
「トーヤ、この者は実直なのです。あまりそういじめてやってはくださいますな」
「俺は別にいじめてなんか……」
心の中では舌打ちしたいぐらいの気分だったが、トーヤも大人しく矛を収めることにした。
「でもまあ、あんたからちょっと言ってやってくれよな」
「何をですか?」
「この人さあ、あまりにも目障りなんだよ。ずーっとそばにくっついて、だまーったまんまで、じろじろじろじろ。さっきあんたが言った通り、少しぐらい馴染もうってしてもいいんじゃねえか?」
「まあ」
またマユリアがころころと笑った。
「ルギは体が大きいので、確かに少しばかり目につきやすいかも知れませんね」
「そんだけじゃねえよ、俺の何が気に入らねえのか、なんか言ったら皮肉言うしよ。それ以外は何言っても丸無視だ、俺がいらっとしてもしゃあないだろう?」
そこまで聞いて、さらに楽しくてたまらないと言うようにマユリアが笑う。
光がこぼれるような、そんな笑顔にも周囲の誰もがとまどい続けていた。
『あんた』
さっきからトーヤがマユリアをそう呼ぶのを聞き、誰もが信じられない思いでいっぱいいっぱいになっている。しかもずっと友達扱いのように親しげに話しかけ、マユリアもそれを許している。
自分の目の前で何が起こっているのか。一番トーヤの近くにいたミーヤでさえも、気持ちが事実に追いついていかない。
「とにかくさ、さっき言ったように俺だけじゃせっかくのダルの修行にちょっとばかり足りねえからさ、その人にも手伝ってやってくれるように言ってくれねえかな」
トーヤが さっき言ったように「マユリアに言いつけ」る。
「ダル」
「は、はい!」
マユリアに直接話しかけられ、ダルが飛び上がるように返事をした。
「剣の修行をしたいのですか?」
「あ、あの、いえ、あの、はい」
どちらか分からないような返事をするダルに、またマユリアが笑った。
「何事も励むのは良いことです。必要ならばルギにも相手をしてもらってください」
「は、はい!」
胸いっぱいになったダルが、感激したまま深く深く頭を下げる。
「邪魔をいたしました。わたくしは戻りますから続けてください。そうそう、シャンタルもそちらでご覧になっていますよ」
マユリアが指差す方を一度見上げ、その存在を確かめるともう一度全員が頭を下げた。
トーヤをのぞく全員が。
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