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第二章 第七節 残酷な条件
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「リルは、本当にこのままダルのそばにいて平気なのかな?見たところは大丈夫みたいに見えるが」
部屋に戻るとトーヤがミーヤに聞いてみる。
「私もやはり気になったのでこの間一度聞いてみました、そうしたら……」
「私ね、待つことにしたの」
リルがそう話してくれた。
「まず1つ目は、いつかダル様が私を好きになってくれる日がくるかも知れない、その日を待つの」
「リル……」
ミーヤはやはりそうなのかと心配になってリルを見た。
「誤解しないでね?これはあくまで可能性の一つとしてなのよ?」
「可能性?」
「ええ。だって、未来なんてどうなるか分からないのではなくて?もしかしたらこの先、そういうこともあり得るというだけの話よ。その可能性を全部捨ててしまう必要はないでしょう?」
「そうね、それは確かに」
「そして2つ目、これは私がまた誰かを好きになる日がくるかも知れない、その日を待つの」
「誰かを?」
「ええ、そうよ」
リルはにっこりと微笑んだ。
「私の初めての恋は叶わなかったけれど、これが最後だとはとても思えないの。またきっと誰かを好きになれる日がくると思うわ。そして今度は思いが叶うといいなと思っているの。だからその日を待とうと思うの」
「素敵ね、素敵な考え方だと思うわ」
ミーヤは思わず自分の頬が温かくなるのを感じた。自然と顔がほころぶ。
「誰かを好きになるって本当に素敵なことだと分かったの。これまでは、宮を辞して、そうしたらその後はお父様が選んでくれたどなたかの元に嫁ぎ、そうしてそのままの道を行くんだと思っていたのね。でも今は違うわ、私もきっと自分が選んだ誰かと一緒になりたいと思っているの。だから、そうじゃない人をお父様がすすめてきたとしてもお断りするわ」
「まあ」
少女が2人、ごく普通の恋の夢を語るように笑い合う。
「そしてね」
「まだあるの?」
「ええ、あるわ。3つ目は私のこの思いが熟成する日を待つの」
「熟成?」
「ええ、そうよ」
リルが続ける。
「ウイスキーって樽の中で時間を過ごすことですごくきれいな琥珀色になって、香りも味も深みを帯びていくんですって。私のこの思いも、私がきれいに育てればきっときれいな琥珀色になると思うの。今は、もしもダル様の思いが叶ったと聞いたら心のどこかが痛むのでしょうけれど、痛みは痛みとして受け止めてお二人の幸せを祈るわ。そうすることで初めてのこの思いも壊れてしまわずにきれいに私の中の一部になってくれる、そう思っているの」
「まあ、まあ、リル、本当に素敵だわ」
ミーヤがリルの手を取って踊らんばかりに振る。
「私は一度自分のこの思いを自分で壊そうとしていたんだわ。ダル様にひどいことをしてやりたい、そうして3つ目の可能性を壊してしまおうとしていた。そうすることで1つ目の可能性も2つ目の可能性もなくなるというのにね。そんなことに気が付かなかったのよ、本当に人間というのは怖いわ……でもシャンタルが教えてくださった、そんなことはやめなさいって……」
リルはそっと下を向いた。
「本当に、託宣をいただかなければどうなっていたのか、それを思うと怖くて……」
「リル、リル、もう大丈夫よ、リルは本当に素敵だわ」
ミーヤがそう言ってリルに抱きついたのでリルが目を丸くする。
「まあミーヤ、あなたってそんなこともできたのね」
「え?」
「ええ、だって、にこにこはしていてもどこかいつもツンと取り澄まして、私は侍女の中の侍女でごさいますって顔をして、ちょっと近寄りがたい感じだったのに」
「え、私、そんなだった?」
「ええ、そうよ」
「自分ではそんなつもりはなかったのだけれど……」
「そうなのかも知れないわ。でも、私の目からは、選ばれて侍女になったのではない私から見るとそう見えていたの、ごめんなさいね」
「まあ、リル……私こそ、リルたち行儀見習いの方たちは私たちとは違うと思っているような、そんな風に思っていたの……ごめんなさい」
「じゃあ、お互いにごめんなさいね」
「ええ、そうね」
そうしてミーヤはリルと本当に友達になれたのだと思った。
「そうか、そんなこと言ってたのか……」
「そうなんです。リルは、本当に立派で素敵な女性だと思います」
「ダルのやつ、もったいないことした……いや、あの、そういう意味じゃなく、だな」
「いいえ、私も本当にそう思います」
「だよな、うん、だよな」
トーヤがほっとしたように言う。
「アミちゃんがだめだってんじゃねえんだよ、リルもいい子だってことだ。はーうまくいかねえよなあ。いっそダルが2人いてそれぞれがうまくいきゃいいのに。そうだなあ、あいつ細長いから2つに切って2人になんねえかな?」
「何を言ってるんですか」
ミーヤがそう言って笑う。
「失礼する」
その時、扉が叩かれすぐに開かれた。
ルギであった。
「マユリアがお呼びだ」
「誰が呼ばれた?」
「こちらからはおまえとミーヤとダルの3人だ」
思った通りリルは呼ばれていない。仕事のことは知らされていないからだ。
「ってことは、いよいよ秘密が明かされるってことか」
「だろうな」
「分かった、すぐ行く」
トーヤの返事を聞きルギは部屋を出ていった。
部屋に戻るとトーヤがミーヤに聞いてみる。
「私もやはり気になったのでこの間一度聞いてみました、そうしたら……」
「私ね、待つことにしたの」
リルがそう話してくれた。
「まず1つ目は、いつかダル様が私を好きになってくれる日がくるかも知れない、その日を待つの」
「リル……」
ミーヤはやはりそうなのかと心配になってリルを見た。
「誤解しないでね?これはあくまで可能性の一つとしてなのよ?」
「可能性?」
「ええ。だって、未来なんてどうなるか分からないのではなくて?もしかしたらこの先、そういうこともあり得るというだけの話よ。その可能性を全部捨ててしまう必要はないでしょう?」
「そうね、それは確かに」
「そして2つ目、これは私がまた誰かを好きになる日がくるかも知れない、その日を待つの」
「誰かを?」
「ええ、そうよ」
リルはにっこりと微笑んだ。
「私の初めての恋は叶わなかったけれど、これが最後だとはとても思えないの。またきっと誰かを好きになれる日がくると思うわ。そして今度は思いが叶うといいなと思っているの。だからその日を待とうと思うの」
「素敵ね、素敵な考え方だと思うわ」
ミーヤは思わず自分の頬が温かくなるのを感じた。自然と顔がほころぶ。
「誰かを好きになるって本当に素敵なことだと分かったの。これまでは、宮を辞して、そうしたらその後はお父様が選んでくれたどなたかの元に嫁ぎ、そうしてそのままの道を行くんだと思っていたのね。でも今は違うわ、私もきっと自分が選んだ誰かと一緒になりたいと思っているの。だから、そうじゃない人をお父様がすすめてきたとしてもお断りするわ」
「まあ」
少女が2人、ごく普通の恋の夢を語るように笑い合う。
「そしてね」
「まだあるの?」
「ええ、あるわ。3つ目は私のこの思いが熟成する日を待つの」
「熟成?」
「ええ、そうよ」
リルが続ける。
「ウイスキーって樽の中で時間を過ごすことですごくきれいな琥珀色になって、香りも味も深みを帯びていくんですって。私のこの思いも、私がきれいに育てればきっときれいな琥珀色になると思うの。今は、もしもダル様の思いが叶ったと聞いたら心のどこかが痛むのでしょうけれど、痛みは痛みとして受け止めてお二人の幸せを祈るわ。そうすることで初めてのこの思いも壊れてしまわずにきれいに私の中の一部になってくれる、そう思っているの」
「まあ、まあ、リル、本当に素敵だわ」
ミーヤがリルの手を取って踊らんばかりに振る。
「私は一度自分のこの思いを自分で壊そうとしていたんだわ。ダル様にひどいことをしてやりたい、そうして3つ目の可能性を壊してしまおうとしていた。そうすることで1つ目の可能性も2つ目の可能性もなくなるというのにね。そんなことに気が付かなかったのよ、本当に人間というのは怖いわ……でもシャンタルが教えてくださった、そんなことはやめなさいって……」
リルはそっと下を向いた。
「本当に、託宣をいただかなければどうなっていたのか、それを思うと怖くて……」
「リル、リル、もう大丈夫よ、リルは本当に素敵だわ」
ミーヤがそう言ってリルに抱きついたのでリルが目を丸くする。
「まあミーヤ、あなたってそんなこともできたのね」
「え?」
「ええ、だって、にこにこはしていてもどこかいつもツンと取り澄まして、私は侍女の中の侍女でごさいますって顔をして、ちょっと近寄りがたい感じだったのに」
「え、私、そんなだった?」
「ええ、そうよ」
「自分ではそんなつもりはなかったのだけれど……」
「そうなのかも知れないわ。でも、私の目からは、選ばれて侍女になったのではない私から見るとそう見えていたの、ごめんなさいね」
「まあ、リル……私こそ、リルたち行儀見習いの方たちは私たちとは違うと思っているような、そんな風に思っていたの……ごめんなさい」
「じゃあ、お互いにごめんなさいね」
「ええ、そうね」
そうしてミーヤはリルと本当に友達になれたのだと思った。
「そうか、そんなこと言ってたのか……」
「そうなんです。リルは、本当に立派で素敵な女性だと思います」
「ダルのやつ、もったいないことした……いや、あの、そういう意味じゃなく、だな」
「いいえ、私も本当にそう思います」
「だよな、うん、だよな」
トーヤがほっとしたように言う。
「アミちゃんがだめだってんじゃねえんだよ、リルもいい子だってことだ。はーうまくいかねえよなあ。いっそダルが2人いてそれぞれがうまくいきゃいいのに。そうだなあ、あいつ細長いから2つに切って2人になんねえかな?」
「何を言ってるんですか」
ミーヤがそう言って笑う。
「失礼する」
その時、扉が叩かれすぐに開かれた。
ルギであった。
「マユリアがお呼びだ」
「誰が呼ばれた?」
「こちらからはおまえとミーヤとダルの3人だ」
思った通りリルは呼ばれていない。仕事のことは知らされていないからだ。
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