132 / 177
第18章『ボクとイケボと恋心と!』〜恋愛シミュ実況が修羅場すぎて泣けてきた〜
演技のはずが、本気に聞こえてしまって
しおりを挟む
「選択肢①、『ずっと、そばにいてもいいですか?』が決まりました」
スタッフさんの無機質な声が、かえってボクの鼓動を跳ねさせた。
画面がゆっくりとフェードインし、校舎裏の静かな夕暮れ――。
ヒロイン(=ボク)が勇気を出して、攻略キャラ(=レイくん)に“本音”を伝える、そういうイベントシーン。
でも、もう今のボクにはわかってる。
この台詞は「演技」であるはずなのに……言ったら、何かが壊れる気がする。
それでも、配信は進んでいく。
コメント欄がどんどん沸騰していく。
「来た来た来たーー!」
「これは事件の予感」
「いのりんく、マジがんばれ!」
ああ……もう逃げられない。
だから、震える声で、言った。
「……ずっと、そばにいても……いいですか……?」
小さくて、弱々しい、けど、全部こもってる声だった。
ボク自身が思っていたよりも、ずっと“本気の声”だった。
「――もちろん。君がそう願うなら、何度でも答えるよ」
レイくんの返事は、落ち着いてて、優しくて、どこか“全部分かってる”みたいな響きで。
画面の中、アバターの彼が手を差し伸べてくる。
「じゃあ……まずは、手。繋ごうか?」
ゆっくりと、手を重ねられる演出。
実際にはVRゴーグルの中だけの接触なのに、なぜか本当に手を取られたみたいに、体温が上がった。
「う、うん……」
「やばいこれ、完全に告白イベ」
「レイの声、甘すぎてしぬ」
「ってか今の“うん”素だよね!?」
……リスナーのみんな、よく見てるなぁ。
ていうか、ボク、自分で自覚してる。
「演技の“うん”」じゃなかった。
完全に、“コウくんに手を取られた”リアルな反応だった。
次のシーン、教室での二人きり。
イベントは日常回だけど、ここから“攻略キャラ”がグイグイ来るターン。
レイ:「髪、跳ねてるな。ちょっと待って……はい、直った」
アバターの手が、ボクの髪にそっと触れる。
(えっ、嘘、今のタイミングで!?)
「ありがと……ふぇっ?」
突然の“頭ポンポン”演出。
こ、これは反則! 反則すぎる!
「頭ポンポン!?!?!」
「レイ~~~~~~!!!」
「Inori∞Linkちゃんの“ふぇっ?”が天使」
「~~~っ、ちょっ、そ、そういうのは心の準備っていうか、あの、えーと……っ!」
「演技だよ?」
……って、その声で言うのズルいんですってばぁ!
もう、わかんない……どこまでがセリフで、どこまでが本音で、どこまでがレイくんの“仕事”で、どこまでが……コウくんの“気持ち”なのか。
(演技なのに……なんで、こんなにドキドキするの……?)
次のイベントは、図書室。
ストーリー的には“秘密の共有”がテーマの、感情が深まる回。
攻略キャラは、ヒロインが落としたハンカチに気づいて、そっと返しながら言う。
レイ:「……君の持ち物って、なんだか“君らしい”よね。柔らかくて、あったかくて、優しくて……。なんか、触れてると安心する」
その声が。
耳元で囁くように、ボクの“防御”を全部溶かしていく。
(ダメだよそんな声。そんなの、恋しちゃうに決まってる……)
「……あ、ありがと……」
「表情やばくない?ってか絶対赤面してるでしょこれ」
「演技じゃなかったらどうする!?って思ってたら泣けてきた」
「いのりんく、恋って知ってしまった顔」
うん、知ったかも。
「恋」って、こういう気持ちなのかもしれないって。
頭じゃ「演技」だってわかってるのに、心がそれを否定してくる。
だってレイくんは、優しくて、ちゃんと見てくれてて、ちゃんと“いのり”として接してくれてる。
「……ボクが、ボクじゃなくても、こんなふうに、優しくしてくれるのかな」
小さな独り言を、誰にも聞かれないように呟いた。
そのとき――
「いのりちゃんは、いのりちゃんだよ。……他の誰にもなれなくていい。ボクは、君が“君のまま”でいてくれるのが、一番うれしいから」
「――っ!!」
今の……“セリフ”じゃない。
画面には、セリフウィンドウが出てなかった。
つまり、今の言葉は“アドリブ”だ。
(やっぱり……レイくん、何か、感じてくれてる?)
気づけば、配信を忘れて、じっとレイくんのアバターを見つめていた。
(もしかして、これは……“演技”の中に、混ざった“本音”なんじゃないか)
そう思った瞬間、心が跳ねた。
そして、怖くなった。
このままじゃ、ボク、ほんとに――
スタッフさんの無機質な声が、かえってボクの鼓動を跳ねさせた。
画面がゆっくりとフェードインし、校舎裏の静かな夕暮れ――。
ヒロイン(=ボク)が勇気を出して、攻略キャラ(=レイくん)に“本音”を伝える、そういうイベントシーン。
でも、もう今のボクにはわかってる。
この台詞は「演技」であるはずなのに……言ったら、何かが壊れる気がする。
それでも、配信は進んでいく。
コメント欄がどんどん沸騰していく。
「来た来た来たーー!」
「これは事件の予感」
「いのりんく、マジがんばれ!」
ああ……もう逃げられない。
だから、震える声で、言った。
「……ずっと、そばにいても……いいですか……?」
小さくて、弱々しい、けど、全部こもってる声だった。
ボク自身が思っていたよりも、ずっと“本気の声”だった。
「――もちろん。君がそう願うなら、何度でも答えるよ」
レイくんの返事は、落ち着いてて、優しくて、どこか“全部分かってる”みたいな響きで。
画面の中、アバターの彼が手を差し伸べてくる。
「じゃあ……まずは、手。繋ごうか?」
ゆっくりと、手を重ねられる演出。
実際にはVRゴーグルの中だけの接触なのに、なぜか本当に手を取られたみたいに、体温が上がった。
「う、うん……」
「やばいこれ、完全に告白イベ」
「レイの声、甘すぎてしぬ」
「ってか今の“うん”素だよね!?」
……リスナーのみんな、よく見てるなぁ。
ていうか、ボク、自分で自覚してる。
「演技の“うん”」じゃなかった。
完全に、“コウくんに手を取られた”リアルな反応だった。
次のシーン、教室での二人きり。
イベントは日常回だけど、ここから“攻略キャラ”がグイグイ来るターン。
レイ:「髪、跳ねてるな。ちょっと待って……はい、直った」
アバターの手が、ボクの髪にそっと触れる。
(えっ、嘘、今のタイミングで!?)
「ありがと……ふぇっ?」
突然の“頭ポンポン”演出。
こ、これは反則! 反則すぎる!
「頭ポンポン!?!?!」
「レイ~~~~~~!!!」
「Inori∞Linkちゃんの“ふぇっ?”が天使」
「~~~っ、ちょっ、そ、そういうのは心の準備っていうか、あの、えーと……っ!」
「演技だよ?」
……って、その声で言うのズルいんですってばぁ!
もう、わかんない……どこまでがセリフで、どこまでが本音で、どこまでがレイくんの“仕事”で、どこまでが……コウくんの“気持ち”なのか。
(演技なのに……なんで、こんなにドキドキするの……?)
次のイベントは、図書室。
ストーリー的には“秘密の共有”がテーマの、感情が深まる回。
攻略キャラは、ヒロインが落としたハンカチに気づいて、そっと返しながら言う。
レイ:「……君の持ち物って、なんだか“君らしい”よね。柔らかくて、あったかくて、優しくて……。なんか、触れてると安心する」
その声が。
耳元で囁くように、ボクの“防御”を全部溶かしていく。
(ダメだよそんな声。そんなの、恋しちゃうに決まってる……)
「……あ、ありがと……」
「表情やばくない?ってか絶対赤面してるでしょこれ」
「演技じゃなかったらどうする!?って思ってたら泣けてきた」
「いのりんく、恋って知ってしまった顔」
うん、知ったかも。
「恋」って、こういう気持ちなのかもしれないって。
頭じゃ「演技」だってわかってるのに、心がそれを否定してくる。
だってレイくんは、優しくて、ちゃんと見てくれてて、ちゃんと“いのり”として接してくれてる。
「……ボクが、ボクじゃなくても、こんなふうに、優しくしてくれるのかな」
小さな独り言を、誰にも聞かれないように呟いた。
そのとき――
「いのりちゃんは、いのりちゃんだよ。……他の誰にもなれなくていい。ボクは、君が“君のまま”でいてくれるのが、一番うれしいから」
「――っ!!」
今の……“セリフ”じゃない。
画面には、セリフウィンドウが出てなかった。
つまり、今の言葉は“アドリブ”だ。
(やっぱり……レイくん、何か、感じてくれてる?)
気づけば、配信を忘れて、じっとレイくんのアバターを見つめていた。
(もしかして、これは……“演技”の中に、混ざった“本音”なんじゃないか)
そう思った瞬間、心が跳ねた。
そして、怖くなった。
このままじゃ、ボク、ほんとに――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
管理人さんといっしょ。
桜庭かなめ
恋愛
桐生由弦は高校進学のために、学校近くのアパート「あけぼの荘」に引っ越すことに。
しかし、あけぼの荘に向かう途中、由弦と同じく進学のために引っ越す姫宮風花と二重契約になっており、既に引っ越しの作業が始まっているという連絡が来る。
風花に部屋を譲ったが、あけぼの荘に空き部屋はなく、由弦の希望する物件が近くには一切ないので、新しい住まいがなかなか見つからない。そんなとき、
「責任を取らせてください! 私と一緒に暮らしましょう」
高校2年生の管理人・白鳥美優からのそんな提案を受け、由弦と彼女と一緒に同居すると決める。こうして由弦は1学年上の女子高生との共同生活が始まった。
ご飯を食べるときも、寝るときも、家では美少女な管理人さんといつもいっしょ。優しくて温かい同居&学園ラブコメディ!
※特別編11が完結しました!(2025.6.20)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
みんなと同じようにプレーできなくてもいいんじゃないですか? 先輩には、先輩だけの武器があるんですから——。
後輩マネージャーのその言葉が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
そのため、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると錯覚していたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。そこに現れたのが、香奈だった。
香奈に励まされてサッカーを続ける決意をした巧は、彼女のアドバイスのおかげもあり、だんだんとその才能を開花させていく。
一方、巧が成り行きで香奈を家に招いたのをきっかけに、二人の距離も縮み始める。
しかし、退部するどころか活躍し出した巧にフラストレーションを溜めていた武岡が、それを静観するはずもなく——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
先輩×後輩のじれったくも甘い関係が好きな方、スカッとする展開が好きな方は、ぜひこの物語をお楽しみください!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
恋人、はじめました。
桜庭かなめ
恋愛
紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。
明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。
ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。
「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」
「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」
明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。
一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!
※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)
※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想などお待ちしています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる