イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

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第18章『ボクとイケボと恋心と!』〜恋愛シミュ実況が修羅場すぎて泣けてきた〜

告白イベント突入!?そして――

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「最終章イベント、スタンバイ入ります」



スタッフの声に、ボクの指先がわずかに震えた。



モーションキャプチャースタジオの中、空調の微かな音すら聞こえるほど静かな空気の中、ボクはレイくんと向き合っていた。



VRゴーグル越しに映るのは、校舎の屋上。

夕暮れ時、オレンジ色の光が差し込んで、世界がやさしい色に包まれている。



背景音楽は、ピアノだけの、ゆったりとした旋律。



“告白イベント”の空気だってことなんて……もう、痛いくらい分かってる。



でも、それ以上に――今、この空間に漂っている“現実の空気”が、甘すぎて、怖い。



視線を合わせるだけで息が詰まりそうで。

名前を呼ばれたら泣きそうで。

そして、声を聞いたら、たぶん、好きって言ってしまいそうで。



「……いのりちゃん」



その声が、鼓膜を震わせた瞬間、心臓が跳ねた。



「こ、こくはく、イベント……ですよね? 演技、ですよね……?」



「うん。演技、だよ。……だけど、今日はさ――ちゃんと伝えるよ」



え……?



その言葉が意味するものを、ボクはまだ受け止めきれないまま。



レイくんのアバターが、ゆっくりとボクのアバターに近づいてくる。



夕陽に照らされた彼の瞳が、まるで“いのり”だけを見ているみたいで、逃げられなくて。



「お前が……好きだ。ずっと、そばにいてくれ」



――ズドン。



心臓が、撃ち抜かれた音がした。脳内で。



セリフ。わかってる。これは、セリフ。



でも。



声が、本気すぎて。

目線が、まっすぐすぎて。

言葉が、やさしすぎて。



演技じゃ、信じられないよ、こんなの……!



「え……あ、えっと……そ、それって、えっと……」



頭の中が真っ白になって、セリフが……出てこない。



VRゴーグルの中で、アバターの“ボク”は固まったまま。



現実のボクも、ガチで沈黙してた。



「!?!?」

「リアル照れ入ったああああ」

「ガチ告白みたいに聞こえるんですけど!?」

「これ台本なの?台本じゃないの!?」



ざわつくコメント欄が視界にチカチカと流れるけど、何ひとつ入ってこない。



レイくんが、小さく笑った。



「……ごめん、ちょっと強引だった?」



やめて、そんな笑い方。



そんなの、本気で恋しちゃうじゃん……。



「……ボ、ボクも……っ」



喉が震える。唇が上手く動かない。

だけど、言わなきゃ――もう、抑えきれない。



「……ボクも……ずっと一緒にいたい……です……!」



自分の声が、すごく小さくて、すごく震えてて、それでも、画面越しに伝わっていく。



「……言ったあああああああ!!!」

「やばいやばい、可愛すぎて爆発する」

「Inori∞Linkちゃん、完全に恋しちゃってるじゃん」

「これは……事故じゃない、事件だ……」



もう、配信とか、演技とか、関係ない。



今、ボクはほんとに……“コウくん”と話してた。



アバター越しじゃない。画面の向こうでもない。



すぐ隣に立ってる“彼”に――気持ちを、伝えたんだ。



配信は、静かに、終幕へ向かっていった。



画面にはエンディングテーマが流れていて、視聴者に向けて「また次のコラボで!」という定番の締めコメントが出ていた。



でも――そのとき、ボクの心の中は、まったく終わってなかった。



スタジオに照明が戻り、VRゴーグルを外す。



レイくんも、隣でゴーグルを外した。



「あ……」



思わず声が漏れる。



目が合った。コウくんの、本物の目と。



その瞬間、ボクの中で、最後の理性が溶けていった。



ゴーグルマイクを手で外しながら、つい口元に残っていた“音声スイッチ”を探す。



「……お疲れ様でしたー。では、録画切りまーす」



スタッフの声を聞きながら、ボクはマイクのミュートボタンを押した“つもり”だった。



でも、それは――押しきれていなかった。



ふっと、肩の力を抜いたその瞬間。



「……ほんとに、コウくんのこと……好きになっちゃいそうで……こわい……」



ぽつりとこぼれた声は、完全に“オフレコ”のはずだった。



――のに。



「今、聞こえた……?」

「え、マイク切れてないの!?!?」

「マジか……これ……ガチじゃん」

「レイ、どうする……!?」



スタジオ内に沈黙が走る。



でも、コウくんは――ゆっくりと、ボクのほうに振り向いて。



その目が、まるで全部、分かっていたみたいに、やさしく笑った。



「……そっか。ありがとう。いのりちゃん」



その声が、いちばんずるかった。



もう、演技なんかじゃない。



全部が、リアルだった。
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