イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

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最終章 最終話 約束のキスを、世界で一番好きな君へ

約束の、その先へ

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静まり返ったステージ。

ひよりの最後の歌声の余韻が、まるで目に見えない光の粒子のように、会場の隅々まで満たしていく。



彼女は、大きな瞳からぼろぼろと涙をこぼし、言葉を失っていた。スポットライトの下、純白のドレスを纏ったその姿は、あまりにも儚く、そして、どうしようもなく美しかった。



コメント欄も、あの熱狂的な弾幕が嘘のように、一瞬だけ時が止まったかのようだった。

誰もが、彼女が紡いだ、あまりにも純粋な恋の物語に、心を奪われていた。



やがて、堰を切ったように、温かい拍手が会場を包み込む。

それは、次第に大きなうねりとなり、彼女の勇気と、その真っ直ぐな想いを祝福するかのようだった。



ひよりは、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、それでも世界で一番美しく笑い、深く、深くお辞儀をした。

エンディングの音楽が流れ始め、誰もがこの伝説的なライブの終わりを確信した、その瞬間だった。



ふいに、エンディングの音楽が止まった。

ステージの照明が再び、柔らかく、しかし力強く、ステージの中央を照らし出す。

そこに、俺はゆっくりと歩み出た。



「――ひより、誕生日おめでとう」



サプライズゲストとしての、俺の登場。

一瞬の静寂の後、コメント欄は《!?!?》《レイ!?》《え、本人!?》《神展開》と、観測史上最大級の速度で爆発した。

会場からも、驚きと歓声が入り混じった、地鳴りのような声が上がる。



呆然とするひよりの前に立ち、俺はスタッフからマイクを受け取った。

ずしりと重い。

これから俺が口にする言葉の重さが、そのままマイクに乗り移ったかのようだった。



心臓が、うるさい。でも、もう迷いはなかった。



(ここから、コウ視点)



ひよりの歌が、俺の胸に突き刺さっていた。二年分の想いを込めた、あまりにも真っ直ぐな恋文。

その一言一句が、俺たちの思い出の扉を、次々と開いていく。



すべては、あの日から始まったんだ。病院のベッドで、声を失って絶望に泣き濡れるお前の姿を見た、あの日から。

「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」と、震える声で俺にすべてを託してきた、あの瞬間から。



ただ、妹を助けたい、その一心で引き受けた代役。

それが、俺の人生を、こんなにも色鮮やかなものに変えてしまうなんて、思いもしなかった。



Vtuberレイとしての俺の隣には、いつだって他のヒロインたちの笑顔があった。

完璧な女王様気取りで、でも本当は寂しがりな夜々先輩。



ボイスドラマの練習で、唇が触れるか触れないかの距離まで近づいた時、彼女が見せた潤んだ瞳を、俺は忘れられない。



クールなようで、誰よりも熱い情熱を秘めたみなとさん。

無人島で、俺のために黙って魚を焼いてくれた、その不器用な優しさが、胸に染みた。



太陽みたいに明るくて、俺を“推し”として全力で支えてくれたメグ。

彼女の「コウくんを一番輝かせてみせる!」という言葉に、俺はどれだけ勇気づけられただろう。



妹のように懐いてくれた、るるちゃんやいのりちゃん。

彼女たちの純粋な憧れの視線が、俺を“ちゃんとした大人”でいさせてくれた。



マインクラフトで、お前が俺との“愛の巣”ばかり作っていた、あの夏の日。

無人島で、食料よりも俺との時間を選んでくれた、あのサバイバル。



温泉旅行の夜、二人で見た、満点の星空。

あの時、浴衣姿のお前の横顔が、あまりにも綺麗で、心臓が大きく跳ねたのを、俺は一生忘れない。



そして、二年前の、あの“卒業”文化祭。

すべてのステージが終わり、祭りの後の静けさの中、俺はお前を呼び出した。



「最高のステージだった」と伝えると、お前は「……それで、お兄ちゃんの答えは?」と、震える声で尋ねた。俺は、あの時、こう言ったんだ。



『俺は、ソロデビューのオファーを受ける。でもそれは、お前から逃げるためじゃない。お前の隣に、胸を張って立つためだ。だから……ひよりが18歳になるまで、待っていてほしい。俺が、自分の足で、お前の隣に立つのにふさわしい男になったら、その時は、ちゃんと答えを言わせてくれ』



ひより、お前の今日の歌は、その約束に対する、完璧すぎるアンサーだった。

あいつはもう、俺に守られるだけの妹じゃない。

自分の力で、こんなにも大きなステージの真ん中で輝いている。



俺が支えていたんじゃない。俺が、支えられていたんだ。



この声も、この居場所も、全部、ひよりがくれたものだ。

だから、今度は俺が返す番だ。



もう、迷わない。

この声も、この人生も、全部、彼女のために。



俺は、マイクを握りしめ、ひよりの瞳をまっすぐに見つめた。



「ひより。俺の声は、お前がくれたものだ。でも、俺の人生は、これからはお前自身に捧げたい」



それは《レイ》でもなく、“お兄ちゃん”でもない。“天城コウ”としての、初めての告白だった。



「俺は、妹としてじゃなく、一人の女性として、天城ひよりを愛してる」



ひよりの大きな瞳から、再び涙がこぼれ落ちる。

でも、それはもう悲しみの涙じゃない。



「……俺と、結婚してください」



数万人が見守る配信の中、俺はひよりの前に、ひざまずいた。

そして、ポケットから取り出した小さな箱を、震える手で開いた。



そこには、朝渡したネックレスとお揃いの、小さなマイクがデザインされた、銀色の指輪が光っていた。



静まり返ったステージ。

ひよりは、大きな瞳からぼろぼろと涙をこぼし、言葉を失っていた。



コメント欄も、一瞬だけ時が止まったかのようだった。

やがて、彼女は震える声で、しかしはっきりと、マイクに向かって叫んだ。



「……はいっ!」



その一言を合図に、コメント欄は歴史上最大級の祝福の弾幕で埋め尽くされた。

《うおおおおおお!》《結婚おめでとう!》《泣いた》《伝説になった》……。



俺は立ち上がり、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、それでも世界で一番美しく笑うひよりの手を取った。



「ひより、約束、覚えてるか?」



「……うん」



「二年前の、あの約束の……続き、しよっか」



俺は彼女をそっと引き寄せた。二年前の文化祭前夜にはできなかった、あの“約束の続き”。

数万人のファンの前で、俺たちは初めての、本当のキスを交わした。



その瞬間、会場からは割れんばかりの歓声が上がり、配信画面には無数の祝福のスパチャが虹のように降り注いだ。

それは、Vtuberの歴史に刻まれる、最高のハッピーエンドだった。
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