イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

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第3章『恋のロール、素顔のレイヤー』

『バレたくない、でも隠しきれない』

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 日曜の午後、LinkLive本社の編集ルームには、緊張が漂っていた。



「……で、これ。昨夜の“ノワール×レイ”のコラボ、ざっくり編集終わりました」



 映像班のスタッフが差し出したモニターには、すでに再生回数が5万を超えたアーカイブ映像。

 だが、その映像のコメント欄は……騒然としていた。



《夜々様の照れ顔やば》《あれガチやん》《キャラじゃない素が出てた》《レイくんの声、破壊力》《リアル彼氏の空気感だった……》



「……これ、どうします?」



 スタッフの問いに、マネージャーの神代カオルはニヤリと笑った。



「もちろん、このまま出すよ。“炎上ギリギリの生感”ってやつ? バズるに決まってる」



「えっ、でも……夜々さん的には、キャラが崩れたのってNGじゃ……」



「本人の気持ちはケアするけど、これは“伝説回”になる。バズの匂いってやつさ」



 神代はタブレットを操作しつつ、つぶやいた。



「……コウくんの“中の人”としての魅力、想像以上にエグいな」



 



***



 



 一方、コウはひよりと自宅のリビングで並んで座っていた。



「……ねえ、コレ。昨日の配信、めっちゃバズってるんだけど?」



 スマホを突き出すひよりの目が、じっと俺を見ている。



「え、ああ……まぁ、先輩といい感じにコラボできたかなって……」



「“いい感じ”ってレベルじゃないでしょ!? コメント欄、“ガチカップルじゃん”って荒れてるし!」



「そ、そうだった?」



「“そうだった”じゃないでしょっ!!」



 ひよりは頬をぷくっと膨らませ、クッションをぎゅっと抱きしめた。



「……夜々先輩と仲良くしてるの、見ててちょっとモヤモヤした」



「え?」



「……ううん、なんでもないっ!」



 明らかに“なんでもある”テンションだったが、これ以上つつくと怒られそうだったので黙っていた。



 その代わり、俺は視線をスマホに戻す。



 映像内の自分の声。

 そして、夜々先輩が見せた、素の表情。



(……たしかに、ちょっと“やりすぎた”かもしれない)



 自然体でやったつもりだった。でも、それが逆にリアルで。

 リアルすぎて、“演技”と“本音”の境目が曖昧になった。



「……もしかして、俺のせいで夜々先輩が困ってるのかも」



 そう呟くと、隣のひよりがぴくっと反応した。



「……ふーん。じゃあ、やっぱり夜々先輩のこと、気にしてるんだ?」



「え?」



「なんでもないって言ってるのに、ずっと気にして、考えて……お兄ちゃん、ちょろいなぁ」



「いや、そういう意味じゃ――」



「でも、ちょっとだけ安心した」



 ひよりは、クッションの陰からこちらをチラ見しながら、ぽつりと言った。



「……“誰にでも優しいお兄ちゃん”でも、ちゃんと“悩んでくれる”んだなって」



 それは、まるで……恋人未満の安心のような、微妙な距離感の優しさだった。



 



***



 



 その日の夜。

 LinkLiveのスタッフルームに、夜々が姿を見せた。



 誰よりも早く出社し、誰よりも早く編集データをチェックする姿に、周囲は緊張を隠せない。



 だが――夜々は、表情を変えずに言った。



「……このままでいい。編集も、タイトルも、煽りも」



「えっ、夜々さん……いいんですか?」



「……“素”を見せたら人気が落ちるって思ってた。でも……本当に大事なのは、ちゃんと見てくれる人がいるかどうか、だって……気づいたから」



 夜々は、スマホを取り出して一つの通知を開いた。



 《“あのままの夜々先輩が、好きです”》



 配信中、レイ=アマギ――コウが言った、その一言。



「……だから、逃げない。あたしも、ちゃんとやるよ。もう“キャラ”じゃなく、“私”として、伝える」



 



***



 



 そして夜の告知ツイートには、こう書かれていた。



「ノワール=クロエ、素顔で語る“私の好き”――今夜22時、生配信でお話します」



 告知は瞬く間に拡散され、トレンド入り。



 そして――その裏で、コウはそっと心を決めていた。



「夜々先輩が、ちゃんと“素顔”で向き合うって決めたなら――」



 俺も、彼女のその覚悟に……声で応えたい。
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