訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶

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本物の家族

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牧内さんから教えられた病院は市内の総合病院だった。
行方不明だと思っていたのに実は近くにいたなんて、誰が想像しただろう。灯台もと暗しとはこのことだ。

病室は大部屋で、扉の前で“柴原有紗”のネームプレートを確認すると、私は怒り心頭のまま病室へ乗り込んだ。

勢いよくカーテンを開けると、そこには思った以上に痩せ細り左腕には点滴をした姉が寝ていて、その姿に衝撃のあまり喉元まで出かかっていた文句のあれこれが何も出てこずに私はその場で立ち尽くした。

「美咲…?」

姉も驚いた顔をしてこちらをじっと見据える。

「…何してるの。何で入院してるの。何なのよ。」

「あー、バレちゃったかぁ。」

姉は情けなく笑うと、ゆっくりと体を起こした。その動きはとてつもなくぎこちない。

「ごめんね、勝手なことして。すずは元気にしてる?」

「元気…だけど。お姉ちゃんは本当に勝手だよ。私もすずも柴原さんもお姉ちゃんに振り回されて必死で生きているのに。何入院してるの?早く退院してよ。すずが可哀想でしょう?」

「うん、早く退院するわ。もうすぐ退院するから。」

笑いながら軽口を叩く姉だが、その姿を見てすぐに退院だなんて誰も思わないだろう。調子が悪そうなのがひしひしと伝わってくる。

「嘘ばっかり。そんなんで退院できるわけないでしょう?」

「どうしてここにきたの?」

「どうしてって、ずっと探してたんだからね。新しい恋人はどうしたのよ?ほんとに、何やってんの?」

怒っているのは私だけで、姉は至って落ちついていた。その温度差がまた腹立たしい。

「美咲は本当に素直でいい子だね。」

「ふざけないで。」
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