神様の住まう街

あさの紅茶

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駆け込み寺の月読様

04

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「勇気出してみようかなって思いました」

「いいんじゃないか? まあ、透が起きたときにアオイに好きだと伝えたことを覚えているといいがな」

「あっ、それ一番悲惨なパターンです。私の悩み損ですし」

「悩むのは悪いことではないよ」

月読様はふっと微笑んだ後、ゆっくりと右手を前に出した。するとどこから来たのか、一羽のカラスが音もなく月読様の手首に止まる。まるで月読様を訪ねてきたかのように。

「……カラス?」

八咫烏やたがらすだ。モフ太と同様に神の使いだ」

「こちらに須世理姫様がいると聞いてやって参った」

「カラスがしゃべった!」

「カアッ。我は八咫烏ゆえ、普通のカラスとは違うのだ。お主、まさか人か」

「人です」

「月読様、まさかまた人と契りを結ばれるおつもりか!」

「契り……って、はっ!」

「いやいや、お主ら何を勝手に想像しているのだ。私が愛しているのは喜与だけだと何度言えば……まあいい。それで、用件はなんだったか。須世理姫なら酔いつぶれて寝ているよ」

「それではこの手紙を須世理姫様にお渡しくだされ。大国主様からでございます」

八咫烏は羽の中から二つに折りたたんだ和紙を取り出し、月読様に渡す。「愛しのまいはにい」という文字が見えたのは見て見ぬふりしておこう。

「須世理姫に渡しておこう」

「それでは我はこれにて。人よ、月読様をたぶらかすでないぞ」

「なっ」

八咫烏はビシイッと指さすように羽を私に突き出してから、また静かに夜の闇へ消えていった。

たぶらかすって、失礼な。月読様はとても素敵で大好きな神様だけど、そういうんじゃないし。私が好きなのは透さんだし。

……そっか。やっぱり私、透さんが好きなんだな。まさか八咫烏に自分の気持ちを再確認されるなんて思わなかった。

「どうかしたか?」

「ううん。月読様って一途なんだなーって思ってただけです」

「アオイのことも好いておるよ」

「あー、キヨさんに怒られる!」

「喜与に怒られたいものだな」

月読様の楽しそうな笑い声が夜空に響く。夜を統べる偉大な神様の深い愛情に触れて、私のちっぽけな悩みなんて吹き飛んでいったみたいだ。なんて心が満たされるのだろう。

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