【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら

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第五章 王国動乱

123.王都の片隅(2)

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「リーヤボルクの兵士どもは、実際、品がなさ過ぎるな」


 ピュリサスは、ガラの肩を抱いたまま話を続けた。

 かつてアイカが不逞騎士に襲われた土間に置かれた作業用のテーブル。普段はガラが食材を刻んでいる。王都でも名の知れた若手の親分2人に挟まれ、ガラは妙に照れくさく居心地が悪い。

 
「ノクシアス。お前が娼館の手配に駆け回り出したときは、なにを大袈裟なって思ってたが……、お前が正解だった」

「おう。俺は間違わねえ」

「ふふ。へらず口は相変わらずだが、ウチのシモンも、東の元締チリッサも、お前のことは見直してる」

「そうかよ」

「……揉めごとや小競り合いは増えたが、なんとか街は治ってる」


 ガラも小さく頷いた。

 街路には品のないリーヤボルク兵が増えた。我が物顔に振る舞おうとするのを阻んだのは、無頼たちだ。

 そこかしこで喧嘩が起きたが、無頼は一歩も引かなかった。


 ――でも、ワル同士って、いつの間にか仲良くなるよね。


 無頼と兵士が、酔っぱらって肩を抱き合い街路を闊歩する姿も珍しくなくなった。


「交易を保護するっていうのが、摂政様の方針だからな」


 ノクシアスが吐く「様」という言葉に皮肉がこもる。


「王が討たれようと、王太子と第3王子が戦をしようと、王都の交易は止まらなかった……」

「そんなことしても、誰も得しないからな」

「摂政正妃様はすっかりで、摂政様を支えてる。どうなんだ? 摂政様自身が即位するなんて展開はないのか?」


 ノクシアスがマエルを通じてリーヤボルク兵――摂政サミュエルに繋がっているということは、周知の事実になっている。


「ムリだな」

「ほう……。王位に就けば、王都の富は総取りに出来そうだが」

「聖山の民がまとまれば、5万のリーヤボルク兵なぞ、ひとたまりもない。さすがに、そのくらいは分かっている」

「マエルの旦那が……、か?」

「いや、摂政様もさ。考えてもみろ。ヴィアナ騎士団と激突して3万も兵を失ったんだぜ、あいつら。数は侮れねえが、強くはない。スピロが裏切らなければ、勝敗は分からなかった。そのくらいは弁えているさ」

「ふむ……」

「ただ…………」

「なんだ?」

「……当分、帰らねえだろうな」

「なるほどな……。そういや、西南伯が王都に向かってるらしいが」

「らしいな」

「摂政様はどうするかな?」

「ふふっ。敵には回すまいよ」


 街の裏側を仕切る無頼の大物2人の話は、まだ14のガラにも興味深い。


 ――西南伯……さま……。


 ガラには雲の上の存在だが、


「内緒なんだけどね」


 と、アイカが教えてくれたのは、自分たちを救けてくれたリティアが、密かに西南伯の公女と親友だという話。

 を隠さないといけないとは、偉い人たちは難しい。

 王都から遠く離れた西南伯領について、ガラの知識はそのくらいしかない。けど、ピュリサスとノクシアスは、大ごとのように話をしているから、大ごとなのだろう。肩を抱かれたままで落ち着かないが、耳はそば立てる。


「ま。リーヤボルクは、ちまちまと富を吸い上げるつもりでいるってことだな」

「そうか……」

「あいつらとの付き合いは長くなる。ピュリサス、お前も身の振り方を考えておくんだな」

「どういうことだ?」

「いいかげん、俺の下に付けよ」


 と、ノクシアスは身を乗り出した。


「遠慮しとこう」

「そんなにシモンがいいかよ?」

「ああ。シモンの親分は、アレクの大親分の正統を継いでる」

「それだよ、ピュリサス」

「なんだ?」

「聖山の民は、正統を重んじ過ぎる。西域じゃあ、農民から成り上がった領主までいるって聞く。だが、テノリアで平民が列侯になるなんてことは考えられねえ。良くて騎士止まりだ」

「……それは、そうだが」

「俺は、それを変えたい」


 ノクシアスの言葉が熱を帯びた――。
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