【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら

文字の大きさ
171 / 307
第七章 姉妹契誓

160.狼の紋章

しおりを挟む
 アイカとアイラが再び砂漠を渡って旧都に向かうにあたって、護衛には百騎兵長のネビと、賊の首領ジョルジュが付くことになった。

 フェティが懐き始めていたジョルジュであったが、アイカの砂漠行で別の賊に出くわさないとも限らない。

 大きな賊の一党を率いるジョルジュがいれば、交渉するのにも安心であった。


「わははは! 殿下の家臣の列に加えていただいて、初のご下命。このジョルジュ、必ずやまっとうして見せますぞ」


 豪快に笑うジョルジュに、リティアも微笑んだ。


「砂漠にジョルジュほど詳しい者はおるまい。よろしく頼む」

「はははっ! しかし、プシャンの狼も一緒ならば、儂が教わることの方が多いかもしれませぬわ」


 ジョルジュは、分厚く皺だらけの手で、タロウとジロウの背を撫でた。

 さらに、リティアは、カリュにも同行を命じた。

 侍女であるカリュを行かせるのなら、アイカはいらないのではないかと思わないでもなかったが、リティアのアイカへの愛情の現れと、皆が受け止めた。

 そして、ロマナのもとから送られていた弓の名手で眼帯美少女チーナにも同行を命じ、そのままヴールに戻るように言い渡した。


「西南伯公女ロマナ殿のご厚意により、第3王女リティア、無事にルーファに入ることができた。チーナ殿におかれては、ご主君の大命を見事に果たされた。心から礼を申し上げる」

「もったいないお言葉にございます」

「ロマナ殿にも、よしなにお伝えくださいませ」

「はっ。必ずや」


  *


 新リティア宮殿の隣に建つ天空神ラトゥパヌの拝殿で、送別の式典が開かれる。

 タロウとジロウ、二頭の狼とともに膝を突いて首を垂れるアイカに、リティアが言葉をかけた。


「アイカ。苦労をかけるが、よろしく頼む」

「はっ。殿下のお心を、王太后陛下、ステファノス殿下に必ずやお届けしてまいります」


 と、別れの言葉を述べたアイカは、


 ――すっかり、言葉づかいが出来るようになったなぁ。


 などと、変なところで自分に感心していた。

 リティアは、クレイアに命じてアイカへの餞別の品を持ってこさせた。

 それは、アイカの身体のサイズに合わせてつくらせた、肩にあてる防具であった。


「アイカ、そなたには我が防具を分け与えたい」


 父王ファウロスから賜った重装鎧の一部を取り外してつくらせた、肩あてであった。

 リティア自らが、アイカの肩に装着させてやる。


「……アイカ。そなたの手には既に、母より受け継いだという小刀、それにロマナからもらった西南伯の弓矢がある。優しいそなたに、これ以上の武器は似合うまい……」

「殿下…………」

「よし、着けられたぞ! うむ! よく似合っている!」


 笑顔のリティアに一瞬、見惚れた後、アイカは自分の肩に乗った防具を見た。

 離れていても、リティアとずっと一緒にいれるような気がして、ほんのりと嬉しい。

 そして、肩あてに描かれたに気が付く。


「殿下……、これは……?」


 リティアの紋章に似ていたが少し違う。両脇に描かれる動物が、二頭の狼になっている。

 それが、タロウとジロウを意味することは明らかであったが……、王族を意味する王冠も描かれている……。

 リティアが、にこりと微笑んだ。


「アイカよ。私と姉妹のちぎりを結ぼう!」

「えっ⁉」

「我が義妹いもうととして、堂々と旧都に乗り込み、王太后陛下にお目見えせよ!」


 狼狽えたアイカは、思わずクレイアの顔を見た。

 リティア宮殿に入って以来、こういう時に頼ってきたのはクールビューティな巨乳侍女クレイアであった。

 クレイアは、穏やかな微笑みを浮かべて頷きをひとつ、アイカに返した。

 それを見たアイカは、ゆっくりとリティアの顔に視線を移した。


「い……、いいんですか……?」

「ああ。もちろんだ」


 リティアは、真剣な眼差しでアイカの黄金色の瞳を見詰めた――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

処理中です...