【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら

文字の大きさ
172 / 307
第七章 姉妹契誓

161.姉妹契誓

しおりを挟む
 義姉妹になろうと、自分を見詰めるリティアの真剣な眼差しを、アイカはまだ受け止めきれずにいた。

 それを察した、リティアがニマリと笑った。


「それとも、なにか? アイカは、私の義妹いもうとになるのはイヤか?」

「そ、そんなこと……」

「アイカが義姉あねの方がいいと言うのなら……」

「あっ。義姉妹しまいは確定なんスね」


 アイカの口から思わず、砕けた言葉が突いて出た。

 リティアはいつもの悪戯っぽい笑みを、アイカに向けた。


「確定っスね」

「もう……、《天衣無縫の無頼姫》には、叶わないっス」

「ふふふっ」


 と、軽く笑ったリティアは、表情を改め、天に向けて両腕を開いた。


「我らが父神、天空神ラトゥパヌよ! そして、我が守護聖霊たる開明神メテプスロウよ、ご照覧あれ! テノリア王国第3王女リティアは、アイカを義妹いもうととし、生涯、愛し、慈しむことを、ここに誓う‼ もし、この誓いに違うことあらば、天よりいかづちを雨霰のごとく降らせ、リティアを罰し賜え!」


 居並ぶ家臣一同が跪いて、こうべを垂れた。

 アイカは、どうしたらいいか分からない。

 両腕をあげたままのリティアが、チラッとアイカに視線を向けた。


「……アイカも、誓うとこだ」

「あっ、ああ……、えっと……、誰に?」

「アイカの神様でいい」

「あ、えっと……」


 アイカは、リティアの真似をして、両腕をあげた。

 しかし、どうにもしっくりこない。


 ――自分……、やっぱり、根は日本人なんで……。


 と、柏手を2回打った。


「リティア……義姉ねえさん……を、……ずっとずっと大切にします!」


 両腕をおろし背筋を伸ばしたリティアが、右腕を大きく払った。


「これにて神への契誓けいせいは成った! アイカはまこと、我が義妹いもうとである! 皆も、さよう心得よ!」

「「「はは――っ!」」」


 最もアイカに近しく接してきたクレイアが、一歩前に進み出た。


「おめでとうございます。アイカ殿

「でっ……んか……」

「我ら一同。リティア殿下にお仕えするのと同様、アイカ殿下への忠誠をお誓い申し上げます」



 後に《救国姫》とも讃えられる、アイカ姫が誕生した瞬間であった。

 無頼姫リティア、蹂躙姫ロマナと並び称されることになる、救国姫アイカ。

 再び三姫さんき相見あいまみえ、聖山の大地の動乱を鎮めるまでに、アイカはまず自分の招魂転生の意味を知ることになる。

 その波瀾と奇跡に満ちた旅が、ついに幕を開けようとしていた。


 *


 新リティア宮殿を出てルーファの街外れまで、リティアはアイカを見送った。


「アイカが、私から離れるべきだと考えた理由が、……私にも解ってきた」

「リティア殿下……」

「ん? 義姉ねえさんとは呼んでくれんのか?」

「えっ?」

「親しみを込めて『義姉ねえちゃん』でもいいぞ? ……ほら。早く。さっき、神様にはそう呼んでくれていたではないか?」

「……ね、義姉ねえ……さま……」

「おっ! それもいいな! 義姉ねえ様! ……アイカのことは、どこにいても、リティア義姉ねえ様が見守っているからな」

「はい…………」

「……それと、旧都で使いを果たした後、まっすぐに帰って来なくてもよい」

「え? それは……?」

「アイカの心が求めるままに行動するがいい。アイカと、タロウとジロウの守護聖霊が道を照らしてくれよう……」


 リティアは、ニコッと快活に笑った。


「せいぜい、寄り道してこい! その間に、私もアイカの義姉あねに相応しい女になっておこうぞ!」

「……行って参ります。リティア……義姉ねえ様」

「うむ! 便りは寄越せよ! この《天衣無縫の無頼姫》リティアが帰還するまで、聖山の大地のことは義妹いもうとアイカに任せたぞ!」


 二人は、笑顔で別れた。

 砂漠の向こうに小さくなるアイカたちを、見えなくなるまでリティアは見送った。

 踵を返したリティアは、為政者の表情に戻っていた。


  *


「それでは、アイカ殿下! まずは、どちらに向かいますかな?」


 モジャモジャの髭を撫でるジョルジュが、ニンマリと笑った。


「北へ……行こうかな……なんて……」

「はっは! アイカ殿下は、すでに我らのご主君! そんな覇気のないことでは困りますな!」

「うっ……、そんなぁ……」


 困り顔になったアイカに、カリュが優しく声をかけた。


「アイカ殿下のペースで良いのです。ただ、我らは既にアイカ殿下に、身命を捧げる身。さようお心得いただければ」

「あうっ……」


 アイラが、アイカの肩を抱いた。

 そして、耳元でささやく。


「私は、友だちのままでいいぞ?」

「アイラさん……」

「けど、周りが戸惑うから……、なっ」


 アイラの瞳を見詰めると、柔和な輝きを帯びていた。

 大きく息を吸い込んで、ゆっくり吐き出したアイカは、静かに一団に命じた。


「まっすぐ北に向かって、山岳地帯を抜けて行きます」

「「ははっ」」

「北の大路に、大回りして旧都テノリクアを目指します」

「……なるほど。それなら賊に遭う可能性も減りましょうな」


 と、ジョルジュが唸った。


「それと……、私が育った山奥の辺りを、通り抜けることになると思うんです……」

「里帰りですな」


 強面のネビが、北に聳える山岳地帯に目を細める。

 山頂部には、まだ雪が積もって見えたが、到着するころには雪解けが始まっているはずである。


 《無頼姫の狼少女》にして、第3王女義妹となったアイカ、

 本人も未だ知らぬ廃太子の隠れた孫娘にして、無頼の娘として育ったアイラ、

 優れた間諜の侍女カリュ、

 暗器使いの百騎兵長ネビ、

 賊の首領ジョルジュ、

 眼帯美少女チーナ、

 そして狼タロウとジロウの旅が始まる――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

処理中です...