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第七章 姉妹契誓
162.留守中の王女
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義妹となったアイカが、リティアのもとから旅立ってしばらく後――、
驚愕の報せがリティアのもとに届いた。
――第3王子ルカス、王太子バシリオスの賛同を得て国王に即位。
すでに、大神殿においてバシリオス列席のもと戴冠式を済ませたという。
予想しなかった展開ではなかったが、リティアは指を噛んだ。
「間が悪いな……。アイカを行かせる前に、報せが入っておれば」
しかし、砂漠を旅だったアイカを追い駆けるのは難しい。それに、そのために割ける人員も限られている。
傍に控えていたクレイアが、恐れながらと、口を開いた。
「アイカ殿下ならば、大丈夫にございます」
「そうか……。クレイアは、なぜそう思う?」
「アイカ殿下は無口で控え目に見えて、物事をよく観察しておられました。リティア殿下のお背中も、いつもジッと見詰めていらっしゃいました。……もっとも、背中だけではありませんでしたが」
「ま、それはな」
二人は共通した苦笑いを浮かべた。
――絶対、コイツは美麗神ディアーロナに背くことを考えてる!
と、確信したことは一度や二度ではない。
ただ、《聖山の民》としてあまり経験のない、アイカの『愛でる』視線は、二人にとって意外なことに心地よいものであった。
「幼く見えますが、心の内は大人びたところもございます。思慮深い一面に、何度か助けられたこともございます」
「ふむ……」
「きっと、リティア殿下の御妹君として、臨機応変に大役を務められますでしょう」
「妹……としてな……」
リティアはクレイアに、クッと小さく頷いて見せた。
自ら義姉妹の契りを結んだアイカを信じることに決めた。
*
ただ、それから続々と届く報せに、リティアの眉を曇らせる一方であった。
――ラヴナラの王弟カリストス、ルカス即位に不賛同を表明。
――アルナヴィスの第4王子サヴィアス、同じく不賛同。
――西南伯公女ロマナ、祖父ベスニク帰還まで新王への参朝の判断を保留する旨、表明。
――西南伯ヴール候妃、第2王女ウラニア、不賛同。
――ヴール滞在中のバンコレア侯妃、第1王女ソフィア、不賛同。
そして、
――旧都テノリクアの第2王子ステファノス、ルカス即位に不賛同を表明。
バシリオス謀叛以来、沈黙を続けていたステファノスが、ついにその意思を明らかにした。
ただ、同じく旧都にある、王太后カタリナと王妃アナスタシアの意向は、依然、伝えられない。
どちらも《王の子》ではないため、即位に関して、直接の影響力はない。しかし、特にバシリオス、ルカス兄弟の生母であるアナスタシアの意向は《聖山の民》にとって大きな関心事であった。
クレイアが、リティアに問うた。
「殿下は、いかがなさいますか? ご意向を表明されるようでしたら、王都のシルヴァ殿と連携をとりますが」
「いや、やめておこう。聖山の大地を留守にした王女が、なにを言っても滑稽に映るだけだ」
「かしこまりました」
「しかし……、予想はしておったが、聖山の民が一枚岩になれぬとは嘆かわしい限りだな。ルカス兄のもとで結集するなら、それはそれでいいと思っていたのだがな」
というリティアの嘆きは、さらに歪な形で拡大してゆく――。
驚愕の報せがリティアのもとに届いた。
――第3王子ルカス、王太子バシリオスの賛同を得て国王に即位。
すでに、大神殿においてバシリオス列席のもと戴冠式を済ませたという。
予想しなかった展開ではなかったが、リティアは指を噛んだ。
「間が悪いな……。アイカを行かせる前に、報せが入っておれば」
しかし、砂漠を旅だったアイカを追い駆けるのは難しい。それに、そのために割ける人員も限られている。
傍に控えていたクレイアが、恐れながらと、口を開いた。
「アイカ殿下ならば、大丈夫にございます」
「そうか……。クレイアは、なぜそう思う?」
「アイカ殿下は無口で控え目に見えて、物事をよく観察しておられました。リティア殿下のお背中も、いつもジッと見詰めていらっしゃいました。……もっとも、背中だけではありませんでしたが」
「ま、それはな」
二人は共通した苦笑いを浮かべた。
――絶対、コイツは美麗神ディアーロナに背くことを考えてる!
と、確信したことは一度や二度ではない。
ただ、《聖山の民》としてあまり経験のない、アイカの『愛でる』視線は、二人にとって意外なことに心地よいものであった。
「幼く見えますが、心の内は大人びたところもございます。思慮深い一面に、何度か助けられたこともございます」
「ふむ……」
「きっと、リティア殿下の御妹君として、臨機応変に大役を務められますでしょう」
「妹……としてな……」
リティアはクレイアに、クッと小さく頷いて見せた。
自ら義姉妹の契りを結んだアイカを信じることに決めた。
*
ただ、それから続々と届く報せに、リティアの眉を曇らせる一方であった。
――ラヴナラの王弟カリストス、ルカス即位に不賛同を表明。
――アルナヴィスの第4王子サヴィアス、同じく不賛同。
――西南伯公女ロマナ、祖父ベスニク帰還まで新王への参朝の判断を保留する旨、表明。
――西南伯ヴール候妃、第2王女ウラニア、不賛同。
――ヴール滞在中のバンコレア侯妃、第1王女ソフィア、不賛同。
そして、
――旧都テノリクアの第2王子ステファノス、ルカス即位に不賛同を表明。
バシリオス謀叛以来、沈黙を続けていたステファノスが、ついにその意思を明らかにした。
ただ、同じく旧都にある、王太后カタリナと王妃アナスタシアの意向は、依然、伝えられない。
どちらも《王の子》ではないため、即位に関して、直接の影響力はない。しかし、特にバシリオス、ルカス兄弟の生母であるアナスタシアの意向は《聖山の民》にとって大きな関心事であった。
クレイアが、リティアに問うた。
「殿下は、いかがなさいますか? ご意向を表明されるようでしたら、王都のシルヴァ殿と連携をとりますが」
「いや、やめておこう。聖山の大地を留守にした王女が、なにを言っても滑稽に映るだけだ」
「かしこまりました」
「しかし……、予想はしておったが、聖山の民が一枚岩になれぬとは嘆かわしい限りだな。ルカス兄のもとで結集するなら、それはそれでいいと思っていたのだがな」
というリティアの嘆きは、さらに歪な形で拡大してゆく――。
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