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第九章 山湫哀華
204.若いふたりの恋の花園
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ザノクリフ王国に入って以来、アイカとアイラのサバトは盛り上がりに欠いた。
――みなさん……、どうにも垢抜けない。
いまのところ、クリストフが最も美形――、というのが、ふたりの見解であった。
王太后カタリナに、アイラの守護聖霊が美麗神ディアーロナであると審神けられてから、サバトはより鋭さを増している。つまり、評価が辛口になった。
――ちょっとやそっとの美形で《美しい》と称えては、ディアーロナに申し訳ない。
と、妙な信仰心が芽生えている。
その中にあってアイカは、顔を寄せるヴィツェ太守ミハイに対して、
――見込みはありますね。
と、謎の上から目線で、何度もうなずいてみせた。
そのミハイは、自分の眼光から目を逸らさないアイカを、すこし見直していた。
天幕に入って来るやオドオドとしていた小柄な少女であるが、肝のすわったところもある。
ふっ、と、鼻を鳴らしたミハイは、ほかの太守たちを見渡した。
「だって、そうだろう? この可愛らしいお嬢ちゃんが、本当にイエリナ姫かどうか証すものは、いまのところ王太子妃ミレーナ様の遺された小刀しかない」
「充分ではないと?」
アイカを挟んで座る、老貌のヴィスタドル太守セルギウが問うた。
ミハイはアイカから顔をはなし、皮肉めいた声音で応える。
「たまたま拾っただけかもしれねぇ」
「王家の古紋が刻まれておる。王家にあらざる者が所持しておれば、精霊の怒りをかうぞ?」
「実際にどんな怒りをかうのか、いまとなってはただの言い伝えだ」
「……古紋を手にする者など、おらんかったからのう」
セルギウは眉間にしわを寄せ、長い顎ひげをなでた。
職人めいた風情のプレシュコ太守ニコラエが、ミハイを見据えた。
「ミハイの言うことにも一理ある」
「だろう?」
「だが、ならば、どうせよと言うのだ?」
「精霊の《審判》を受けるべきだ。略式ではなく、正式な手順でな」
「それは、即座に、国王――女王に即位していただくのと同義だぞ?」
と、ボディビルダーのような巨体を反らせたグラヴ太守フロリンが、話しに割ってはいった。
ミハイは肩をすくめた。
「どうせ同じだろ? 俺たちが推戴した後で偽物でしたっていうより、よっぽどいいじゃねぇか?」
「ふむ……」
エドゥアルドが、みなを見渡した。
ミハイの言うことに、皆、一定の納得をしている様子である。
エドゥアルドが優しい口調でアイカに語りかけた。
「イエリナ姫のお考えはどうでしょう?」
「そ、それで、戦争は止まるんですよね?」
精霊の《審判》というものが、どういうものなのか、アイカには分かっていない。
しかし、悲惨な内戦を終わらせることができるのなら、なんでもするという気持ちであった。
左隣に座るミハイが、今度は穏やかな口調で応えた。
「あんたが本物のイエリナ姫で、女王に即位するなら、戦争は止まる。……精霊にも認められた正統な王位が戻れば、皆、従う」
「分かりました! それで行きましょう!」
力強く応えたアイカに、皆の見る目が変わった。
小柄な少女の決意に応える――、侠気にみちた視線がアイカに注がれた。
エドゥアルドが立ち上がると、みなもそれに続く。そして、アイカに向けて恭しく頭をさげた。
「内戦終結のため、命をも賭けてくださるというイエリナ姫のお覚悟。ふかく感銘を受けました」
「え゛っ……?」
――い、命を賭けて……!?
ひるんだアイカであったが、厳粛な雰囲気に対して、口をはさむことができない。
「……ご即位いただくにあたって、いずれ避けては通れぬ道とはいえ、まずは身を挺してでも戦争を止めたいというお覚悟に、我らも全身全霊をもって応えさせていただきます」
「あ……、よ、よろしくお願いします……」
アイカも、ぎこちなく頭をさげた。
命もかかるという儀式が、どのようなものかは分からない。
また軽率な判断をしてしまったと、すこし悔やんだが、
――や、やるしかないですよね……?
と、あとには退けなかった。
みなが、ふたたび着席している間に、アイカの耳元でカリュがそっとささやいた。
「……アイカ殿下のお命は、我らが必ずお守りいたします」
「あ……、はい……。すみません……」
「いえ。侍女のつとめにございます」
精霊の《審判》の挙行について合議が始まったが、それを老貌のセルギウが制した。
「もうひとつある」
「もうひとつ? なんだ、ご老体?」
ミハイが口の端をあげながら問うた。
セルギウは場の長老として、厳かな口調で応えた。
「《審判》の後とはなるが……、王配のことじゃ」
アイカは、むずかしい顔をしてうなずいた。
そして、視線をすーっと滑らせて、カリュの瞳を見つめた。
――王配ってなんですか?
というアイカの視線に、カリュが微笑みながら顔を寄せた。
「女王の配偶者……、つまり、アイカ殿下の旦那様のことです」
「だっ!!!」
思わず出た大声に、アイカは慌てて口を手でおさえた。
セルギウは、ふかい皺を、さらに深くして、悲痛な響きのする声で話しをつづけた。
「国王の妃を巡っては、これまで何度も争いの種となってきた。この場合は婿、王配であるが、先に定めておく方がよい」
「余計な火種はのこさず、精霊の《審判》を受けるべきか……」
筋肉の塊のような太い腕を組んだグラヴ太守のフロリンがうなずいた。
――あわわっ。……私、まだ13、……年が改まって14歳ですよ?
と、挙動不審になったアイカであったが、よく考えると、17歳で転生して8年、通算では25歳になる。リティアの義妹にしてもらったり、すっかり自分が幼いつもりでいたが、適齢期といえなくもない。
ミハイが鼻を鳴らした。
「エドゥアルドの旦那は、そのためにクリストフを連れて来たんだろ?」
「えっ!?」と、応えたのはアイカである。
ミハイが、エドゥアルドの顔を見据えた。
「主だった太守は、皆、政略結婚で正妻を迎えている。この乱世では当然のことだが、王配には相応しくない。……ところが、なぜか、どこからも嫁をとろうとしない太守が、ひとりいる」
「さて……?」
「エドゥアルドの旦那の遠謀深慮には頭がさがるぜ。……いずれ戻られるイエリナ姫の王配にと、クリストフの隣をあけておいた。そうだろう?」
つんと、クリストフの汗の匂いが、アイカの鼻によみがえった。
――ク、クリストフさんと……、結婚!? 私が!?
そしらぬ顔をしたエドゥアルドが、アイカを見た。
「……イエリナ姫のお気持ち次第である」
そして、一堂の顔を見渡す。
「みな……、考えてもみよ。この内戦が、いかにして始まったのか」
アイカも、かつて《精霊の泉》でクリストフが訥々と語り聞かせてくれた内戦勃発の経緯を思い返す。
――王弟ラドウは長年に渡って、王妃カミレアと密通してやがった……。
おそらく王妃にとっては意に染まぬ結婚であったのだろう。
男尊女卑の気風が濃いザノクリフ王国ではあったが、女性の恋心を軽んじ、モノのように扱ったツケが、数多の命を奪うことになったともいえる。
アイカを囲む5人の主要太守たちは、ふかく考え込んだ。
それはクリストフも同様であったが、その表情をみたアイカは、
――飽き飽きしてるんだよ。力づくでってヤツにな……。
というクリストフの言葉を思い出していた。
《精霊の泉》で再会して以降、自分を王配にという気配を感じさせたことは一度もない。
口も態度も性には合わなかったが、つねにアイカの気持ちを大切に扱ってもらってきた。西候セルジュに幽閉されたときは、命懸けで救出もしてもらった。
アイカは頬を赤く染め、うつむき気味の顔から上目遣いに、オズオズと口を開いた。
「ク……」
みなの視線が、アイカに集まる。
「……クリストフさんの、……お気持ちは? 私と……、結婚して、……嫌じゃないですか?」
場に緊張感が走ったが、実は主要太守5人の心は、ほのぼのとした好意的なもので満たされていた。
女王の配偶者とは、このような甘酸っぱい恋のように語られるものではない。
なんの気負いも感じられないアイカに、拍子抜けすると同時に、ひょっとすると名君になるのではないかという期待も抱かされた。
それはクリストフも同じで、アイカの問いに――、はげしく赤面した。
緊迫した政略の駆け引きの場が、急に若いふたりの恋の花園になったような生温かさに包まれる。
もちろん、カリュとチーナは乙女の視線でアイカを見守る。
アイカから視線を逸らしたクリストフが、つぶやくように応えた。
「嫌じゃ……ねぇ……よ……」
――俺たちは、なに見せられてんだ?
と、あごに手を充てたミハイが、呆れたように言った。
「じゃあ、決まりでいいな? イエリナ姫も、クリストフも」
その言葉に、アイカがクッと顔を上げた。
「じょ、条件があります!!!」
「なんだ?」
「く……、口が悪いのを……、なおしてほしいです…………」
天幕の中が、爆笑に包まれた。
カリュもチーナも堪えきれずに吹き出してしまい、その場にいる全員が、もっともだと、腹を抱えて笑った。
バツの悪そうにしたクリストフに、ミハイが問うた。
「で? どうする?」
「……わ、わかっ……りました」
熟れたりんごのように顔を真っ赤にしたアイカが、小さく頭をさげた。
「……よ、よろしくお願いします」
みなが、生温かい表情で、祝福の意をあきらかにして、会見の場はお開きとなった。
そして、アイカは命がかかるという《精霊の審判》に向かう――。
――みなさん……、どうにも垢抜けない。
いまのところ、クリストフが最も美形――、というのが、ふたりの見解であった。
王太后カタリナに、アイラの守護聖霊が美麗神ディアーロナであると審神けられてから、サバトはより鋭さを増している。つまり、評価が辛口になった。
――ちょっとやそっとの美形で《美しい》と称えては、ディアーロナに申し訳ない。
と、妙な信仰心が芽生えている。
その中にあってアイカは、顔を寄せるヴィツェ太守ミハイに対して、
――見込みはありますね。
と、謎の上から目線で、何度もうなずいてみせた。
そのミハイは、自分の眼光から目を逸らさないアイカを、すこし見直していた。
天幕に入って来るやオドオドとしていた小柄な少女であるが、肝のすわったところもある。
ふっ、と、鼻を鳴らしたミハイは、ほかの太守たちを見渡した。
「だって、そうだろう? この可愛らしいお嬢ちゃんが、本当にイエリナ姫かどうか証すものは、いまのところ王太子妃ミレーナ様の遺された小刀しかない」
「充分ではないと?」
アイカを挟んで座る、老貌のヴィスタドル太守セルギウが問うた。
ミハイはアイカから顔をはなし、皮肉めいた声音で応える。
「たまたま拾っただけかもしれねぇ」
「王家の古紋が刻まれておる。王家にあらざる者が所持しておれば、精霊の怒りをかうぞ?」
「実際にどんな怒りをかうのか、いまとなってはただの言い伝えだ」
「……古紋を手にする者など、おらんかったからのう」
セルギウは眉間にしわを寄せ、長い顎ひげをなでた。
職人めいた風情のプレシュコ太守ニコラエが、ミハイを見据えた。
「ミハイの言うことにも一理ある」
「だろう?」
「だが、ならば、どうせよと言うのだ?」
「精霊の《審判》を受けるべきだ。略式ではなく、正式な手順でな」
「それは、即座に、国王――女王に即位していただくのと同義だぞ?」
と、ボディビルダーのような巨体を反らせたグラヴ太守フロリンが、話しに割ってはいった。
ミハイは肩をすくめた。
「どうせ同じだろ? 俺たちが推戴した後で偽物でしたっていうより、よっぽどいいじゃねぇか?」
「ふむ……」
エドゥアルドが、みなを見渡した。
ミハイの言うことに、皆、一定の納得をしている様子である。
エドゥアルドが優しい口調でアイカに語りかけた。
「イエリナ姫のお考えはどうでしょう?」
「そ、それで、戦争は止まるんですよね?」
精霊の《審判》というものが、どういうものなのか、アイカには分かっていない。
しかし、悲惨な内戦を終わらせることができるのなら、なんでもするという気持ちであった。
左隣に座るミハイが、今度は穏やかな口調で応えた。
「あんたが本物のイエリナ姫で、女王に即位するなら、戦争は止まる。……精霊にも認められた正統な王位が戻れば、皆、従う」
「分かりました! それで行きましょう!」
力強く応えたアイカに、皆の見る目が変わった。
小柄な少女の決意に応える――、侠気にみちた視線がアイカに注がれた。
エドゥアルドが立ち上がると、みなもそれに続く。そして、アイカに向けて恭しく頭をさげた。
「内戦終結のため、命をも賭けてくださるというイエリナ姫のお覚悟。ふかく感銘を受けました」
「え゛っ……?」
――い、命を賭けて……!?
ひるんだアイカであったが、厳粛な雰囲気に対して、口をはさむことができない。
「……ご即位いただくにあたって、いずれ避けては通れぬ道とはいえ、まずは身を挺してでも戦争を止めたいというお覚悟に、我らも全身全霊をもって応えさせていただきます」
「あ……、よ、よろしくお願いします……」
アイカも、ぎこちなく頭をさげた。
命もかかるという儀式が、どのようなものかは分からない。
また軽率な判断をしてしまったと、すこし悔やんだが、
――や、やるしかないですよね……?
と、あとには退けなかった。
みなが、ふたたび着席している間に、アイカの耳元でカリュがそっとささやいた。
「……アイカ殿下のお命は、我らが必ずお守りいたします」
「あ……、はい……。すみません……」
「いえ。侍女のつとめにございます」
精霊の《審判》の挙行について合議が始まったが、それを老貌のセルギウが制した。
「もうひとつある」
「もうひとつ? なんだ、ご老体?」
ミハイが口の端をあげながら問うた。
セルギウは場の長老として、厳かな口調で応えた。
「《審判》の後とはなるが……、王配のことじゃ」
アイカは、むずかしい顔をしてうなずいた。
そして、視線をすーっと滑らせて、カリュの瞳を見つめた。
――王配ってなんですか?
というアイカの視線に、カリュが微笑みながら顔を寄せた。
「女王の配偶者……、つまり、アイカ殿下の旦那様のことです」
「だっ!!!」
思わず出た大声に、アイカは慌てて口を手でおさえた。
セルギウは、ふかい皺を、さらに深くして、悲痛な響きのする声で話しをつづけた。
「国王の妃を巡っては、これまで何度も争いの種となってきた。この場合は婿、王配であるが、先に定めておく方がよい」
「余計な火種はのこさず、精霊の《審判》を受けるべきか……」
筋肉の塊のような太い腕を組んだグラヴ太守のフロリンがうなずいた。
――あわわっ。……私、まだ13、……年が改まって14歳ですよ?
と、挙動不審になったアイカであったが、よく考えると、17歳で転生して8年、通算では25歳になる。リティアの義妹にしてもらったり、すっかり自分が幼いつもりでいたが、適齢期といえなくもない。
ミハイが鼻を鳴らした。
「エドゥアルドの旦那は、そのためにクリストフを連れて来たんだろ?」
「えっ!?」と、応えたのはアイカである。
ミハイが、エドゥアルドの顔を見据えた。
「主だった太守は、皆、政略結婚で正妻を迎えている。この乱世では当然のことだが、王配には相応しくない。……ところが、なぜか、どこからも嫁をとろうとしない太守が、ひとりいる」
「さて……?」
「エドゥアルドの旦那の遠謀深慮には頭がさがるぜ。……いずれ戻られるイエリナ姫の王配にと、クリストフの隣をあけておいた。そうだろう?」
つんと、クリストフの汗の匂いが、アイカの鼻によみがえった。
――ク、クリストフさんと……、結婚!? 私が!?
そしらぬ顔をしたエドゥアルドが、アイカを見た。
「……イエリナ姫のお気持ち次第である」
そして、一堂の顔を見渡す。
「みな……、考えてもみよ。この内戦が、いかにして始まったのか」
アイカも、かつて《精霊の泉》でクリストフが訥々と語り聞かせてくれた内戦勃発の経緯を思い返す。
――王弟ラドウは長年に渡って、王妃カミレアと密通してやがった……。
おそらく王妃にとっては意に染まぬ結婚であったのだろう。
男尊女卑の気風が濃いザノクリフ王国ではあったが、女性の恋心を軽んじ、モノのように扱ったツケが、数多の命を奪うことになったともいえる。
アイカを囲む5人の主要太守たちは、ふかく考え込んだ。
それはクリストフも同様であったが、その表情をみたアイカは、
――飽き飽きしてるんだよ。力づくでってヤツにな……。
というクリストフの言葉を思い出していた。
《精霊の泉》で再会して以降、自分を王配にという気配を感じさせたことは一度もない。
口も態度も性には合わなかったが、つねにアイカの気持ちを大切に扱ってもらってきた。西候セルジュに幽閉されたときは、命懸けで救出もしてもらった。
アイカは頬を赤く染め、うつむき気味の顔から上目遣いに、オズオズと口を開いた。
「ク……」
みなの視線が、アイカに集まる。
「……クリストフさんの、……お気持ちは? 私と……、結婚して、……嫌じゃないですか?」
場に緊張感が走ったが、実は主要太守5人の心は、ほのぼのとした好意的なもので満たされていた。
女王の配偶者とは、このような甘酸っぱい恋のように語られるものではない。
なんの気負いも感じられないアイカに、拍子抜けすると同時に、ひょっとすると名君になるのではないかという期待も抱かされた。
それはクリストフも同じで、アイカの問いに――、はげしく赤面した。
緊迫した政略の駆け引きの場が、急に若いふたりの恋の花園になったような生温かさに包まれる。
もちろん、カリュとチーナは乙女の視線でアイカを見守る。
アイカから視線を逸らしたクリストフが、つぶやくように応えた。
「嫌じゃ……ねぇ……よ……」
――俺たちは、なに見せられてんだ?
と、あごに手を充てたミハイが、呆れたように言った。
「じゃあ、決まりでいいな? イエリナ姫も、クリストフも」
その言葉に、アイカがクッと顔を上げた。
「じょ、条件があります!!!」
「なんだ?」
「く……、口が悪いのを……、なおしてほしいです…………」
天幕の中が、爆笑に包まれた。
カリュもチーナも堪えきれずに吹き出してしまい、その場にいる全員が、もっともだと、腹を抱えて笑った。
バツの悪そうにしたクリストフに、ミハイが問うた。
「で? どうする?」
「……わ、わかっ……りました」
熟れたりんごのように顔を真っ赤にしたアイカが、小さく頭をさげた。
「……よ、よろしくお願いします」
みなが、生温かい表情で、祝福の意をあきらかにして、会見の場はお開きとなった。
そして、アイカは命がかかるという《精霊の審判》に向かう――。
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