【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら

文字の大きさ
66 / 297

66.4代マレビトへの忠誠

しおりを挟む
日が沈み切る前に、シアユンさんと望楼ぼうろうのぼった。

緊張きんちょうから解放かいほうされてほうけたようになってたけど、さすがにあれだけ剣士たちをあおったあとに「今日は休みます」という訳にはいかない。

最終城壁に登る剣士たちの中には手を振ってくれたり、ガッツポーズをしてくれる人もいた。

俺はグッと顔面がんめんちからを入れて、一人ひとりに手をり、ガッツポーズを返していく。

突然暴露ばくろされたヤーモンの恋がやぶれるという犠牲ぎせいはあったものの、剣士の皆さんの気持ちがひとつになったのは有難ありがたい。

ただ、つい先日フラれたばかりの俺としてはヤーモンへの同情どうじょうねんが絶えない。

日没にちぼつと同時に、今晩も激しい戦闘が始まった。

心なしか剣士たちの剣技けんぎが、よりわたっているようにうつる。

屋根付きの篝火かがりびも問題なく使えているようだ。遠目にも人獣じんじゅうの姿がよく見えるようになっていたので、シーシの技術の確かさも改めて感じる。

けれど、精神的せいしんてきな疲れはかくしようもなく、シアユンさんに椅子いすすすめられたので座って観戦させてもらった。

ぼんやりと見ていたけど、南側城壁では、なんとなくチンピラさんたちの投石と剣士との連携れんけいが生まれているようにも思えた。

あの卓越たくえつした剣士さんたちがその気になれば、飛んで来る石を認識にんしきして把握はあくし、それをかして闘うことなど造作ぞうさもないことなのかもしれない。

まれに城壁を乗り越えてしまう人獣じんじゅうは、フェイロンさんや城壁下に陣取じんどる剣士たちがち取る。

今晩も南側城壁の下に陣取じんどるフェイロンさんは、おにつよい。

悠然ゆうぜん戦況せんきょうを見守るフェイロンさんの姿を見ながら、俺は剣士府けんしふ講堂こうどうでのことを思い出していた。

フェイロンさんは『4代マレビトの新シキタリ』というふだを、事前じぜんに用意してタイミングをはかっていたんだろう。えないおっさんだ。

と、苦笑にがわらいしてしまうけど、たのもしくもある。あのまま俺が話し続けるだけで、あのおさまったとも思えない。

シアユンさんは、マレビトが「新しいシキタリです!」って宣言せんげんしただけで皆に受け入れられるのはむずかしいのではないかって言っていた。今あるシキタリをしたりするなら尚更なおさらとも。

それですることにしたんだけど、あそこでフェイロンさんが呼吸こきゅうを合わせて押し切ってくれたから、スッと受け入れてもらえたんだと思う。

それにしても、『ほふる』なんて単語、初めて口にした。あそこでスベッてたら、ずかするところだった……。まあ、でも、フェイロンさんのアシストもあって、あの場は収まったし、剣士団の士気しきも上がったように見える。良しとしておこう。

――4代マレビト様に忠誠ちゅうせいを!

という、約300人の屈強くっきょうな剣士たちの地響じひびきのような声が耳にはだよみがえる。この絶体絶命ぜったいぜつめい危機大ピンチにあって、皆の心をひとつにするのに、かくになるものが必要なのはわかる。

ただ、それが自分っていうのは、少し重い。少しでもない。重い。

それに『忠誠』とか、どう受け止めたらいいのか、正直分からない。

でも、ほかに何がありるかっていうと、俺には思い付かないし、ほかにいないなら引き受けるしかない。皆が役割やくわり責任せきにんたしている中、俺だけ逃げるというわけにもいかない。

……ただの高校生、春から大学生だったんだけどなぁ。という気持ちは、この際、わきに置いておこう。全ては、生き残れてからだ。

――でも、4代目ってパッとしない人多いよなぁ……。

徳川将軍とくがわしょうぐんの4代目は家綱いえつなさんで、前の家光いえみつさんと次の犬公方いぬくぼう綱吉つなよしさんの間で、なんとなく印象が薄い。

鎌倉幕府かまくらばくふでは源氏げんじえて、最初の摂家将軍せっけしょうぐんになった藤原頼経ふじわらのよりつねさん。北条ほうじょうさんにいいようにやられたイメージしかない。

室町将軍むろまちしょうぐんでは一休さんにも出てくる義満よしみつさんの息子の義持よしもちさんで、なんか義満さんの政策を色々めにした人ってくらいしか覚えてない。

うーん、まだまだ受験生気分。

パッとしないと俺から思われてる4代目の皆さんも、きっと『忠誠』を受け止めてたんだろうなぁ。

集中力が途切とぎれがちな俺は、「4代マレビトの俺は、どんな風になるのかなぁ」なんて呑気のんきなことを考えながら、フェイロンさんの姿を、ぼおっとながめていたら、不意ふいにシュエンのことを思い出した。

大浴場でいつも無表情に湯にかってる黄色髪きいろがみの女子。イーリンさんから戦死した剣士の娘だって教えてもらった。

――この夜を、どうごしてるだろう?

お父さんとらしてた宿舎しゅくしゃで、今はひとりになってるって言ってた。

ちょっと様子を見に行ってみるか――。

俺はシアユンさんに後を任せて、望楼ぼうろうりた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...