【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

77.大浴場の大演説(2)

人獣じんじゅうが激しく吠ほえる鳴なき声ごえが響ひびいている。

シーシとヤーモンが空あけてくれた小窓こまどの前に駆かけ寄よって、城壁の真下ましたを手持てもちち行灯あんどんで照てらす。中で蝋燭ろうそくがクリンとなる機構きこうをシーシが付けてくれてて、下に向けても底そこの凹面おうめんに反射はんしゃした蝋燭ろうそくの光が届く。

櫓やぐらの壁に貼はり付いていたはずの人獣じんじゅうの姿はなく、地面でのたうち回ってる。

――効きく。

それだけ確認できれば、収穫しゅうかくは大きい。熱湯ねっとうなんかものともせずに登のぼってこられたらどうしようかと思ってたけど、これなら使える。

交代こうたいして下を覗のぞいてたシーシが、俺を見てニシッと笑った。

それから、城壁をよじ登る人獣じんじゅうたちの姿をミンユーに見てもらった。顔を青ざめさせてしまって申し訳なかったけど、ミンユーはしっかり観察かんさつしてくれた。

「どう？」

小窓こまどから離れたミンユーに尋たずねた。

「たぶん、大丈夫……。距離が取れれば、恐こわくない……」

短弓たんきゅうは射程しゃていが短いから、城壁から撃うち降おろすしかない。短弓たんきゅうの達人たつじんであるミンユーに実際の状況じょうきょうを確認してもらいたかった。

「でも……、見えないと、どうしようもない……」

「それはそうなのだ！ 明りのことはボクに任まかせておくのだ！」

と、シーシが胸を張はったその時、小窓から狼型おおかみがた人獣じんじゅうが首を突つっ込こんできた。

身体からだは通とおらない石造いしづくりりの壁に開けられた窓だけど、魂たましいが抜けるかと思うほど驚おどろいた。

召喚された第２城壁の櫓やぐらで見た虎型とらがた人獣じんじゅう以来の、至近距離しきんきょりで見た人獣じんじゅうだったけど、獰猛どうもうに牙きばをむき出しにして威嚇いかくしてくる狼型おおかみがた人獣じんじゅうに腰こしが抜ぬけそうになった。なにもかも抜かれてしまいそうな迫力だ。

あの時は一瞬いっしゅん「虎のお面めん？」とか思って呑気のんきなところがあったけど、今は、人獣じんじゅうの凶暴きょうぼうさを知っている。感じる怖おそろしさは、あの時の比ひじゃない。

イーリンさんが落ち着いて剣を振ると、狼型人獣の首が部屋の中に落ちた。

それをヤーモンさんが剣に突き差し、小窓から外に捨てる。

ミンユーは、まだ震ふるえている。無理もない。俺も震ふるえが止まらない。

長居ながいは無用むようと、すぐに櫓やぐらを降おりた。

櫓やぐらの下で待機たいきしてくれてたメイユイの護衛ごえいを受けながら、ミンユーを家に送り届け、宮城きゅうじょうに向かった。

道々みちみちにシーシと打ち合わせした。

「熱湯ねっとうは使えそうだ」

「そうだね！ 使いやすい仕組しくみを考えてみるよ！」

「ありがとう、頼んだよ」

「任まかせておくのだ！」

「あのさ、ちょっと思い付いたんだけど」

「なんなのだ？ ムチャは大歓迎だいかんげいなのだ！」

「人獣じんじゅうって焼やき殺せないかな？ 熱湯が効くってことは、熱には弱いってことだから、こう……、油をまいて火を点つけて……」

「うーん。残念ながら、それは、城壁がもたないのだ。原はらっぱでやれるんなら別だけど、あれだけの数の人獣じんじゅうを焼き殺すだけの火に炙あぶられたら、城壁が脆もろくなって崩くずれてしまうのだ」

「それはダメだね。城壁は生命線せいめいせんだ」

「うむ。でも、色々考えてみるのは、いいことなのだ！」

というやり取りをしながら、シーシは工房こうぼうに戻もどり、俺は望楼ぼうろうに昇のぼって今晩の戦況せんきょうを見守った。

そんなシーシが、今、俺の背中に身体からだを密着みっちゃくさせて、くにっ、くにっと洗ってくれている。

――くにっ（右）。

恥はずかしいから止やめて、なんて言い出せない。

――くにっ（左）。

ペースト状の石鹸せっけんは少し泡立あわだってきたけど、滑すべりのいい液体えきたい越ごしにツルペタ姉さんの肌はだの熱ねつが伝わってくる。

――くくにっ（右）。

ちょっとリズム変えてくるのも、……止やめてほしい。そのたびにドキッとしてしまう。

その時、右と左と、両腕が柔やわらかな感触かんしょくに包つつまれた。ふにゅん、むにゅん。

えっ？ と思って見ると、右腕は橙髪だいだいがみをした侍女のユーフォンさん、左腕はミンユーが、……はさんでた。

「なにをしてるのだ？ 今日はボクの番なのだ」

と、俺の背中に身体からだを密着みっちゃくさせたままのシーシが口を尖とがらせると、右腕をはさんでるユーフォンさんが屈託くったくのない笑顔で言った。

「だって、シーシじゃ腕は効率よく洗えないでしょ？」

……そういう、身体的特徴しんたいてきとくちょうをどうこう言うのは良くないと思います。

「それは、もっともなご意見なのだ」

って、認みとめるんですか。そうですか。

「それに、一人ずつじゃなかなか全員に順番じゅんばん回まわってこないし」

「またまた、もっともなご意見なのだ」

「みんなで協力すればいいと思うんだ！」

「その通りなのだ！ みんなで協力するのだ！」

って、俺の意見は……？

背中では、――くにっ（左）。

右腕は、――ふにゅん（上）。

左腕は、――むにゅん（下）。

３人の女子の泡あわだらけで温あたたかな柔肌やわはだに包つつまれて、俺の頭は爆はぜた――。ポンッ。