キャロットケーキの季節に

秋乃みかづき

文字の大きさ
15 / 47

(15)Spring

しおりを挟む
 紳士服コーナーは4階か
婦人雑貨、婦人服、婦人服…
とエスカレーターを上がって、目当ての紳士服エリアへ

「歩夢、予算はいくら?」

「まぁ特にないかな。
良いのがあったらどれでもって感じ。
とは言え100万円は困るけど。」

「さすがIT勤務!
歩夢ってさ、高級取りなのに倹約家だよね。
オシャレはしてるけど、高級ブランドで固めないっていう。
マンションも割とフツーの所だし。
めちゃくちゃ優秀なのに気取らない、歩夢のそういうところ好きだよ!」

「ありがとう?
で良いのかな?笑」

雑談しながらフラフラ歩いていると

あ、この店センス良さそう

細身のスーツがズラリ

「さっちゃん、ここ入ってみようかな。」

「あ、いいね。
かっこいいの沢山ある!」

えーと
スーツ買うのも久しぶりだな
まず色から決めるか

「いらっしゃいませ。
何かございましたらお声がけ下さい。」

店員のお兄さんが来た

独断で決めるより、プロに相談してみるか

さっちゃんも、相談しようって目で合図

「あの~すみません。
僕の場合、どんなカラーが合いますかね?」

「かしこまりました。
お手伝いさせていただきますね。
お客様の場合、肌の色と、その可愛らしい顔立ちから判断すると、
Spring(スプリング)タイプなんですね。」

「すぷりんぐ?」

するとさっちゃんが、

「ここ数年流行ってる、顔タイプ診断ってやつじゃない?
ですよね?!」

「そうでごさいます。
スプリングは、春のスプリング。
お客様はそのタイプに入りますので、そうすると…。」

店内を一周しながら、見繕って何着か持ってきてくれた

「春のような柔らかさ、また温かみを感じる、ベージュ、オレンジ、ピンク。
こういった色をどこか一点でも入れていただきますと、お顔がグッと映えます。」

ほーすごい!

さすがプロだな

自分1人では思いつかない色使い

ていうか、顔タイプなんとかっていうのも知らなかったし

「ねぇ、歩夢、試着してみようよ!」

さっちゃんの方がワクワクしてる 笑

「うん。
じゃあおすすめしてもらったの、試してみる。」

まずはスーツ自体がベージュ

カーテンを閉めて着替える



ジャッ

カーテンを開けて、外に出る

「ベージュのスーツって着たことないけど、こんなにしっくりくるんだ!」

「お気に召されて良かったです。」

店員さんも嬉しそう

「ただ…。
この色だと職場に着ていけないかな。
今日1日使ったら、しばらく出番がなさそう。」

「それでしたら…。
スーツはグレー、差し色でオレンジのネクタイはどうでしょう?
グレーとオレンジの相性は抜群ですし、何よりお客様のイメージにぴったりです。」

テーブルの上に並べて、説明してくれる

「ほんとだ!
これすごい素敵じゃん。
着てみなよ!」

さっちゃんに押されて試着室へ戻る

「ちなみにですね…」

店員さんがネクタイを2本見せてくれた

「こちらは無地のオレンジ。
そしてもう1本は、光の加減でシルバーの水玉が見えるというものなんですが…。
お客様はお若いですし、先ほど申しましたように可愛らしい顔立ちでいらっしゃいますので、私個人としては水玉がおすすめです。」

水玉かぁ

どうだろう

「歩夢!とりあえずおすすめのほうにしなよ。
無地は歳取っても付けられるけど、水玉は若い時だからこそ似合う柄じゃん。
地味なやつは、ジジイになってから思う存分付ければいいよ!」

まぁ確かに

って、さっちゃんの言葉がツボだったのか、店員さん笑い堪えてるw

水玉のネクタイを受け取り、再びカーテンを閉めた



ジャッ

「…あ、あ、歩夢~!
めちゃくちゃ似合ってる!
店員さんすごい!
的確なアドバイス、ありがとうごさいます!泣」

遠くから全身を鏡に映してみると、自分で言うのもなんだけどほんとにめちゃくちゃ良い感じ!

もうこのままの格好で店内歩きたい 笑

「ほんと、相談して良かったです。
自分じゃ出会えなかった組み合わせです。
ありがとうごさいました。」

「いえいえ。
お役に立てて私も嬉しいです。
では、ご購入で宜しいですか?」

「はい!」

↑僕より先に返事をするさっちゃん





 「いや~、今日は来てほんっとに良かったよ。
さっちゃん、ありがとう。」

「私、付き添っただけでほとんど何もしてないよ 笑」

「いやいや、さっきのネクタイのくだりは最高だった。
さっちゃんのひと押しがなかったら、あのネクタイ選んでなかったもん。」

「そこまでいうなら、じゃあどういたしまして。
でさ、私さっき、歩夢がお会計してる間にネットで調べてたんだけど。
ついでに今日、髪も染めない?!」

「えっ。
でもこれから美容室行ってる時間は…。」

「分かってる!
だから、市販のやつ買って歩夢の家で染めよう。
私やってあげるから。
そのへんでお昼だけサッサと食べてさ。」

面倒くさい…

だけどさっちゃん一生懸命やってくれてるしな

「分かった。
じゃあお願いする。」

「やったー!
あのね、スプリングの人は茶色の髪が合うらしいよ。
歩夢、大学時代は染めてたのに、就職してからはずっと黒髪だし。
そろそろイメチェンするのも良いと思うんだよね。」

「はいはい。
分かったよー。
調べてくれてありがとね。
今日はさっちゃんプロデュースって決めたもんね。」

「そうだよ任せて!
礼央さんの心、一気に掴みます作戦。」

「なにそれ 笑。
なんか作戦名が直接的なうえ、ダサい 笑。」

「歩夢のためにやってあげてるんでしょー!
もう。
まぁいいよ。
それよりお昼ご飯食べに行こ。
時間ないから、ハンバーガーにしちゃお。」

そう言って、チェーン店のハンバーガー屋に向かって歩き出した。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】

カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。 逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。 幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。 友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。 まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。 恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。 ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。 だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。 煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。 レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生 両片思いBL 《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作 ※商業化予定なし(出版権は作者に帰属) この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

漫画みたいな恋がしたい!

mahiro
BL
僕の名前は杉本葵。少女漫画が大好きでクラスの女の子たちと一緒にその話をしたり、可愛い小物やメイク、洋服の話をするのが大好きな男の子だよ。 そんな僕の夢は少女漫画の主人公みたいな素敵な恋をすること! そんな僕が高校の入学式を迎えたときに漫画に出てくるような男の子が登場して…。

泣き虫少年とおこりんぼう君

春密まつり
BL
「オレ、お前のことキライ……に、なりたい」 陸上部で活躍する陸と、放送部からグラウンドを眺める真広は、小さい頃から一緒にいる。 いつからか真広は陸に対して幼馴染以上の感情を抱くようになっていた。 叶うはずのない恋を諦めなければいけないというのに傍には居たいので突き放すことができないままだ。 今日も放課後の放送室で二人話をしていたが、女の子が真広に会いに訪れて不穏な空気になってしまう。 諦めたくても諦められない、意地っ張りの恋の行方は――。 ▼過去に発行した同人誌の増補版です。  全17話を11月末までにはすべてUP予定です。

不器用に惹かれる

タッター
BL
月影暖季は人見知りだ。そのせいで高校に入って二年続けて友達作りに失敗した。 といってもまだ二年生になって一ヶ月しか経っていないが、悲観が止まらない。 それは一年まともに誰とも喋らなかったせいで人見知りが悪化したから。また、一年の時に起こったある出来事がダメ押しとなって見事にこじらせたから。 怖い。それでも友達が欲しい……。 どうするどうすると焦っていれば、なぜか苦手な男が声をかけてくるようになった。 文武両道にいつも微笑みを浮かべていて、物腰も声色も優しい見た目も爽やかイケメンな王子様みたいな男、夜宮。クラスは別だ。 一年生の頃、同じクラスだった時にはほとんど喋らず、あの日以降は一言も喋ったことがなかったのにどうして急に二年になってお昼を誘ってくるようになったのか。 それだけじゃない。月影君月影君と月影攻撃が止まない。 にこにことした笑顔になんとか愛想笑いを返し続けるも、どこか夜宮の様子がおかしいことに気づいていく。 そうして夜宮を知れば知るほどーー

【完結】君とカラフル〜推しとクラスメイトになったと思ったらスキンシップ過多でドキドキします〜

星寝むぎ
BL
お気に入りやハートなど、本当にありがとうございます! ひとつひとつが心から嬉しいです( ; ; ) ✩友人たちからドライと言われる攻め(でも受けにはべったり) × 顔がコンプレックスで前髪で隠す受け✩ スカウトをきっかけに、KEYという芸名でモデルをしている高校生の望月希色。華やかな仕事だが実は顔がコンプレックス。学校では前髪で顔を隠し、仕事のこともバレることなく過ごしている。 そんな希色の癒しはコーヒーショップに行くこと。そこで働く男性店員に憧れを抱き、密かに推している。 高二になった春。新しい教室に行くと、隣の席になんと推し店員がやってきた。客だとは明かせないまま彼と友達になり――

オレに触らないでくれ

mahiro
BL
見た目は可愛くて綺麗なのに動作が男っぽい、宮永煌成(みやなが こうせい)という男に一目惚れした。 見た目に反して声は低いし、細い手足なのかと思いきや筋肉がしっかりとついていた。 宮永の側には幼なじみだという宗方大雅(むなかた たいが)という男が常におり、第三者が近寄りがたい雰囲気が漂っていた。 高校に入学して環境が変わってもそれは変わらなくて。 『漫画みたいな恋がしたい!』という執筆中の作品の登場人物目線のお話です。所々リンクするところが出てくると思います。

きっと世界は美しい

木原あざみ
BL
人気者美形×根暗。自分に自信のないトラウマ持ちがはじめての恋に四苦八苦する話です。 ** 本当に幼いころ、世界は優しく正しいのだと信じていた。けれど、それはただの幻想だ。世界は不平等で、こんなにも息苦しい。 それなのに、世界の中心で笑っているような男に恋をしてしまった……というような話です。 大学生同士。リア充美形と根暗くんがアパートのお隣さんになったことで始まる恋の話。少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。

処理中です...