47 / 47
(47)最終話
しおりを挟む
礼央さんがイギリスから帰国して1週間
今日は
✂️Leo's garden
(レオ ズ ガーデン)
が休みなので、お店に遊びに行く予定
庭の薔薇が咲き始めたそう
感動するぞ~って何度も言われたので、見せてもらうのが楽しみ
お土産にキャロットケーキを持って
そしてシューズボックスの上のサボテンに声をかける
「行ってくるよー。」
半年も置いていると愛着も湧くな
ドアを開けようとした時
「あ、ポストに何か入ってる。」
取り出してみると、和田さんからハガキが届いていた
「和田さんだ!」
静岡県に行ったあと、一度だけメールはしたけど
ハガキは初めて
裏返すと、富士山のイラストがプリントされていた
どれどれ…
「小井川君へ
お久しぶりです。
お元気ですか?
私はこの春、静岡の支社で、小井川君と同じ部署に配属されました。
なので東京本社を訪れた際には、小井川君と会議等で顔を合わせる機会が多くなると思います。
楽しみにしているので、よろしくね。
追伸
郵便局へ行ったら可愛いポストカードを見つけたので、送ってみたよ♩」
えーそうなんだ!
嬉しい
そしたら来月あたりには早速会えるかもしれないな
…そして和田さん、元気そうで良かった
「コーヒーでいいよね?」
僕はケーキをカットして、礼央さんはコーヒーを淹れる
お店の窓の側にテーブルと椅子を移動させて…
改めて外に目をやると
「…うわ~!!!」
薄いピンクと黄色の薔薇が、庭一面を埋め尽くしていた
いつもの白いベンチも、薔薇に囲まれていると一段と雰囲気が出る
「すっごい!
これほんとにイングリッシュガーデン!」
窓に張り付く僕を見て、礼央さんが笑う
「はははっ。
想像以上に感動してくれてる 笑。
すごいでしょ?
この半年間、ずっとこれを見せたかったの。」
「初めてここに来た時も素敵だなって思いましたけど…。
これには敵いませんね。」
「笑。
歩夢が喜んでくれて良かった。
じゃあ座って。
持ってきてくれたケーキ、食べよう?」
僕達はのんびりした時間を過ごしながら、熱々のコーヒーとケーキを食べた
気分はもう、すっかりイギリス 笑
広がる薔薇の景色を眺めながら、僕はふと思った
「礼央さん。」
「ん?」
「僕ね、これまでは1年の中で最も好きな季節って、秋だったんです。
でも。
今日からは春に変わりました。」
「笑。
そっか。
でも俺は逆かな。」
「え?」
「俺は春が好きだったけど、秋が1番になった。
歩夢に出会えた季節だから。」
フッと優しく微笑む
「でも秋っていうより、
キャロットケーキの季節
こう呼びたいな。」
「なんですか、それ 笑。」
「だってさ、あの日歩夢がこのケーキを持ってなかったら。
ただ誰かとぶつかっただけなら、すみませんって言って終わりでしょ?
でもあの日はキャロットケーキを持ってて、それが歩夢にこぼれたから、俺も綺麗にしますよーって。
そこから始まったんだもん。
だから、あれは秋じゃなくて、キャロットケーキの季節。」
笑
キャロットケーキの季節か
僕達だけの呼び方だ
「それにさ、このケーキって、歩夢のお母さんのレシピでしょ?
これがなければ、歩夢がケーキを作ることもなく、そしてあの日持ち歩いていることもなく。
そう考えると、お母さんが俺達を引き合わせてくれたのかもって。
そんなふうにも思うなぁ…。」
礼央さん…
僕はフォークでケーキを突っつきながら
「あの。
僕、老後のアイディアがあるんです。」
「笑。
老後?
いきなり先の話だな。
なんだよ 笑。」
「いつか。
礼央さんがここで髪を切って、その横で僕がお客さんにケーキを出す。
どうですか?」
「どういうこと?笑」
「ほら、このお店って、お客さんに紅茶とちょっとしたお菓子を出してるじゃないですか。
だからそのお菓子を、僕のキャロットケーキに変えるんです。
そしたらこの庭と、内装の雰囲気と。
で、美味しいケーキが加わればここは完全にイギリスです 笑。
ヨーロッパな美容室ってことで、大人気間違い無しです。
僕はサラリーマンで定年があるので、歳取ったらここでケーキ作ります。」
「…
はははっ。
面白いけど、それちょっと本気でいいかも。
歩夢が一緒に店やってくれたら楽しそう。」
「本気でって、僕はこれマジで言ってます。
おじいちゃん2人。
1人は髪切って、1人はお菓子作って。
絶対可愛いお店になります。」
僕はケーキを頬張りながら自信満々に宣言する
「怒らないで 笑。
うそうそ、本当はその言葉、めちゃくちゃ嬉しいよ。
歩夢が、そんな先も俺と一緒にいるって考えてくれてるんだなって。」
「あったりまえです!
僕達はずっとずっと、一緒なんだから…。」
2人で顔を見合わせて
そして笑みが溢れた
「さて…。
俺、まだ食べたいからケーキおかわりする。
歩夢は?」
「僕も、もう一切れお願いします♩」
こんな穏やかで幸せな日々が、これからも続きますように
おじいちゃんになるまで、まだまだ長い道のりだけど 笑
でもどんな事があっても
出会えたあの日
キャロットケーキの季節
これを思い出せば、きっと乗り越えられるはず
僕は晴れ渡る空を見上げながら、2人の未来の思い描いていた
今日は
✂️Leo's garden
(レオ ズ ガーデン)
が休みなので、お店に遊びに行く予定
庭の薔薇が咲き始めたそう
感動するぞ~って何度も言われたので、見せてもらうのが楽しみ
お土産にキャロットケーキを持って
そしてシューズボックスの上のサボテンに声をかける
「行ってくるよー。」
半年も置いていると愛着も湧くな
ドアを開けようとした時
「あ、ポストに何か入ってる。」
取り出してみると、和田さんからハガキが届いていた
「和田さんだ!」
静岡県に行ったあと、一度だけメールはしたけど
ハガキは初めて
裏返すと、富士山のイラストがプリントされていた
どれどれ…
「小井川君へ
お久しぶりです。
お元気ですか?
私はこの春、静岡の支社で、小井川君と同じ部署に配属されました。
なので東京本社を訪れた際には、小井川君と会議等で顔を合わせる機会が多くなると思います。
楽しみにしているので、よろしくね。
追伸
郵便局へ行ったら可愛いポストカードを見つけたので、送ってみたよ♩」
えーそうなんだ!
嬉しい
そしたら来月あたりには早速会えるかもしれないな
…そして和田さん、元気そうで良かった
「コーヒーでいいよね?」
僕はケーキをカットして、礼央さんはコーヒーを淹れる
お店の窓の側にテーブルと椅子を移動させて…
改めて外に目をやると
「…うわ~!!!」
薄いピンクと黄色の薔薇が、庭一面を埋め尽くしていた
いつもの白いベンチも、薔薇に囲まれていると一段と雰囲気が出る
「すっごい!
これほんとにイングリッシュガーデン!」
窓に張り付く僕を見て、礼央さんが笑う
「はははっ。
想像以上に感動してくれてる 笑。
すごいでしょ?
この半年間、ずっとこれを見せたかったの。」
「初めてここに来た時も素敵だなって思いましたけど…。
これには敵いませんね。」
「笑。
歩夢が喜んでくれて良かった。
じゃあ座って。
持ってきてくれたケーキ、食べよう?」
僕達はのんびりした時間を過ごしながら、熱々のコーヒーとケーキを食べた
気分はもう、すっかりイギリス 笑
広がる薔薇の景色を眺めながら、僕はふと思った
「礼央さん。」
「ん?」
「僕ね、これまでは1年の中で最も好きな季節って、秋だったんです。
でも。
今日からは春に変わりました。」
「笑。
そっか。
でも俺は逆かな。」
「え?」
「俺は春が好きだったけど、秋が1番になった。
歩夢に出会えた季節だから。」
フッと優しく微笑む
「でも秋っていうより、
キャロットケーキの季節
こう呼びたいな。」
「なんですか、それ 笑。」
「だってさ、あの日歩夢がこのケーキを持ってなかったら。
ただ誰かとぶつかっただけなら、すみませんって言って終わりでしょ?
でもあの日はキャロットケーキを持ってて、それが歩夢にこぼれたから、俺も綺麗にしますよーって。
そこから始まったんだもん。
だから、あれは秋じゃなくて、キャロットケーキの季節。」
笑
キャロットケーキの季節か
僕達だけの呼び方だ
「それにさ、このケーキって、歩夢のお母さんのレシピでしょ?
これがなければ、歩夢がケーキを作ることもなく、そしてあの日持ち歩いていることもなく。
そう考えると、お母さんが俺達を引き合わせてくれたのかもって。
そんなふうにも思うなぁ…。」
礼央さん…
僕はフォークでケーキを突っつきながら
「あの。
僕、老後のアイディアがあるんです。」
「笑。
老後?
いきなり先の話だな。
なんだよ 笑。」
「いつか。
礼央さんがここで髪を切って、その横で僕がお客さんにケーキを出す。
どうですか?」
「どういうこと?笑」
「ほら、このお店って、お客さんに紅茶とちょっとしたお菓子を出してるじゃないですか。
だからそのお菓子を、僕のキャロットケーキに変えるんです。
そしたらこの庭と、内装の雰囲気と。
で、美味しいケーキが加わればここは完全にイギリスです 笑。
ヨーロッパな美容室ってことで、大人気間違い無しです。
僕はサラリーマンで定年があるので、歳取ったらここでケーキ作ります。」
「…
はははっ。
面白いけど、それちょっと本気でいいかも。
歩夢が一緒に店やってくれたら楽しそう。」
「本気でって、僕はこれマジで言ってます。
おじいちゃん2人。
1人は髪切って、1人はお菓子作って。
絶対可愛いお店になります。」
僕はケーキを頬張りながら自信満々に宣言する
「怒らないで 笑。
うそうそ、本当はその言葉、めちゃくちゃ嬉しいよ。
歩夢が、そんな先も俺と一緒にいるって考えてくれてるんだなって。」
「あったりまえです!
僕達はずっとずっと、一緒なんだから…。」
2人で顔を見合わせて
そして笑みが溢れた
「さて…。
俺、まだ食べたいからケーキおかわりする。
歩夢は?」
「僕も、もう一切れお願いします♩」
こんな穏やかで幸せな日々が、これからも続きますように
おじいちゃんになるまで、まだまだ長い道のりだけど 笑
でもどんな事があっても
出会えたあの日
キャロットケーキの季節
これを思い出せば、きっと乗り越えられるはず
僕は晴れ渡る空を見上げながら、2人の未来の思い描いていた
20
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】俺とあの人の青い春
月城雪華
BL
高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。
けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。
ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。
けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。
それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。
「大丈夫か?」
涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。
諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】
カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。
逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。
幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。
友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。
まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。
恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。
ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。
だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。
煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。
レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生
両片思いBL
《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作
※商業化予定なし(出版権は作者に帰属)
この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24
漫画みたいな恋がしたい!
mahiro
BL
僕の名前は杉本葵。少女漫画が大好きでクラスの女の子たちと一緒にその話をしたり、可愛い小物やメイク、洋服の話をするのが大好きな男の子だよ。
そんな僕の夢は少女漫画の主人公みたいな素敵な恋をすること!
そんな僕が高校の入学式を迎えたときに漫画に出てくるような男の子が登場して…。
泣き虫少年とおこりんぼう君
春密まつり
BL
「オレ、お前のことキライ……に、なりたい」
陸上部で活躍する陸と、放送部からグラウンドを眺める真広は、小さい頃から一緒にいる。
いつからか真広は陸に対して幼馴染以上の感情を抱くようになっていた。
叶うはずのない恋を諦めなければいけないというのに傍には居たいので突き放すことができないままだ。
今日も放課後の放送室で二人話をしていたが、女の子が真広に会いに訪れて不穏な空気になってしまう。
諦めたくても諦められない、意地っ張りの恋の行方は――。
▼過去に発行した同人誌の増補版です。
全17話を11月末までにはすべてUP予定です。
不器用に惹かれる
タッター
BL
月影暖季は人見知りだ。そのせいで高校に入って二年続けて友達作りに失敗した。
といってもまだ二年生になって一ヶ月しか経っていないが、悲観が止まらない。
それは一年まともに誰とも喋らなかったせいで人見知りが悪化したから。また、一年の時に起こったある出来事がダメ押しとなって見事にこじらせたから。
怖い。それでも友達が欲しい……。
どうするどうすると焦っていれば、なぜか苦手な男が声をかけてくるようになった。
文武両道にいつも微笑みを浮かべていて、物腰も声色も優しい見た目も爽やかイケメンな王子様みたいな男、夜宮。クラスは別だ。
一年生の頃、同じクラスだった時にはほとんど喋らず、あの日以降は一言も喋ったことがなかったのにどうして急に二年になってお昼を誘ってくるようになったのか。
それだけじゃない。月影君月影君と月影攻撃が止まない。
にこにことした笑顔になんとか愛想笑いを返し続けるも、どこか夜宮の様子がおかしいことに気づいていく。
そうして夜宮を知れば知るほどーー
【完結】君とカラフル〜推しとクラスメイトになったと思ったらスキンシップ過多でドキドキします〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートなど、本当にありがとうございます! ひとつひとつが心から嬉しいです( ; ; )
✩友人たちからドライと言われる攻め(でも受けにはべったり) × 顔がコンプレックスで前髪で隠す受け✩
スカウトをきっかけに、KEYという芸名でモデルをしている高校生の望月希色。華やかな仕事だが実は顔がコンプレックス。学校では前髪で顔を隠し、仕事のこともバレることなく過ごしている。
そんな希色の癒しはコーヒーショップに行くこと。そこで働く男性店員に憧れを抱き、密かに推している。
高二になった春。新しい教室に行くと、隣の席になんと推し店員がやってきた。客だとは明かせないまま彼と友達になり――
オレに触らないでくれ
mahiro
BL
見た目は可愛くて綺麗なのに動作が男っぽい、宮永煌成(みやなが こうせい)という男に一目惚れした。
見た目に反して声は低いし、細い手足なのかと思いきや筋肉がしっかりとついていた。
宮永の側には幼なじみだという宗方大雅(むなかた たいが)という男が常におり、第三者が近寄りがたい雰囲気が漂っていた。
高校に入学して環境が変わってもそれは変わらなくて。
『漫画みたいな恋がしたい!』という執筆中の作品の登場人物目線のお話です。所々リンクするところが出てくると思います。
きっと世界は美しい
木原あざみ
BL
人気者美形×根暗。自分に自信のないトラウマ持ちがはじめての恋に四苦八苦する話です。
**
本当に幼いころ、世界は優しく正しいのだと信じていた。けれど、それはただの幻想だ。世界は不平等で、こんなにも息苦しい。
それなのに、世界の中心で笑っているような男に恋をしてしまった……というような話です。
大学生同士。リア充美形と根暗くんがアパートのお隣さんになったことで始まる恋の話。少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる