異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました

陽花紫

文字の大きさ
14 / 19

結末やいかに(完)

しおりを挟む
 時の流れは戻り、勇者一行や悪魔たちは互いに対峙していた。

 そして互いに、ライとレイというよく似た存在を見つめ目を丸くしていたのであった。
 しかし双子だけは、以前とは異なる想いを抱えて一歩前へと強く踏み出した。
 そして、互いの仲間を振り返りこう声を上げていた。

「実は俺たちは……、生き別れた双子の兄弟だったんだ」
「もうこれ以上、争わないでほしいんです」

 その言葉に力を込めるものの、勇者一行は身構えることを辞めなかった。
 そして、事態は容易に収まることはなかった。
「レイ、何を腑抜けたことをぬかすか。我は勇者の手によって封印され、多くの仲間を失ったのだぞ?」
 魔王のその怒りは衰えておらず、放たれた一撃はライに向けて襲いかかる。
 咄嗟に、レイはライの前に飛び出した。
 その衝撃は、全てレイの身へと降り注ぐ。
「ううっ……!」
「レイ!」
 ムウが駆け寄ろうとするものの、魔王の攻撃によって阻まれてしまう。
 そして勇者一行もまた、その攻撃に向けて新たな攻撃をぶつけていた。

「レイ、……」
 ライはレイの身を支え、クリスに回復を願った。
 しかし、クリスは静かに首を振った。
「魔物には、俺の聖なる力は毒になるんだ」
 その言葉を耳に入れたムウは、思わずその力を振り払い颯爽とレイのもとへと翼を広げた。
「やめろ!……これ以上、レイに触らないでくれ!」
 そうレイの身を抱き上げ、ムウは魔王に向けて攻撃を放つ。
「魔王様、よくもレイを!」
 次第にそれは、内輪の争いへと発展していく。
 魔王とレイを抱えたムウが、衝突していたのだ。

「皆、引き上げよう!これ以上ここにいたら、無駄に怪我を負うだけだ!」
 勇者一行も安全を確保しながら逃げるものの、混乱を極めた悪魔たちの戦闘に巻き込まれることもあった。
 それでもなお、一行は城門に向けて引き返す。

 やがてレイは、ムウの腕の中で意識を取り戻していた。
 だが目の前には、なおも自らを取り合う魔王とムウの姿があったのだ。
「レイを寄越せ、さもなくばお前まで消し炭にしてみせようぞ」
「俺は、レイを守ると誓った!」
 その姿に、レイの涙は自然と頬を伝っていた。
「……やめてよ、……もう、これ以上争いたくはないんだ」
 その涙が魔王の腕へと触れると、そこから強い光が溢れ出す。
「ぐあああっ!」
 その聖なる涙によって、魔王の輪郭は徐々に消えはじめていく。
「……レイ……なぜだ……」
「争いのない世界を……、俺は望む……」
 そのような言葉に、その泣き顔に。
 魔王は最後の力を振り絞り、黒い霧と共に静かにレイの頬に触れた。
「……我は、破壊の中でしか生きられぬ……。ならばせめて、お前の腕の中で果てたい……」
 大粒の涙が頬からこぼれ落ち、魔王は静かに消滅した。

 ムウは静かに、レイの肩を抱き寄せていた。
「……もう、大丈夫だ。レイ、誰もお前に触れさせはしないよ」

 魔王消滅により、城内の悪魔たちは力を失ったように大人しくなる。
 そしてそのことを嘆き、静まり返った。

***

 魔王消滅の気配は、庭で束の間の休息をとる勇者一行にも強く伝わった。
「気配が、消えた」
「そうみたいだな」
「しかし、油断をしてはいけませんよ」
「ライ……、大丈夫か?」
「……レイは、レイは……」
 弟の身に何かあったのではないかと、ライは静かに身震いをした。

 レイはムウとともに、双子の兄ライの姿を探していた。

 そして庭で、その姿を見つけていた。

 ライはムウに抱き上げられるレイの姿を見て、ほっと息をつく。
「……全て、終わったんだな?」
「魔王は、消え去ったよ……」
 その言葉に、勇者一行はざわめいた。
 そしてレイをはじめ、城内の悪魔たちは皆頭を下げていた。
「俺たちはもうこれ以上、無駄な争いをしたくないと思っています。ですから……、このままお引き取り願えませんか?」
 ムウもまた、静かに告げた。
「俺たちは……。レイと共にいることができれば、それで充分です」
 そのような言葉に対し、ライは寂しげに問いかけた。
「せっかくまた会うことができたのに。……レイは、これでいいのか?」
 レイは微笑み、手を伸ばしてライの手を強く握った。
「うん。ライ兄さんも……、これからも元気で。そして、幸せにね」

 双子は手を取り合い、互いの手をそっと離した。

「望み通り、私たちは引き上げることとしよう」
 勇者一行も静かに礼をして、その場に背を向けた。
 もう二度と、誰も振り返ることはない。
 ライは道中背後を気にしてしまうものの、クリスがそっとその背を支えた。
「大丈夫だ。きっと、向こうも幸せになるはずだ」
「……そうだね」

 こうして勇者一行の旅は、思わぬ形で終わりを迎えることとなったのである。

***

 その後、レイはカイラスと共に主を失った城で穏やかな日々を過ごすこととなった。

 ライは勇者一行と国へと戻り、魔王消滅の報を伝えていた。
 国王は驚くものの、何も言うことはなく、ただ静かに平穏な未来を信じて頷いた。

「ご苦労であった」

 ライはクリスと共に、教会へと戻り平和な日々を過ごしていた。
 時折遠く離れた弟のことを思うものの、レイが元気で幸せに生きているということを信じ、まっすぐ前を見つめていた。

 魔王消滅後、世界は再び穏やかになり、悪魔たちもそれぞれの役目を終え、互いに平和の中で日常を取り戻しつつあった。

 双子の絆は時空を超えて、世界の秩序の中で静かに息づき、そして新たな物語の幕を開けるのであった。
 それは永遠に続く、幸せの物語でもあったのだ。

END
―――――――――――――――――
この後は番外編が続きます
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。 そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。 ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。 フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。 ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!? 無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

処理中です...