乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……

三葉 空

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第7話 今までにないドキドキ

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 おかしい、私はあの乳デカ女みたいにユルい女ではありません。

「おとなり、よろしいですか?」

「あ、えっと……はい」

 それなのに、どうして初対面の殿方に対して、こんなに気を許しているのでしょうか? 相手は我が家を脅かす不法侵入者かもしれないのに。

「そういえば、君の名前は?」

 私は問われる。

「へっ? えっと、シアラ・マークレインです」

「そうか」

「あなたのお名前は?」

「俺か? 俺は……オルだ」

「オルさん、ですか」

「そうだ。旅をしてここまで来たが、本当にきれいだ」

「お月様が、ですよね?」

「それもそうだけど、君が何よりもきれいだ」

「えっ?」

「さっきも、そのつもりで言ったんだ」

 プチワイルドなイケメンさんが、にこりと微笑む。今までなら、こんな風にキザな口説き文句を言われても、微笑を浮かべるかして、軽く流していたのに。

「そ、そんなことは……」

 今はサッと、彼から逃げるように視線を逸らしていた。何かすごい敗北感だ。こんなにも悔しいという気持ちを抱いたことが、あったでしょうか?

「あの、オルさんは、どちらのご出身ですか?」

「ん? ああ……忘れたよ」

「ひどいお方ですね。故郷を捨てたんですか?」

「そう捉えられても、仕方がないな」

 彼は苦笑する。

「確かに、母国のことを想う姿勢は大事だけど……外に出てみないと、分からないことも多々あるよ」

「それは同感です。私も公爵令嬢と言われて敬ってもらっていますが、所詮は外の世界をしらない小娘でございますから」

「そうか? 立派に成長しているように見えるが?」

 ふと、彼の視線が私の胸に置かれた気がして、サッと両手で隠す。

「セクハラは禁止でございます」

「ああ、ごめん」

「それに、私は胸にコンプレックスがあります」

「え、何で? 結構デカいし、形もきれいそうだ」

「ありがとうございます。でも、私よりももっと立派な乳の持ち主に、婚約者を奪われました」

「それはまた……」

「王太子だったんですけどね……まあ、あの男はバカですから、全く惚れていないし、彼にフラれたこと自体はどうでも良いんですけど……でもやっぱり、女として悔しいかなって」

「こんなに美人でも苦労するんだね」

「先ほどから、随分と褒めて下さりますね。旅先でも、ずっとそんな調子ですか?」

「まあ、それなりに。けど、こんなに胸がトキめいたのは初めてだよ」

 また笑顔を向けられると、ドキリとする。夜風が吹き抜けた。

「あの……」

 私が口を開きかけた時、

「お姉さま!」

 妹の声がして、ビクッとした。

「どうやら、時間が来てしまったみたいだ。

 オルさんは言う。

「俺はもう行くよ」

「あっ……」

 と手を伸ばした自分に驚く。私、こんな短時間で、まさか彼のことを……いや、そんな、私はナンパに引っかかるような軽い女じゃないわ。

「また会おう」

「えっ?」

 最後にまた、微笑みを残して、彼は夜闇に消えた。

「お姉さま~! 大丈夫?」

 エリーが駆け寄って来た。

「え、ええ」

「ていうか、今他に誰かいなかった?」

「そ、そんな訳ないでしょう?」

「そっか。まあ、真面目なお姉さまが、そんな逢引みたいな真似、する訳ないわよね」

「そ、そうよ」

 私はいつになく焦りながら誤魔化していた。




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