87 / 94
メーレンスの旅 王都周辺
第七十八話 中継の町 ゼシュット
しおりを挟む
「エドー!」
「おーヴァルっ子! ルカ坊も」
翌日。
東門前に集合とのことで来てみれば、二頭の馬がけん引する馬車が。
エドに聞いたところによると、商業ギルドでグランツ領とを行き来する行商の者を事前に下調べしていた。彼らは護衛を兼ねて冒険者数名を乗せているそうだ。依頼料から運賃を引いているのだろう。
前日交渉済みで、僕らにもわずかながら護衛料金が支払われるようだ。
今回は僕、エド、ヴァルハイトで護衛を兼ねてグランツ領に向かう。
商人は御者台に座り、「よろしく」と声を掛けてきた。
簡単に挨拶をして荷台に乗り込む。
グランツ領近郊から主にお酒を運んでくるらしい馬車は、分厚い布がおおう簡素な屋根が備わり、雨も凌げそうだ。イス代わりの木箱の中身は空らしく、商人が遠慮なく使うよう僕らに促した。
「どのくらいかかるのかな~」
木箱に腰掛け、まだ見ぬ領地へ期待をふくらませるヴァルハイト。
「そうだな……。王都から延びる街道は整備されているし、休憩なしで考えれば距離は丸半日ほどだが──」
「馬もワシらも休息が必要じゃ。今日は夕方、ゼシュットという名の町で一泊するぞ」
「おー! たーのーしーみー!」
「うるさいぞ。……まぁ、その町は確かに楽しみであると言えるな」
「えー! なんだろ……」
「ワシも何年振りか忘れてしまったぐらいじゃからなぁ。楽しみじゃわい!」
王都とグランツ領を繋ぐ街道沿いで、一番大きな集落であるゼシュット。
そこは、初めて訪れる者にとっては目新しい街といえるだろう。
「いざ、しゅっぱあーーつ!」
「元気じゃのぉ!」
「……はぁ。連れが騒がしくすまない」
「いえいえ、頼りにしてますよ」
僕らより二回りほど年上と思われる商人に詫び、王都を出発した。
◇
「お、おおおおお!? キレー! なにアレー!?」
時折揺れる以外、なにも問題のなかった道程。数回馬を休めつつ、夕刻に差し掛かると中間地点であるゼシュットの町が見えてきた。
「相変わらず、素晴らしい景観だな」
「ほぉ、立派なもんじゃな」
ヴァルハイトが興奮するのも分かるというもの。
二つの大都市を繋ぐこの町は、両側から訪れる者を文字通り歓迎する。
町の主要部にある木組みの家屋は、街道側である南を向いて建っており、その外観はほとんど統一。
うっすらと青色に色付く屋根と、白の壁。
それらはグランツ領側から見ても、王都側から見ても同じ、まるで標となるように旅人を出迎えるのだ。
「なんていうか、オレたち……歓迎されてる!」
「主要産業は宿泊業だからな」
「なるほどなぁ」
街道がそのまま続く町の大通りは、両側に厩舎も備えた宿が立ち並ぶ。
荷台を停めるスペースも確保されていて、王都の宿とはまた違った雰囲気を感じる。
まさに行商人御用達といったところだ。
その分、一本中の通りに入るとそこは民家が規則正しく立ち並び、店自体の数は多くないようだ。
「あっしらはいつもここに泊まるんですよ」
そう商人が示した先は、周りの民家と同じうすい青色の屋根をした宿。
土地が広い分、宿そのものは非常にコンパクトな造りをしている。
宿の前に停車し、一行は馬車から降りた。
「ご飯もアリ~?」
「あぁ、もちろん。残るのは僅かだが、すべて引いた代金を払わせてもらいやすよ」
「なるほど」
「ワシぁ、背は低いが図体がデカいもんで、重かったろう! 世話かけたなぁ! よーく休むんじゃぞ!」
「「「……」」」
自虐的なことを言うのは、エドにしては珍しい。
なにやら馬に向かって、労いの言葉をかけていた。
「(ね、ねぇ……。ドワーフジョーク、なのかな? それとも本気のヤツ?)」
「(さ、さぁ……)」
「(あいにくと、ドワーフの護衛は初めてなもんで……)」
やはり種族がちがうと、感性も異なるのだろうか?
「さきに手続きをして停めますんで、少し見張っててくだせぇ」
「ハーイ」
「承知した」
商人が店主とやり取りする間、馬車を見張って待つことにした。
「おーヴァルっ子! ルカ坊も」
翌日。
東門前に集合とのことで来てみれば、二頭の馬がけん引する馬車が。
エドに聞いたところによると、商業ギルドでグランツ領とを行き来する行商の者を事前に下調べしていた。彼らは護衛を兼ねて冒険者数名を乗せているそうだ。依頼料から運賃を引いているのだろう。
前日交渉済みで、僕らにもわずかながら護衛料金が支払われるようだ。
今回は僕、エド、ヴァルハイトで護衛を兼ねてグランツ領に向かう。
商人は御者台に座り、「よろしく」と声を掛けてきた。
簡単に挨拶をして荷台に乗り込む。
グランツ領近郊から主にお酒を運んでくるらしい馬車は、分厚い布がおおう簡素な屋根が備わり、雨も凌げそうだ。イス代わりの木箱の中身は空らしく、商人が遠慮なく使うよう僕らに促した。
「どのくらいかかるのかな~」
木箱に腰掛け、まだ見ぬ領地へ期待をふくらませるヴァルハイト。
「そうだな……。王都から延びる街道は整備されているし、休憩なしで考えれば距離は丸半日ほどだが──」
「馬もワシらも休息が必要じゃ。今日は夕方、ゼシュットという名の町で一泊するぞ」
「おー! たーのーしーみー!」
「うるさいぞ。……まぁ、その町は確かに楽しみであると言えるな」
「えー! なんだろ……」
「ワシも何年振りか忘れてしまったぐらいじゃからなぁ。楽しみじゃわい!」
王都とグランツ領を繋ぐ街道沿いで、一番大きな集落であるゼシュット。
そこは、初めて訪れる者にとっては目新しい街といえるだろう。
「いざ、しゅっぱあーーつ!」
「元気じゃのぉ!」
「……はぁ。連れが騒がしくすまない」
「いえいえ、頼りにしてますよ」
僕らより二回りほど年上と思われる商人に詫び、王都を出発した。
◇
「お、おおおおお!? キレー! なにアレー!?」
時折揺れる以外、なにも問題のなかった道程。数回馬を休めつつ、夕刻に差し掛かると中間地点であるゼシュットの町が見えてきた。
「相変わらず、素晴らしい景観だな」
「ほぉ、立派なもんじゃな」
ヴァルハイトが興奮するのも分かるというもの。
二つの大都市を繋ぐこの町は、両側から訪れる者を文字通り歓迎する。
町の主要部にある木組みの家屋は、街道側である南を向いて建っており、その外観はほとんど統一。
うっすらと青色に色付く屋根と、白の壁。
それらはグランツ領側から見ても、王都側から見ても同じ、まるで標となるように旅人を出迎えるのだ。
「なんていうか、オレたち……歓迎されてる!」
「主要産業は宿泊業だからな」
「なるほどなぁ」
街道がそのまま続く町の大通りは、両側に厩舎も備えた宿が立ち並ぶ。
荷台を停めるスペースも確保されていて、王都の宿とはまた違った雰囲気を感じる。
まさに行商人御用達といったところだ。
その分、一本中の通りに入るとそこは民家が規則正しく立ち並び、店自体の数は多くないようだ。
「あっしらはいつもここに泊まるんですよ」
そう商人が示した先は、周りの民家と同じうすい青色の屋根をした宿。
土地が広い分、宿そのものは非常にコンパクトな造りをしている。
宿の前に停車し、一行は馬車から降りた。
「ご飯もアリ~?」
「あぁ、もちろん。残るのは僅かだが、すべて引いた代金を払わせてもらいやすよ」
「なるほど」
「ワシぁ、背は低いが図体がデカいもんで、重かったろう! 世話かけたなぁ! よーく休むんじゃぞ!」
「「「……」」」
自虐的なことを言うのは、エドにしては珍しい。
なにやら馬に向かって、労いの言葉をかけていた。
「(ね、ねぇ……。ドワーフジョーク、なのかな? それとも本気のヤツ?)」
「(さ、さぁ……)」
「(あいにくと、ドワーフの護衛は初めてなもんで……)」
やはり種族がちがうと、感性も異なるのだろうか?
「さきに手続きをして停めますんで、少し見張っててくだせぇ」
「ハーイ」
「承知した」
商人が店主とやり取りする間、馬車を見張って待つことにした。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる