救う毒

むみあじ

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4月 鈴蘭

第4話

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如月先輩の接しやすさに感動し、思わず尊敬の眼差しを向ける。すると彼はニカっと笑ってぐしゃぐしゃと俺の髪の毛を掻き混ぜた。
そんなやり取りを見ていた樹先生は微笑ましげに笑って、そっと扉へと促した。


「さ、親交を深めるのはこれからも出来るだろう?もう少し話もしたかったんだけれど、すまないがそろそろ仕事をしなくちゃね。如月くん、頼んだよ」
「あ、はい。了解です」
「それじゃあ樹先生、失礼します。また遊びに来ますね」


和やかな雰囲気のまま部屋から出た俺達は適当に談笑しながら寮へと向かった。小学校、中学校の頃はどんな所に通っていたのか、共学だったのか、とにかく学校に関する事をたくさん聞かれた。


「あー、見えてきた見えてきた。あれだよ、うちの寮。鏡宮は特待生だよな?」
「アレですか…デカ~。そですそです。特待生は1人部屋なんですよね?」
「まぁな~。つっても、一般生徒が2人で使う部屋と同じ広さだからあんま変わんねーかも。役職持ちになれば広いとこ移れんぞ」


見えてきたのは豪邸かと言いたくなる程に大きな建物。こんなとこで生活するとかマジでえげつねぇな金持ち学園…

如月先輩はキョロキョロする俺を可笑しそうに小さく笑いながら寮内に入っていくのを、俺も急いでついていく。
自動ドアを抜けた先のエントランスは広々としていて、人が多い時でも混雑しないだろう。入ってすぐの右手側には受付窓があり、中にいた寮監さんらしき人がこちらを見て会釈をしてくれた。

寮監さんは恐らく40代くらい。綺麗な黒髪で物腰が柔らかそうな、穏やかな雰囲気を纏った紳士的な男性。優しげな笑顔がとても素敵だ。


「こんにちは如月くん。そちらの子は新入生かな?」
「冴木さんお疲れ様です。こいつは1年の特待生っすよ」
「あ、こんにちは…鏡宮依夜と言います。これからお世話になります」


如月先輩と話していた時とは少し違った堅い声音を意識して深く礼をする。笑顔は見せず、真剣な面持ちを意識すると、その代わり様に如月先輩は驚いた後すぐに笑いを堪えるように口元に手を当てた。

思わずジト目で如月先輩を見てしまうと尚更それが面白かったらしく、肩を震わせ始めた。めちゃくちゃツボ浅いじゃん。どこにそんな笑う要素あんの?


「こんにちは、寮監の冴木さえきまことです。何か荷物が届いた時はここで声をかけて受け渡しをするよ。外出届も僕に提出してね。鏡宮くんの部屋は218号室だよ。寮長への挨拶は入学式の日にやるだろうし、今日は自由にしていていいよ。寮の食堂はここから真っ直ぐに行くとあるからね」


冴木さんの指さした方向に目を向けると両開きの扉が開かれた食堂が見える。時間帯が時間帯だからか人はおらず、伽藍としている。
把握した事を伝えるために首を縦に振ると優しく笑いひらひらと手を振ってくれた。これに対しても俺は手を振りかえさず会釈するにとどめる。その様を見ている如月先輩はいつまで経っても笑いが引かないようで未だにくつくつ笑っている。俺が箸を転がしたら多分大声出して笑うと思う。そんくらい笑いのスイッチ壊れちゃっているようだ


「いつまで笑ってんですか…なんか俺までつられちゃうんすけど」
「さっきまでニコニコだった人間がいきなり真顔になったの見たら笑うに決まってんだろ。は~笑った笑った!」


ニヤニヤと笑っている如月先輩の背中をぐいぐいと押して、自分の部屋まで向かう。向かう間には先程少し話に出た寮長の話を聞いてみる。
どうやら如月先輩の一つ上らしく、関西弁の気のいい人らしい。但し好みの子を見つけるとすぐに手を出す好色な人らしい。

「てか先輩って2年生なんすね。委員長とかって普通3年生がやるもんじゃないんですか?」
「俺もなんで3年が委員長じゃねーんだよって思ってんだよなぁ…3年の先輩らが委員長なんてごめんだ!つって俺に押し付けて来たんだよ。人気投票で2位も取っちまったから丁度いいって事で強制的にな…」
「先輩も苦労してんですね~…」
「おう、だから敬え、讃えろ」

胸を張って威張っている先輩に棒読みで凄~いと褒めてあげると髪をぐしゃぐしゃにされた。ウィッグ取れる取れる!変装はまだバラしたくないので死守せでばならんのだ…

戯れながら、ついでに先輩の連絡先をゲットしつつ自室へ向かうとどうやら部屋は突き当たりの部屋らしく、日も当たって良さそうな場所だ。これでもうちょっと上の階なら最高だったな~なんて思いながら樹先生から貰ったカードキーを使う。


「如月先輩、案内ありがとうございました」
「おう、良いって良いって。先輩風吹かせたかっただけだしな」
「また頼ってもいいですか?」
「当たり前だろ、俺たちは友達なんだもんな?く、ははっ」
「か~~~~ッ!これだから!もう頼らないです~~~~!!」
「怒んなって、すまんすまん、悪かったな。ま、なんかあったらすぐ言えよ。依夜」
「別に本気で怒ってるわけじゃないんで、大丈夫ですよ。はい。頼りにしてますね、諒先輩」


付き合いたてのカップルかとツッコミたくなる気持ちを抑えながらそんな会話をしてから先輩と別れる。とりあえず部屋入るか…
扉閉めて、閑静な部屋を見渡す。新品同様に綺麗なキッチンとキッチンと繋がったリビング、おそらくここは相部屋だと共有スペースになるのだろう。
脇に廊下にある扉を開ければ脱衣所にお風呂場もある。脱衣所の隣の扉は当たり前のようにトイレのようだ。1LDKのマンションっぽい。

色々と設備を確認してから自分の寝室に向かい扉をあげると、目の前に飛び込んできたのは広い部屋…ではなく段ボールの山。足の踏み場もないくらいに積まれたそれらに思わず口元が引き攣る。
俺はポケットに突っ込んだままだったスマホを素早く手に取り耳に当てる。数回のコールの後プツッと相手が出た事を知るには十分な機械音が鳴る。それを聞いてすぐ、俺は口を開いた。



「先輩、荷解き手伝ってください」
「頼るの速すぎんだろ」
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