救う毒

むみあじ

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4月 鈴蘭

第6話

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そんなこんなで出来ました。生姜焼き。レンチンで食べれるご飯をチンして、食器に移し替える。お盆に料理を乗せて運ぼうとすると横からヒョイと手が伸び、諒先輩がさっさと持っていってしまった。片手で盆を持ちながらテーブルに並べてくれている様はさながらウェイターのようで、思わず手伝わずに見惚れてしまった。
イケメンがするウェイター、めちゃくちゃ絵になるなぁ


「どうした、早く食おうぜ」
「あ、そですね。運んでくれてありがとうございます」
「作らせてんだからこんくらいやんねぇとな」


備え付けの小さいテーブルに2人で向かい合うようにして料理を囲む。食欲をそそる香りに思わず喉を鳴らし、両手を合わせた。


「待て依夜、俺は重大な事に気付いてしまった。大事件だ」
「俺のよし!今から食べるぞ!の気持ちを返してください」


ところで諒先輩から待ったがかかる。嘘だろなんつータイミングだよ。


「んなもんお前がもっかい捻りだしゃいいだろ」
「ひど!こういうのははじめが肝心なのに~!で、なんですか?重大な事って」
「箸がねぇ」
「確かに重大でウケる」


確かに飯を食うぞってタイミングで箸がないことに気がつくのは大事件だ。というか今気付くのって遅すぎね?尚更ウケんね
山積みの段ボールの中から来客用に買っておいた箸を探し当て先輩に渡す。これでようやくいただきますが言える~

2人で手を合わせてから食べ始める。高い肉な事もあって柔らかくて美味しい。脂も乗ってるしご飯が進みまくってしまうな~


「うっっっっめぇ……これだよこれ、俺が食いたかったの…」
「わざわざう、を溜めるほど美味いですか?お気に召したようで何よりですわ~
でも食堂のメニューにないんです?生姜焼き。普通ありそうっすけど」
「食堂は高級レストランみてぇなメニューばっかでさ、家庭料理が出るのって日替わり定食位なんだよ。食いたい時に食えねぇし、かと言って通常メニューにするとSNS映え狙ってんのかって感じの飯になるだろうし…」


SNS映えする生姜焼きを想像して思わず笑ってしまう。それどんなだよ?あれかな、千切りキャベツの山みたいな?キャベツメインになっちゃってんじゃん


「それ抜きにしてもうめぇな…あー白米が足りねぇかも」
「買ってきます?コンビニってどこにあるんすか?」
「食堂ん中にある」
「え?それ売店じゃないんすか」
「そうとも言う。品揃えが良すぎるからみんなコンビニって呼んでんだよ。ま、いいよ。白米がなくても美味いもんは美味いからな」


なんだその殺伐としたスレにインド象が!みたいな呼び方。売店と書いてコンビニと読むのか~…完全に理解したわ。


先輩は食べるのが早いようでみるみるうちに白米も生姜焼きも綺麗さっぱりなくなった。食べっぷりも良いし作った甲斐があるななんて考えながら箸を進める。先程まで俺が眺めていたのに、いつのまにか立場は逆転し、諒先輩が俺の事を見つめてくる。あまりにも凝視してくるのでついつい声をかけてしまう。


「何すか?」
「いや、なんでも」
「あ、もしかして一口欲しいんですか?あげますよ?」
「んー、貰うわ」


まだ手をつけていない生姜焼きを箸で掴み諒先輩の目の前に差し出す。諒先輩はそれをじっと見つめると、一口で全部食べられてしまった。

全部食われるとは思っておらず固まっていると目の前のイケメンはくつくつと笑い始めた。悔しい気持ちもありつつそれ程まで俺の料理を気に入ってくれたのが嬉しくて思わず笑顔になる。


「ご馳走様でした」
「ご馳走さん」
「はい、お粗末様でした」
「あ~マジで美味かった~…また食いにきていいか?」
「良いすよ~なんなら夜も食べてきます?」
「食う」
「返事はや~何食べたいです?」
「オムライス食いてえ」
「はーい」


俺もやっと食べ終わり2人で手を合わせた。諒先輩は俺の料理をとても気に入ってくれたみたいで、次の料理をせがんできた。とりあえず俺も1人は寂しいので夜ご飯に誘い、また段ボール箱を片付け始める。


「終わったー!」
「あー、疲れた…」
「マジでありがとうございます!おかげさまで片付きました~」
「頼れっつったのは俺だからな。またなんかあれば言えよ」


ニカっといい笑顔を見せてくれる先輩に、こちらも笑顔を返しながら、カードキーと財布を手に持ち立ち上がる。


「んじゃ夕飯の支度するので寛いでてくださいね」
「おー、いってら」


先輩へ行ってきますの意味を込めて手を振り、俺は扉を開けて部屋を出た。

丁度来た下へ向かうエレベーターに乗り込む。エレベーターには先客がいたようで、すぐに意識して顔を引き締め、役を作る。
バレないように彼らをチラリと見て、存在を消すようにエレベーターの端によった。

先客は2人。2人とも俺と同じ位の身長で片方はふわふわな髪質の可愛い系美少年、もう片方はサラサラな髪質のクール系美少年だった。
俺の事をチラチラ見てはあからさまにくすくす笑っている。2人とも制服姿ではない為、荷解き中に先輩から教わった『ネクタイの色で学年を見分ける』を実践する事は叶わなかったが、身長からして同学年だろう。


や、でももしかしたら2年なのかも…?わかんね~~な。童顔なせいで年齢が全く把握できず、俺は諦めてスマホを操作する。



無事に一階まで辿り着き、食堂へと向かう。開け放たれた扉をくぐり抜けて中に入る。人は今朝冴木さんに教えられた時よりも多いがそれでもまだポツポツといる程度だ。
ぐるっと見渡せばすぐにコンビニと呼ばれる売店を見つけることが出来た。

駅の中にあるコンビニのような外見のそこへ入る。中には菓子専門店のスイーツや取り寄せたであろう紅茶の茶葉などが並んでいる。いやこれコンビニでもねぇよ。マジで殺伐としたスレにインド象が!現象起きてんだけど、めちゃくちゃウケる


思わずにやけそうになる口元を引き締めて食材が並んだコーナーへと向かう。
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