救う毒

むみあじ

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4月 鈴蘭

第13話

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登壇した生徒6名は一列に並び舞台上からこちらを見つめる。口を開いたのはマイクを手にしたメガネの男だった。

「今年度の生徒会役員を紹介致します。まずは私から。副会長の東雲しののめ恭吾きょうごです。この学園をより良くする為に精一杯努力致しますので、どうぞよろしくお願いいたします」

そう挨拶したメガネの男、東雲先輩は笑みを貼り付けながら軽く頭を下げる。瞬間今朝のものとは比べ物にならない位の歓声が在校生の方から上がった。呼応するように1年生の一部もキャッキャしている。


「はいはーい!次は僕達!」
「生徒会庶務の伊知川ソラと!」
「同じく生徒会庶務の伊知川リクだよ!」
「よろしくねー!」


次にマイクを手渡されたのは伊知川兄弟。驚きのシンクロ率で声を合わせながら元気よく挨拶すると今度は低音の雄叫びが上がった。


「次は俺だね~。はじめまして~みんなの鈴原颯真だよ~ん!生徒会会計やるから、応援よろしくね~」


間伸びした声と共にへらりと笑ってヒラヒラと手を振っているのは鈴原。みんなのとつけるのが彼流の挨拶のようだ。周りからはまた甲高い歓声が上がっている。


「ん…次、俺…高城たかぎ悠斗ゆうと…書記…よろ、しく…」


短く挨拶したのは茶髪の男、高城先輩。眠たそうにしながらそう挨拶すると今度は歓声は聞こえず、代わりに拍手が会場を包み込んだ。それを気にもせず、すぐ隣にいた会長にさっさとマイクを手渡した。


「生徒会会長、西園寺晃だ」


辺りが緊張感に支配される。
低く心地良くも冷たい声が次に紡ぐ言葉を俺達生徒はただただ待っている。


「歴代の生徒会長は随分とつまらない運営をしてきたようだが、それも今日で終わりだ。この俺様が生徒会長になったんだ。絶対に忘れられない1年にしてやるから、覚悟しておけ」


瞬間、彼の声が温かなものへと変わった。そこにあるのはこの学園に対する愛情と、学園を変えようとする確かな信念。それが生徒に伝わったのか、今までで1番の歓声が会場内を支配した。


あぁ、ほんと、俺ってばいつもラッキーだ。ねぇ会長様。貴方の言う忘れられない1年、きっとすぐに達成されるよ。
だってこんな生徒会、絶対他には無いよ。こんな夢物語みたいな学園。



明らかに作り笑いな腹黒副会長。
天真爛漫悪戯っ子な双子庶務。
下半身緩めのヘラヘラしたチャラ男会計。
おっとりした癒し系無口ワンコ書記。
絶対的な自信に溢れた俺様生徒会長。



そんな、王道学園に必要なメンバーが全員揃っているなんて、あぁほんと凄いや。
これで王道転校生が来たら完璧だ。そうなったら俺は平凡のままでいるなんて絶対無理!ドキドキハラハラを独り占めなんてさせないよ。そんな楽しそうな事、俺が指を咥えて見てるなんて出来っこないし!


思わずニヤける口元を隠す為にほんの少し俯きながらそんな事を考えていると、いつの間にか彼等は自分達の席に戻っていき、入学式は終わっていた。このまま教室に帰りHRをして今日1日は終了、明日から通常授業が始まる。


HRでは時間割のプリントや年表等のプリントが渡され、特に何事もなく終了。案外ホスト教師は真面目に仕事をしてくれていた。けど外部生のためだけに自己紹介をするなんて事は無いらしい。そりゃそうだ。Sクラスは初等部でも中等部でもあまり変わる事がないらしいから、皆顔見知りだから、わざわざ俺の為に割く時間が勿体無いのだろう。俺もそう思うし。



皆が帰宅していく中、さっさと帰ろうとリュックを背負い教室から出ようとすると、不意に呼び止められる。声のする方を見ると先程退室したと思っていたホスト教師だった。あぁ、そういえば風紀からの勧誘があったの忘れてたな。


「そこの特待生、あー、加賀だったか?いや、えっとー…あぁ、鏡宮か。お前、ちょっと職員室こい」
「…あ、はい…」


盛大に苗字を間違えられたものの、手に持っていた名簿で確認したホスト教師、咲野さくやみつる先生。初日だし間違える事もあるだろう。加賀はちょっと惜しかったな~

俺はワザとびくりと肩を跳ね上がらせて、身を竦める。俺は今弱気で内気で根暗ななよなよガリ勉新入生!と念じながら、スーパー極小ボイスで返事をする。咲野先生はそれが気に入らなかったのか、眉をピクリと動かしてから大きく溜息をつき、こちらを見る事もせず廊下を歩いていった。

俺はその後ろ姿を見失わないように、けれど決して近づきすぎないよう気をつけながら職員室へと歩を進めた。


小声で失礼しますと呟きながら、自身の席へと腰掛けているホスト教師の元へ向かう。彼はデスクに山積みになった書類の中から強引に一枚の書類を見つけ出して俺に突きつけた。


「実はな、お前の成績がずば抜けて良かったからお前のこと風紀に推薦したんだよ。で、風紀内でも事務仕事が出来る奴探してるらしくてな、満場一致でお前になったらしい。て事だから風紀入れ」
「え、あの…僕、無理です」
「あ?なんか言ったか?」
「む、無理、です…僕、勉強しか、取りえないし…グズで、ノロマで、容量悪いし…その…人を、イライラさせちゃうし…」


入れなんて言われても、嫌なものは嫌。強引に話を進めようとする咲野先生に、卑屈な言葉をツラツラと吐き出せば、また眉がピクリと動いた。きっと彼は今俺が演じている卑屈で弱気な人が嫌いなのだろう。
こうなったら徹底的に嫌われて、意地でも風紀入りを阻止してやる


「お前なぁ…やってみなきゃわかんねーだろ。いいからやってみろって」
「……む、りです…」
「だからっ……あーーくそ…わかったよ。お前はやりたくねぇんだな?じゃあ風紀にはそう伝えとく。もう帰っていいぞ」


俯き体を縮こませながら小声で返事をしていたら、案外早く引いてくれた。恐らくこれ以上会話を続けていたら生徒相手にズバズバ言ってしまうと考えたのだろう。言葉の端々に苛立ちを含んでいたのがその証拠だ。

大人の対応…とは言い難い気がするな。いや、もしかすると俺の周りにいた人達が上手に隠しすぎるからこそ基準点が高くなってるのかな?それとも普通に先生が子供っぽいだけ?なんてグダグダ自問自答を続けながら、職員室を後にした。
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