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5月 ダチュラ
第29話
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続きの言葉を遮るように数度扉がノックされ、返事を待たずに開かれた。
出てきたのはよれたシャツに白衣を羽織った線の細い男性だった。厚めの唇に垂れ目の瞳、整った顔立ちは男性的というよりも女性的な美人。しかし、よれたシャツに酒の匂いからただ美人なだけでなくだらしのない美人だと見てとれた。
「あぁ…そういえば怪我人がいたんだね…えっとー、なんだっけ?名前…」
「えと、鏡宮依夜です…」
「鏡宮くんね~、はいはい。ごめんね、イケメン以外の名前は覚えられないんだよね、私。
それで、そっちのヤンチャ系美形君、名前は?」
「…」
「君がここへこの子を担ぎ込んできた時も無視だったよねぇ…うーん、近くで見れば見るほどタイプだな…どう?お兄さん今フリーなんだよね」
「触ろうとすんじゃねェ」
美人保健医が千秋の腕を取り自身の腕を絡ませようとすると先日拘束された時と同じ位に低い声を出して振り解いた。それを気に留めることもなくしなを作りながら千秋を上目遣いで見上げている。物凄くグイグイくる保健医に苛立ちを隠さずに睨みつけ舌打ちをする千秋。ここへ来る時もこうやって絡まれたのかと思うと少し同情する。
「ははっ、冗談だって。さ、ほら、もうすぐ集合の時間だからね、行った行った」
俺を横目で一瞬伺ったかと思えば笑みを浮かべて俺たちを強制的に部屋から追い出した。扉の前で呆然と立ちすくんでしまうが、千秋の盛大な舌打ちで我に帰る。
無言でコテージから出て、散歩道を歩き始めた。足にはまだ痛みが残っていて歩きにくく、自然と歩くペースが落ちる。千秋についていこうと足を必死に動かすが距離は離されていくばかりだ。
千秋がそんな俺に気が付いたのは結構な距離が離れた後だった。一瞬立ち止まり辺りを見回している姿はどことなく焦りを感じさせる。迷子の子供みたいだな、なんて感想を抱いていると大分後ろにいることに気がついたのか、早歩きで俺の目の前まで戻ってきた。
「…遅ェよ」
「ごめん、熱で頭がいっぱいで、捻挫してたの忘れてた」
「………背負うか?」
「おぶってくれんの?ん~…でもおんぶはいいかな。代わりにさ、荷物持ってよ。そんで一緒にゆっくり歩いてくれると嬉しい」
「…あっそ」
戻ってきた千秋はなんとなく安心した表情をしてから俺に悪態をついた。笑いながら謝ってみるとおんぶの申し出が…うそ、あの千秋が!?昨日のアレは緊急時だからって思ってたけど…今のこれは完全に俺に気を遣っている。自分から歩み寄ることを頑なにしようとしない千秋にしては物凄く珍しい事だ。内心酷く驚きつつも、平然を装い好意を無駄にしないよう代替え案を出してみる。
素っ気ない返事をしつつも片手を差し出してくる。それに甘えて持っていた荷物を彼に渡すと軽々と肩にかけて今度は俺に合わせたペースで歩き始める。本当はえへっ♡とか言いながら手を乗せたかったけどそんな事したら絶対二度と優しくしてくれなさそうなのでやめた。
ツンデレのデレ、とっても貴重だからね。
「千秋さ、さっき何を言いかけてたわけ?」
「…あ゛?」
「ほら、あの保健の先生が来る前。風紀委員長って単語は聞こえたんだけど…諒先輩のこと?」
「………別に、もういい」
美人保健医に強制退室させられる直前に千秋が話そうとしていた話題が気になり、軽く問いかけてみれば、千秋の雰囲気が冷たいものへと変わる。別に、という割にはまだ未練があるようにも見える表情で話を終わらせてしまった。これ以上聞くのはやめておこう。大体どんな事を聞きたがっているかはわかっているわけだしね
「んー、話題がないなぁ…なさすぎて独り言でも呟いちゃうかもなぁ…」
「…」
「諒先輩が俺の友達って事、みんなにバレたらどうしよう~。今ですら制裁一歩手前なのに、そんなの知られちゃったら大変だな~…みんなには内緒で交流しよ~っと」
辺りの木々をキョロキョロと見回しながら大きな声で独り言を呟き始める。千秋の何やってんだこいつって顔は見なかった事にして言葉を続けた。
「秘密の友達って関係性、なんか恋人っぽいな~戻って恋人ごっこみたいにしたらノってくれた~。諒先輩ってばやっさし~~!でも、変装してるのはバレないようにしなきゃな~~驚かせたいも~ん」
「………テメェ…」
「ワッ…!千秋がいるの忘れてたよっ…!大変大変!独り言、聞かれちゃった…ってコト!?おねがいおねがいっ、俺と諒先輩がお友達ってこと、秘密にしてねっ…!?絶対!絶対だよっ…!?」
「………」
ややふざけながらそう伝えると纏っていた冷たい雰囲気は消え失せた。が、白い目では見られている。そんな…!俺の渾身のち○かわ構文なのに~っ…!
「あーあ、千秋、俺の秘密握りまくりじゃん。これはもうさらに監視のために引っ付いてないとだわ~」
「…自分からバラしてんだろ」
「え~?そんな事ないよ。変装の時も今も、不可抗力じゃん?偶然とはいえ変装の秘密、理事長との関係、諒先輩との関係、合計3つも秘密握ってるよ、千秋。すごいね」
「………やっぱ覚えてねェんだな」
拍手をして褒めていると呆れた声で千秋がボソリと呟いた。覚えてないって、何が?
「え、え?えっ!?まって、なに?何が??」
「昨日テメェが自己申告してきた秘密の事だ。馬鹿が」
待ってガチで覚えてない。
「待って本気で…自己申告出来る秘密なんて特に……………ある、待って?秘密って………もしかしてだけど~も~さしかしてだけど~それって一人寝できない事じゃないの~!?そういう事だろっ!ジャン!」
「………」
俺の中のど○ろっく出てきちゃったんですけど?
「滑ったからってそんな目で見んのやめてってばよ……まって、俺それっ、俺それバレたくなかった~~~~っ…激ハズ…この歳で一人寝出来ないのはあまりにも恥ずいのにっ…うぁぁ…」
「……テメェの恥ずかしさのラインがつくづくわかンねェ」
出てきたのはよれたシャツに白衣を羽織った線の細い男性だった。厚めの唇に垂れ目の瞳、整った顔立ちは男性的というよりも女性的な美人。しかし、よれたシャツに酒の匂いからただ美人なだけでなくだらしのない美人だと見てとれた。
「あぁ…そういえば怪我人がいたんだね…えっとー、なんだっけ?名前…」
「えと、鏡宮依夜です…」
「鏡宮くんね~、はいはい。ごめんね、イケメン以外の名前は覚えられないんだよね、私。
それで、そっちのヤンチャ系美形君、名前は?」
「…」
「君がここへこの子を担ぎ込んできた時も無視だったよねぇ…うーん、近くで見れば見るほどタイプだな…どう?お兄さん今フリーなんだよね」
「触ろうとすんじゃねェ」
美人保健医が千秋の腕を取り自身の腕を絡ませようとすると先日拘束された時と同じ位に低い声を出して振り解いた。それを気に留めることもなくしなを作りながら千秋を上目遣いで見上げている。物凄くグイグイくる保健医に苛立ちを隠さずに睨みつけ舌打ちをする千秋。ここへ来る時もこうやって絡まれたのかと思うと少し同情する。
「ははっ、冗談だって。さ、ほら、もうすぐ集合の時間だからね、行った行った」
俺を横目で一瞬伺ったかと思えば笑みを浮かべて俺たちを強制的に部屋から追い出した。扉の前で呆然と立ちすくんでしまうが、千秋の盛大な舌打ちで我に帰る。
無言でコテージから出て、散歩道を歩き始めた。足にはまだ痛みが残っていて歩きにくく、自然と歩くペースが落ちる。千秋についていこうと足を必死に動かすが距離は離されていくばかりだ。
千秋がそんな俺に気が付いたのは結構な距離が離れた後だった。一瞬立ち止まり辺りを見回している姿はどことなく焦りを感じさせる。迷子の子供みたいだな、なんて感想を抱いていると大分後ろにいることに気がついたのか、早歩きで俺の目の前まで戻ってきた。
「…遅ェよ」
「ごめん、熱で頭がいっぱいで、捻挫してたの忘れてた」
「………背負うか?」
「おぶってくれんの?ん~…でもおんぶはいいかな。代わりにさ、荷物持ってよ。そんで一緒にゆっくり歩いてくれると嬉しい」
「…あっそ」
戻ってきた千秋はなんとなく安心した表情をしてから俺に悪態をついた。笑いながら謝ってみるとおんぶの申し出が…うそ、あの千秋が!?昨日のアレは緊急時だからって思ってたけど…今のこれは完全に俺に気を遣っている。自分から歩み寄ることを頑なにしようとしない千秋にしては物凄く珍しい事だ。内心酷く驚きつつも、平然を装い好意を無駄にしないよう代替え案を出してみる。
素っ気ない返事をしつつも片手を差し出してくる。それに甘えて持っていた荷物を彼に渡すと軽々と肩にかけて今度は俺に合わせたペースで歩き始める。本当はえへっ♡とか言いながら手を乗せたかったけどそんな事したら絶対二度と優しくしてくれなさそうなのでやめた。
ツンデレのデレ、とっても貴重だからね。
「千秋さ、さっき何を言いかけてたわけ?」
「…あ゛?」
「ほら、あの保健の先生が来る前。風紀委員長って単語は聞こえたんだけど…諒先輩のこと?」
「………別に、もういい」
美人保健医に強制退室させられる直前に千秋が話そうとしていた話題が気になり、軽く問いかけてみれば、千秋の雰囲気が冷たいものへと変わる。別に、という割にはまだ未練があるようにも見える表情で話を終わらせてしまった。これ以上聞くのはやめておこう。大体どんな事を聞きたがっているかはわかっているわけだしね
「んー、話題がないなぁ…なさすぎて独り言でも呟いちゃうかもなぁ…」
「…」
「諒先輩が俺の友達って事、みんなにバレたらどうしよう~。今ですら制裁一歩手前なのに、そんなの知られちゃったら大変だな~…みんなには内緒で交流しよ~っと」
辺りの木々をキョロキョロと見回しながら大きな声で独り言を呟き始める。千秋の何やってんだこいつって顔は見なかった事にして言葉を続けた。
「秘密の友達って関係性、なんか恋人っぽいな~戻って恋人ごっこみたいにしたらノってくれた~。諒先輩ってばやっさし~~!でも、変装してるのはバレないようにしなきゃな~~驚かせたいも~ん」
「………テメェ…」
「ワッ…!千秋がいるの忘れてたよっ…!大変大変!独り言、聞かれちゃった…ってコト!?おねがいおねがいっ、俺と諒先輩がお友達ってこと、秘密にしてねっ…!?絶対!絶対だよっ…!?」
「………」
ややふざけながらそう伝えると纏っていた冷たい雰囲気は消え失せた。が、白い目では見られている。そんな…!俺の渾身のち○かわ構文なのに~っ…!
「あーあ、千秋、俺の秘密握りまくりじゃん。これはもうさらに監視のために引っ付いてないとだわ~」
「…自分からバラしてんだろ」
「え~?そんな事ないよ。変装の時も今も、不可抗力じゃん?偶然とはいえ変装の秘密、理事長との関係、諒先輩との関係、合計3つも秘密握ってるよ、千秋。すごいね」
「………やっぱ覚えてねェんだな」
拍手をして褒めていると呆れた声で千秋がボソリと呟いた。覚えてないって、何が?
「え、え?えっ!?まって、なに?何が??」
「昨日テメェが自己申告してきた秘密の事だ。馬鹿が」
待ってガチで覚えてない。
「待って本気で…自己申告出来る秘密なんて特に……………ある、待って?秘密って………もしかしてだけど~も~さしかしてだけど~それって一人寝できない事じゃないの~!?そういう事だろっ!ジャン!」
「………」
俺の中のど○ろっく出てきちゃったんですけど?
「滑ったからってそんな目で見んのやめてってばよ……まって、俺それっ、俺それバレたくなかった~~~~っ…激ハズ…この歳で一人寝出来ないのはあまりにも恥ずいのにっ…うぁぁ…」
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