救う毒

むみあじ

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6月 夾竹桃

第41話*

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水音と吐息と衣擦れの音、そして甘い声。淫猥な雰囲気が漂う部屋の中で俺は、赤ん坊のように寝転んでいた。


「まずはペニスを優しく握って、包み込むように。そうしたらゆっくり上下に動かすんだ」
「うんっ、ふっ…」
「そう、いい子だ」


耳元に置かれたスマホ越しに聞こえる優しい声に酔ってしまう。しっかり返事をし、言われた通りに優しく上下させる。それに合わせて褒められるのが嬉しくて、気持ちよくて、思考がどろどろになってきた。


「気持ちいいか?」
「ん…」
「きちんと言わないと伝わらないぞ。それに、声に出した方が気持ち良くなれる」
「ん、きもちぃ…」
「どこが一番気持ちいい?依夜の気持ちいいところをちゃんと教えてくれないか?」
「あ、っ、う…さきっちょのとこ…と…くびれのとこ…っ、きもちい…」


言われるがままに答えながら手を動かす。弱い力でペースを守って上下させるのは酷く焦ったい。もっと刺激すればさらに気持ちいいのに、と思いつつもこのまま焦らされ続けていたい思いもあり、正反対な心が思考をさらにぐちゃぐちゃにかき混ぜた。

先程まで乾燥していた性器は非常に熱く、そしてぬるついている。鈴口から溢れ出てきた無色透明な蜜が俺の手をしっとりと濡らしたのだ。


「それなら先っぽの部分を指の腹で優しく撫でてみるんだ」
「うん、っ…ふぁっ…」
「気持ちいいか?ぬめりけのあるいやらしい音が聞こえてくるな。そんなに濡らして、依夜はこんなにもいやらしかったんだな?」
「あっ、うっ、…ごめ、なさい…っ」
「ほら、もっと撫でるんだ。塗り込むように、しっかり」


親指の腹で鈴口周辺を撫で擦れば先程よりも強い快感が下半身に押し寄せる。撫でれば撫でるほど、指の腹には粘り気のある蜜が纏わりついているのがみなくともわかる。それほどまでに濡らしている俺は、秀にぃさんのいう事を全く否定できなかった。


「あっ、あっ、うっぅ…っはぁッ…」
「ははっ、気持ちよさそうな声だ。もう片方の手でくびれの部分も触ってごらん。指を輪っかにして優しくだぞ?」
「うぅっ…んあっ、きもちっ」
「さっき言った事を守っていて偉いな、依夜」
「っっっあぅっ…」


褒められた。偉いって言われた。褒められて嬉しい、気持ちくて嬉しい、甘い声が気持ちい、秀にぃさんすき。
ぐるぐると脳内を回るのはそんな言葉達。頭を撫でられているかのように錯覚するほど優しい声に前後不覚になってしまう。

親指と人差し指で作った輪をゆっくり優しく上下させれば、ぬちぬちぐちゃぐちゃといやらしい音が響く。その度に何とも情けない声をあげてしまうが、今の俺にとっては情けなささえもスパイスにしかならない。



「しゅうにぃ、しゅうにぃさんっ…あっ、はぁっ…もっと、もっと…擦っちゃ、だめ…っ?」
「ッははっ、堪え性がないな…そんなにしたいのか?」
「したいっ、…はぁ、きもちいことしたいっ…あっ、うぅっ、いきたいよぉ…」
「はははっ…煽るのが上手だな…可愛いおねだりもしてもらった事だし、もっと擦ってもいいぞ」
「あっ、ふあっ、んぅっ…うれし、はっ、はっ…」
「ただし、イきそうになったら言うんだぞ。いいと言うまでイってはいけないからな?」


抑えていた分だけ手の動きは速くなる。力を入れないようにしながら小刻みに動かす度に痺れるような甘い刺激が脳を麻痺させていく。それが堪らなく気持ちよくて、気がつけば口の端からは唾液が滴り落ちていた。
イくのすら管理されるなんて、屈辱的な感情が湧いてくる。俺が主人のはずなのに、これじゃまるで、俺が秀にぃさんのペットだ。やだやだ、下剋上されちゃやだ

そんな思考とは真逆に、俺の口は勝手に動く。甘い喘ぎ声を漏らしながら、言われた通りに報告していた。


「あっ、もぅッ…いく、っあ、ハァッ…いくっ、イクッ…」
「まだダメだ」
「うぅっ…いきたいっ、きもちっ、はぁ…あっ、あっ、んぅッ…」
「我慢だ、我慢」
「あぁあっ…いきたいッ、イきたいよぉッ…」
「さっきのおねだりよりも可愛いおねだりをしてくれるなら考えよう」
「しゅる、するからぁッ!あっ、はぁっ、いよのッ…いやらしいちんちんッはぁ、んっ、イカせて、くらさいッ…イくときのこえ、はぁっ、ふぅッ…きいててッ…?」


働かない脳みそをフル回転させて搾り出したおねだりは、あまりにも飾り気も、余裕もなく、ひたすらに欲を満たすためだけの内容だ。しかしそれに対しても文句一つ言わない秀にぃさんは、スマホ越しに喉を鳴らした。


「…ッ、はぁっ…よし、それじゃあカウントをしよう…イケと言ったらイってもいいぞ」
「い、いまいきたいのにぃッ」
「5、4、3…」
「あっはぁ…はぁ、うぅっ、んんっ…はぁ、ふっ…」
「2、1…」
「ハッ、ハッ、ハッ…あっ、は、ひぃっ…」
「イケ」
「ッんッあ"~~~~~ッッッ♡」


しかしおねだりをしたからと言ってすぐにイかせて貰えず尚も焦らされる。1秒が永遠に感じるほど長く、カウントが減るたびに高まる射精感と期待、絶頂への渇望が迫り上がっていった。
そうやって1秒1秒を耐え忍んだのちに与えられた命令は、俺の脳を真っ白に焼き尽す。俺を完全に屈服させる声によって弾け飛んだ快感は、真っ白く濁る欲となり俺の手を汚す。それは、完全に立場を覆されてしまったという証拠でもあった。

丸めていた体をさらに丸め込ませ、勝手にびくついてしまうのを宥めるように足の指をぎゅっと握り込む。しかしやってくるのは未だに快感のみで、目の前には星が散り、自然と目を細めてしまう。譫言のように何の意味もない声をあげながら、快楽が俺を包み込む。


「あ~ッ、ハァッ…ぅあ"っ、ん"ぅ~ッ」
「まだ気持ちよくなっているのか?はしたなく嬌声を上げてヨガっている依夜を見れないのはとても残念だな…」
「あぁ、全くだ。だがそうだな、通話だとうまくできないだろう。帰ってきたらまた俺と八剣の2人で、手取り足取り、教えてやるのが良さそうだ」
「はぇっ?あ、っうぇ、はぅッ?」


突然聞こえてきたもう一つの声に喘ぎながらも混乱する。え?なんで?ニィさんの声、でも、ニィさんいないのに?なんで?わかんない、気持ちいことしかわかんない…


「訳がわからないと言いたそうな声だな。随分と前から依夜の痴態は聞いていた」
「へ、ぇ?ぅ?」
「可愛らしく喘いでいたな、気持ちよかったか?」


甘く囁かれたニィさんの温かい声に溢れてきた唾液をこくりと飲み干す。はぁ、と漏れ出た息は熱を持ち、俺の興奮を示していた。


「き、もち、かったぁ…」


汚れた手を呆然と見つめながらうっとりとつぶやくと、微かに笑う気配を液晶越しに感じた。もしもここに2人がいれば沢山頭を撫でてもらえたに違いない。
そんな事を考えながら未だ落ち着かずにいる体を起こしてベッドから降りる。

満ち足りた感覚を逃さないように気をつけながら自室の扉を開けて洗面所へと向かう。汚れた手を洗い流しながら服を脱いでいき、そのままシャワーを頭から浴びた。






「…依夜?」
「部屋から出たな」
「……放置か…」
「晩酌をしながらでも待てばいいだろう。八剣、ワインを」
「それもそうか。全く、いつになってもお前は人使いが荒い…」
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