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7月 グロリオサ
第73話
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ここに彼を擁護する者はいない。風紀は生徒の資料が多く保管されているのだし、当然の事だろう。特に用がない人間が入っていい教室ではなのだし、なんなら今でさえ物凄く妥協してくれているのだ。
紅茶をぐっと飲み干して、そっとテーブルに置く。田園くんからの熱い眼差しを無視して空になったティーセットを片づけ始めた。
トレーにティーセットを載せ、持ち上げようと取手に手をかけた所で勢いよく扉が開く音が聞こえ、全員の視線がそちらに向いた。なんというデジャヴ。
しかし今回の訪問者は俺の姿を確認すると扉も閉めずに一目散にこちらへと駆け寄ってきた。
「イッヨくーーーーーーーーーんっ!!!」
どこか危ない雰囲気をもつ笑みを浮かべながらやってきた、金髪ポンパドールの男は俺に思い切り抱きつくと、意外にも逞しい腕に力強く体を拘束された。肩に頭を乗せてスーーーーーーッと、ダイ◯ンもびっくりな勢いで俺の髪の匂いを嗅いでいる。
壱成先輩の拘束に抵抗せずにいると隣に座っていた千秋が立ち上がり壱成先輩を引き剥がした。キツく睨みつけながら俺を背中に庇うと、片手で胸倉を掴み拳を上げる。
「千秋」
彼の名前を呼べば、振り下ろされていた拳が、顔に当たる寸前で止まる。褒めるように、ゆったりと微笑めば眉間の皺が更に深く刻まれてしまった。何故止めると言いたげな千秋に、眉を下げながら手をそっと下させて、当たり前と言うように笑いながら答える。
「せっかく手当したのに、傷が酷くなっちゃうでしょう?」
諭すように目を見て話せば、呆気に取られた様子で眉間の皺を消した。その可笑しな様子にくすくすと笑いながら、片付けようと思っていた銀のトレーを持ち上げた。
トレーをシンクの隣に置き、レバーを上げればゆっくりと水が流れた。置かれていた食器用洗剤を手に取り、スポンジに軽くつけてから食器類をサッと洗っていく。
「オイイチッ!テメッ、聞き取りはどうした!!」
「ッベ~~~…妻じゃん。人妻じゃん。後ろ姿バカエロ~~…腰細~~~…あ゛~~~~~なぁタッツン、エプロンねぇーの?エプロン。白いフリフリのやつぅ!あの副いいんちょ辺り、持ってんじゃねーーーの?出せよ、オラ。イヨくんに着てもらうから出せヨォ!」
「あるわけねぇだろ!つかテメェヤクでもキメたか!?言動が気色悪りぃッつの!!」
「…薄々わかってはいたが大分濃いのを引っ掛けたなぁ、依夜」
洗い終わったそれらをしっかりと拭いて戸棚に戻しつつ、騒がしい彼らの会話に耳を傾ける。俺が人妻だなんだと言われているが無視だ。無視無視。それよりも気になるのは…
「引っ掛けたってなんですか、諒先輩。俺何もしてないし」
「うおっ、聞こえてたのかよ」
吃驚しました!って顔をしながらオーバーリアクションを取る諒先輩の後ろに立ち、頬をムニムニと人差し指で押してやる。聞こえるだろうと思って言ったくせに、何て奴だ!
頬をつつく攻撃は効果がないようなので、仕方なく壱成先輩の隣にずいずいっと座る。奥から千秋、壱成先輩、俺の3人が座っている状態なのだが、ソファはもうぎっちぎちだ。俺が細くてよかったよ、マジで。筋肉ムキムキだったら死ぬほどむさ苦しいだろうな…とかどうでも良いことを考えつつも先輩に問いかけた。
「それより、壱成先輩と倉沢先輩はお知り合いなんですか?」
「イヨくんおかぁえりぃ~~。ソォソォ、俺とタッツンは幼馴染の腐れ縁でね~え、クラスも部屋も一緒なんだヨぉ~。ハァ~~~クソほど嫌」
俺に体を預けるようにしなだれかかってきた壱成先輩は、俺の髪の毛を片手でいじったりすんすんと匂いを嗅いだりしながら問いかけに答えた。
「俺も嫌に決まってんだろクソボケがッ!!つかテメェ聞き取りはどうしたって聞いてんだろうが」
「はぁ~?風紀には話したくねーーーからバックれたに決まってんじゃあ~ん。イヨくんになら話すケド♡」
「え?マジ?聞きたい聞きたい。犯人ぶっ潰すからさ、教えてください壱成先輩」
猫撫で声を出しながら片手で先輩の頭を撫でてみれば嬉しそうに笑みを深めた。
「もっちろーーーん♡♡イヨくんの為なら、なぁ~~んでもヤるよぉ♡」
砂糖を吐き出してしまいそうな程甘ったるい声に胸焼けしてしまいそう。陳腐な言葉を聞き流すように微笑みを浮かべれば、彼はニヤついた笑みを一瞬消してすぐさま残忍な笑みを浮かべた。鈍い輝きを見せた瞳で俺を見つめながら、そっと耳元で囁く。
「なんでも、どんな事でも…ね」
甘さと影を孕んだ声音に肌が粟立ったと同時に、つられるように出てきたのは愉悦の笑み。
喉の奥で笑いを噛み殺しながら口元に手を当ててニヤついた顔を隠した。
彼の言葉に嘘はない。本当に、俺の為ならなんだってやってくれるのだろう事がしっかりと伝わった。
「あー、面白い!ちゃぁんと、言質はとったから。後で証明してくださいね、壱成先輩」
本当は証明なんて必要ないのだが、何をしてくれるのか気になる、という好奇心だけでそう投げかける。証明がいらないことなんてお見通しかもしれないが、それでもいいんだ。
だって俺は、言われた事をなんでもするだけの傀儡なんていらないからさ
紅茶をぐっと飲み干して、そっとテーブルに置く。田園くんからの熱い眼差しを無視して空になったティーセットを片づけ始めた。
トレーにティーセットを載せ、持ち上げようと取手に手をかけた所で勢いよく扉が開く音が聞こえ、全員の視線がそちらに向いた。なんというデジャヴ。
しかし今回の訪問者は俺の姿を確認すると扉も閉めずに一目散にこちらへと駆け寄ってきた。
「イッヨくーーーーーーーーーんっ!!!」
どこか危ない雰囲気をもつ笑みを浮かべながらやってきた、金髪ポンパドールの男は俺に思い切り抱きつくと、意外にも逞しい腕に力強く体を拘束された。肩に頭を乗せてスーーーーーーッと、ダイ◯ンもびっくりな勢いで俺の髪の匂いを嗅いでいる。
壱成先輩の拘束に抵抗せずにいると隣に座っていた千秋が立ち上がり壱成先輩を引き剥がした。キツく睨みつけながら俺を背中に庇うと、片手で胸倉を掴み拳を上げる。
「千秋」
彼の名前を呼べば、振り下ろされていた拳が、顔に当たる寸前で止まる。褒めるように、ゆったりと微笑めば眉間の皺が更に深く刻まれてしまった。何故止めると言いたげな千秋に、眉を下げながら手をそっと下させて、当たり前と言うように笑いながら答える。
「せっかく手当したのに、傷が酷くなっちゃうでしょう?」
諭すように目を見て話せば、呆気に取られた様子で眉間の皺を消した。その可笑しな様子にくすくすと笑いながら、片付けようと思っていた銀のトレーを持ち上げた。
トレーをシンクの隣に置き、レバーを上げればゆっくりと水が流れた。置かれていた食器用洗剤を手に取り、スポンジに軽くつけてから食器類をサッと洗っていく。
「オイイチッ!テメッ、聞き取りはどうした!!」
「ッベ~~~…妻じゃん。人妻じゃん。後ろ姿バカエロ~~…腰細~~~…あ゛~~~~~なぁタッツン、エプロンねぇーの?エプロン。白いフリフリのやつぅ!あの副いいんちょ辺り、持ってんじゃねーーーの?出せよ、オラ。イヨくんに着てもらうから出せヨォ!」
「あるわけねぇだろ!つかテメェヤクでもキメたか!?言動が気色悪りぃッつの!!」
「…薄々わかってはいたが大分濃いのを引っ掛けたなぁ、依夜」
洗い終わったそれらをしっかりと拭いて戸棚に戻しつつ、騒がしい彼らの会話に耳を傾ける。俺が人妻だなんだと言われているが無視だ。無視無視。それよりも気になるのは…
「引っ掛けたってなんですか、諒先輩。俺何もしてないし」
「うおっ、聞こえてたのかよ」
吃驚しました!って顔をしながらオーバーリアクションを取る諒先輩の後ろに立ち、頬をムニムニと人差し指で押してやる。聞こえるだろうと思って言ったくせに、何て奴だ!
頬をつつく攻撃は効果がないようなので、仕方なく壱成先輩の隣にずいずいっと座る。奥から千秋、壱成先輩、俺の3人が座っている状態なのだが、ソファはもうぎっちぎちだ。俺が細くてよかったよ、マジで。筋肉ムキムキだったら死ぬほどむさ苦しいだろうな…とかどうでも良いことを考えつつも先輩に問いかけた。
「それより、壱成先輩と倉沢先輩はお知り合いなんですか?」
「イヨくんおかぁえりぃ~~。ソォソォ、俺とタッツンは幼馴染の腐れ縁でね~え、クラスも部屋も一緒なんだヨぉ~。ハァ~~~クソほど嫌」
俺に体を預けるようにしなだれかかってきた壱成先輩は、俺の髪の毛を片手でいじったりすんすんと匂いを嗅いだりしながら問いかけに答えた。
「俺も嫌に決まってんだろクソボケがッ!!つかテメェ聞き取りはどうしたって聞いてんだろうが」
「はぁ~?風紀には話したくねーーーからバックれたに決まってんじゃあ~ん。イヨくんになら話すケド♡」
「え?マジ?聞きたい聞きたい。犯人ぶっ潰すからさ、教えてください壱成先輩」
猫撫で声を出しながら片手で先輩の頭を撫でてみれば嬉しそうに笑みを深めた。
「もっちろーーーん♡♡イヨくんの為なら、なぁ~~んでもヤるよぉ♡」
砂糖を吐き出してしまいそうな程甘ったるい声に胸焼けしてしまいそう。陳腐な言葉を聞き流すように微笑みを浮かべれば、彼はニヤついた笑みを一瞬消してすぐさま残忍な笑みを浮かべた。鈍い輝きを見せた瞳で俺を見つめながら、そっと耳元で囁く。
「なんでも、どんな事でも…ね」
甘さと影を孕んだ声音に肌が粟立ったと同時に、つられるように出てきたのは愉悦の笑み。
喉の奥で笑いを噛み殺しながら口元に手を当ててニヤついた顔を隠した。
彼の言葉に嘘はない。本当に、俺の為ならなんだってやってくれるのだろう事がしっかりと伝わった。
「あー、面白い!ちゃぁんと、言質はとったから。後で証明してくださいね、壱成先輩」
本当は証明なんて必要ないのだが、何をしてくれるのか気になる、という好奇心だけでそう投げかける。証明がいらないことなんてお見通しかもしれないが、それでもいいんだ。
だって俺は、言われた事をなんでもするだけの傀儡なんていらないからさ
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