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7月 グロリオサ
第76話
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3人の声がまるで示し合わせたかのように綺麗に重なる。こんな息ぴったりのくせに仲良くないとか大嘘じゃん。ほら、千秋なんて興味無かったくせに小馬鹿にしたように鼻で笑ってんぞ。
「何笑ってんだ久道」
「るせェ。で、これを計画した奴は誰だ?とっとと吐け」
「ありゃぁ、くど~くん知ってんだァ。でもなァ、計画犯は俺も特定出来てねーんだよナァ」
不機嫌そうに眉を顰めながらツッコミを入れた諒先輩を一蹴した千秋は、顔を自身の隣、丁度俺に張り付いていた壱成先輩の方へ向け、剣呑な鋭い眼差しで彼を射抜いた。しかしそれに臆することも無く、肩をすくめながら胡散臭い笑みを浮かべている。
「でも目星はついてるんじゃないの?」
「……やっぱイヨくん心読めんデショ」
「いやいや、読めませんって」
人より機微に聡いだけだ。ほんの少しの視線の動き、呼吸の乱れ、瞬きの回数に仕草、その全てを観察して相手の感情を読み取る。それを呼吸をする事と同じように自然とやっているだけで、心を読むなんてエスパーみたいな事はしていないし、出来やしない。
でも逆を言えば、観察だけで相手の感情や思考を紐解けてしまうのだから、人間って面白いよね。
「憶測でも良いなら言うけド…変に先入観与えたらよくねェーんじゃナイ?」
「ほとんど決め打ちだから大丈夫ですよ」
「は?依夜お前、誰が計画したか知ってんのか?」
「知ってはいないです。8割予想の2割は勘!」
「つーことは確定じゃねぇーか、お前が言えよ」
その一言に、壱成先輩と倉沢先輩はギョッとしながら発言者である諒先輩をまじまじと見つめる。
「え~?だって俺、被害者だし?顧問探偵って柄じゃないし?」
「そここだわんノォ!?」
「もちろん。肩書きは大事だよ、イッセイ君」
「顧問探偵になってんじゃねーかよ」
「イッセイ君呼び…良い…………」
「…お前らいつまでやるつもりだ?イチもアホやってねーで早く言え」
倉沢先輩の呆れた声で話が脱線していた事に気がつく。はっとしつつせっかちな千秋を横目で見てみれば視線がしっかりとかち合った。その目は酷く苛立っていて、思わず誤魔化すようにへらりと笑えば、スッと目が細められる。ぐずぐずしてンなよタコとか思われてそう。もしかするともっと酷い暴言カモ…!?
「あーーー、じゃあズバッと言っちゃうねェ~?多分だけど、ふくいいんちょ~の親衛隊辺りかナァって」
「は?」
「あ?」
「やっぱし?」
副委員長の親衛隊。
そのワードに三者三様な反応を見せたのは諒先輩、倉沢先輩、俺。千秋は眉間の皺が更に深くなった。も~、皺寄せちゃだめって言ってんのに!グリグリしてやる!グリグリ~
そんな俺を意に介さず、千秋は黙って考え込んでいるようだ。何を考えているのかは読み取れないが、その瞳は真剣そのもので、流石の俺もそっと手を離す。
「おいイチ、どう言う事だ?風紀の親衛隊は認められていないしそれらしきものを見た事はねぇーぞ」
「マァ、ね…俺もしっかり尻尾掴めてるわけじゃネーーーーーノヨ。でもさ、俺らみて~な制裁を実行する側では割と流れてんダァ、そう言う噂」
壱成先輩曰く、制裁を実行する人間は大まかに分けて2種類いるそうだ。
一つは親衛隊員自ら制裁を実行する者達。素行不良でもそうで無くても、とにかく力が有り余っている生徒が実行する。裏切ることも無いため、基本的にはこれだそう。
もう一つは壱成先輩のように依頼されれば報酬次第で制裁を実行する者。こちらは母数が多い為使えるか使えないかはピンキリだそうだ。壱成先輩はその中でも評判が良く、人気だが、依頼料が相当お高いそうで、それに見合う家柄の人間しか利用しないらしい。
「俺の場合はさぁア?後ろ盾もしっかりしてっから結構依頼がくるんだヨォ~。知ってっかな?北義会って」
「あー、名前だけなら。えっと、ヤのつくお仕事ですよね?」
「ソォソォ!例え権力でこっちを潰そうとしても北義会が黙ってねーノ。だから被害者はみぃんな泣き寝入リなんだよネェ~」
いやド外道クズ野郎
平然と権力を笠に着て変わらぬ笑顔を浮かべる彼が、無垢な子供のように見える。善悪なんて、きっと彼の前では意味を無さないのだろう。それこそ、幼い子供と同じように。
「それって、凄く大切な事じゃないんですか?俺らに話しちゃって良いの?それをバラして北義会の中で壱成先輩の立場が悪くなったりとかしない?」
「うえっ?」
素っ頓狂な声を上げた彼の、カラメル色の瞳をじっと見つめる。その瞳は微かに揺れ動いたが、すぐさまとろりと蕩け始めた。連動するように彼の表情もゆるゆると解れていく。
「…やべ~…お説教とかじゃなくて俺の心配してくれんノ、スゲェ嬉しい…」
赤く染まった頬を隠さずにヘラヘラと笑っている壱成先輩の頭を褒めるように撫でて、口元を緩めた。
彼に講釈を垂れる気は一切ない。俺も人のことを言えるほど善人ではないし、彼の中にある善悪についての価値観を俺が勝手に縛り付けるのは、彼をきっと不快にさせる。田園くんを殴ろうとした時に気が付いたが、彼は好いた人間に叱られる、怒られる、威圧される、失望されるのが相当嫌いなようだ。
それなら俺は、彼をただただ受け入れるのみ。だって彼は、全身で俺への愛を伝えてくる。それならば俺も、その愛に応えねば。愛には愛を返したい。
「壱成先輩だからだよ」
「ま、またそんなイケメンなこと言ウーーーーーッ!!!タッツン助けて俺イヨくんに女の子にされちゃウゥ!!!」
「俺達は何を見せられてるんだ??????」
「何笑ってんだ久道」
「るせェ。で、これを計画した奴は誰だ?とっとと吐け」
「ありゃぁ、くど~くん知ってんだァ。でもなァ、計画犯は俺も特定出来てねーんだよナァ」
不機嫌そうに眉を顰めながらツッコミを入れた諒先輩を一蹴した千秋は、顔を自身の隣、丁度俺に張り付いていた壱成先輩の方へ向け、剣呑な鋭い眼差しで彼を射抜いた。しかしそれに臆することも無く、肩をすくめながら胡散臭い笑みを浮かべている。
「でも目星はついてるんじゃないの?」
「……やっぱイヨくん心読めんデショ」
「いやいや、読めませんって」
人より機微に聡いだけだ。ほんの少しの視線の動き、呼吸の乱れ、瞬きの回数に仕草、その全てを観察して相手の感情を読み取る。それを呼吸をする事と同じように自然とやっているだけで、心を読むなんてエスパーみたいな事はしていないし、出来やしない。
でも逆を言えば、観察だけで相手の感情や思考を紐解けてしまうのだから、人間って面白いよね。
「憶測でも良いなら言うけド…変に先入観与えたらよくねェーんじゃナイ?」
「ほとんど決め打ちだから大丈夫ですよ」
「は?依夜お前、誰が計画したか知ってんのか?」
「知ってはいないです。8割予想の2割は勘!」
「つーことは確定じゃねぇーか、お前が言えよ」
その一言に、壱成先輩と倉沢先輩はギョッとしながら発言者である諒先輩をまじまじと見つめる。
「え~?だって俺、被害者だし?顧問探偵って柄じゃないし?」
「そここだわんノォ!?」
「もちろん。肩書きは大事だよ、イッセイ君」
「顧問探偵になってんじゃねーかよ」
「イッセイ君呼び…良い…………」
「…お前らいつまでやるつもりだ?イチもアホやってねーで早く言え」
倉沢先輩の呆れた声で話が脱線していた事に気がつく。はっとしつつせっかちな千秋を横目で見てみれば視線がしっかりとかち合った。その目は酷く苛立っていて、思わず誤魔化すようにへらりと笑えば、スッと目が細められる。ぐずぐずしてンなよタコとか思われてそう。もしかするともっと酷い暴言カモ…!?
「あーーー、じゃあズバッと言っちゃうねェ~?多分だけど、ふくいいんちょ~の親衛隊辺りかナァって」
「は?」
「あ?」
「やっぱし?」
副委員長の親衛隊。
そのワードに三者三様な反応を見せたのは諒先輩、倉沢先輩、俺。千秋は眉間の皺が更に深くなった。も~、皺寄せちゃだめって言ってんのに!グリグリしてやる!グリグリ~
そんな俺を意に介さず、千秋は黙って考え込んでいるようだ。何を考えているのかは読み取れないが、その瞳は真剣そのもので、流石の俺もそっと手を離す。
「おいイチ、どう言う事だ?風紀の親衛隊は認められていないしそれらしきものを見た事はねぇーぞ」
「マァ、ね…俺もしっかり尻尾掴めてるわけじゃネーーーーーノヨ。でもさ、俺らみて~な制裁を実行する側では割と流れてんダァ、そう言う噂」
壱成先輩曰く、制裁を実行する人間は大まかに分けて2種類いるそうだ。
一つは親衛隊員自ら制裁を実行する者達。素行不良でもそうで無くても、とにかく力が有り余っている生徒が実行する。裏切ることも無いため、基本的にはこれだそう。
もう一つは壱成先輩のように依頼されれば報酬次第で制裁を実行する者。こちらは母数が多い為使えるか使えないかはピンキリだそうだ。壱成先輩はその中でも評判が良く、人気だが、依頼料が相当お高いそうで、それに見合う家柄の人間しか利用しないらしい。
「俺の場合はさぁア?後ろ盾もしっかりしてっから結構依頼がくるんだヨォ~。知ってっかな?北義会って」
「あー、名前だけなら。えっと、ヤのつくお仕事ですよね?」
「ソォソォ!例え権力でこっちを潰そうとしても北義会が黙ってねーノ。だから被害者はみぃんな泣き寝入リなんだよネェ~」
いやド外道クズ野郎
平然と権力を笠に着て変わらぬ笑顔を浮かべる彼が、無垢な子供のように見える。善悪なんて、きっと彼の前では意味を無さないのだろう。それこそ、幼い子供と同じように。
「それって、凄く大切な事じゃないんですか?俺らに話しちゃって良いの?それをバラして北義会の中で壱成先輩の立場が悪くなったりとかしない?」
「うえっ?」
素っ頓狂な声を上げた彼の、カラメル色の瞳をじっと見つめる。その瞳は微かに揺れ動いたが、すぐさまとろりと蕩け始めた。連動するように彼の表情もゆるゆると解れていく。
「…やべ~…お説教とかじゃなくて俺の心配してくれんノ、スゲェ嬉しい…」
赤く染まった頬を隠さずにヘラヘラと笑っている壱成先輩の頭を褒めるように撫でて、口元を緩めた。
彼に講釈を垂れる気は一切ない。俺も人のことを言えるほど善人ではないし、彼の中にある善悪についての価値観を俺が勝手に縛り付けるのは、彼をきっと不快にさせる。田園くんを殴ろうとした時に気が付いたが、彼は好いた人間に叱られる、怒られる、威圧される、失望されるのが相当嫌いなようだ。
それなら俺は、彼をただただ受け入れるのみ。だって彼は、全身で俺への愛を伝えてくる。それならば俺も、その愛に応えねば。愛には愛を返したい。
「壱成先輩だからだよ」
「ま、またそんなイケメンなこと言ウーーーーーッ!!!タッツン助けて俺イヨくんに女の子にされちゃウゥ!!!」
「俺達は何を見せられてるんだ??????」
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