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第三章
第99話 【想いを寄せる少女】別視点:リア
しおりを挟む時は遡り、ラルクが里についた頃に戻る。
☆★☆
「はぁ……ラルク君。また、何処かに行っちゃったんだ……」
私は溜息と共にそう発すると、横に座っている親友であり私の事を何でも知っているセーラから「溜息吐いたら、幸せが逃げちゃうよー」と頭を撫でられながら言われた。
私の名前は、ローゼリア・A・レコンメティス。レコンメティス王国の第一王女だが、普通の12歳の女の子だ。
「リアって、昔っからラルク君の事好きなのに何で好きって言わないの?」
「ッ! セーラ、何でその事を――」
「しってるのか? って、そりゃみてたら分かるよ。だって、ラルク君が家庭教師してる時から、ず~っとラルク君の話ばっかりだったでしょ?」
横に座っているセーラを見ると、呆れたようにしてそう言った。
まさか、私の想い人を知られているとは知らなかった私は顔を赤くして俯いていしまった。
「今更、恥ずかしがること? ラルク君、ラルク君って言ってたのを見守って上げてたのに、2年経っても行動しないんだから……」
「うぅ……だって、ラルク君との関係が無くなるの怖いんだもん……」
「壊れるって、ラルク君がリアを嫌いだって証拠ないでしょ?」
セーラから続けて「それに、第三者としてみてもラルク君はリアに対して少なからず意識はしてると思うわよ」と言われて、私は「えっ?!」と驚いた。
「でも、リアが行動しなかったせいで他の女性と縁が出来始めて、そっちに意識が行ってる可能性もあるけどね」
「ッ!」
「だって、ラルク君。年頃の男の子だよ? 聞いた話だと、ラルク君のお店には歳が近い女性が居るって聞いたわよ」
それについては、私も知っている。知っているというより調べて貰った。名前は、レティシア。歳は私達よりも3歳差で今年学園を卒業したばかりで父のモーリスさんに憧れて冒険者となった人。
冒険者はパーティーを組むのが多く、出来るだけ同じランク帯の人と組むことが多いと言われていてそれでラルク君と出会って今はお店のお手伝いをしていると報告をしてくれた。
「しってるよ……何度か見たもん、顔も可愛くて胸も大きかった……」
「そうね。私達よりも年上だから成長してる所は成長してたわね。それにほら、ラルク君って最初の頃〝小熊亭〟に泊まってたんでしょ? あそこも同じくらいの女の子がいるでしょ? ラルク君って、以外と女の子と縁があるんだよ?」
「う~……」
セーラから脅しの様にそう言われた私は、さらに俯き声が聞こえない様に耳を塞いだ。その後も淡々とセーラからのお説教を受けた私、泣きそうになった。
そして、夕方頃セーラも家に帰り一人になった自室で私はベッドに横になった。
「今頃、ラルク君は知らない土地で女の子と……」
セーラからのお説教のせいで嫌な妄想をしてしまった私は、ブンブンと頭を振って母様の所へと向かった。母様の書斎に行き、扉をノックして中に入った。
「あら、リア。どうしたの?」
「ちょっと、相談したい事が……」
「あらあら、良いわよ。お母さんに何でも話してごらん」
母様はそう言って、読んでいた本を机に置き私の方に体を向けた。
「それで、相談事ってなに?」
「……母様は、私の好きな人は知ってる?」
「ラルク君でしょ? 知ってるわよ」
「うっ、やっぱりバレてたの……」
「当り前でしょ、母親よ。それにアルスもリオもウォリスも知ってるわよ?」
家族全員が知ってた事に驚いた私は「えっ?!」と驚き、固まった。そんな私に母様は「リアの行動と反応みてたら、分かるわよ」とため息交じりに言われた。
「……分かったわ。好きなラルク君が今、リア以外の女の子と接点が増えて焦り始めたのかしら?」
「ッ! 母様、何でそのことを!」
「分かるわよ~、だってリアは私の子よ? しかし、それに気づくのが遅いわよ。もう、既にライバルは沢山居ると思った方が良いわよ」
母様の無慈悲なその言葉に続けて「今で言うと、モーリスの所のレティシアちゃんとダッツの所のアンナちゃんかしらね」とライバルの名前を伝えられた。
「ラルク君、あの子は今後も活躍し続けると思うわよ。今は、まだ小さな事だけど、その内グルドみたいに英雄になると思うわ」
「……」
「英雄になれば、それこそ今よりも女性から交際を求められるわね。ラルク君、グルドとは違って顔も良いから直ぐに出来るわよ」
「……」
相談しに来た筈の母様から嫌な考えを伝えられた私は、その場で泣きそうになった。しかし、そんな私に「泣くならリアはそれまでの子だったって事になるわよ? ラルク君を諦めたいの?」と言われた私は、顔を横に振った。
「なら、磨きなさい。今よりもずっと女の子らしく、一緒になって楽しいと思ってもらえるようにね」
「はい!」
「その為なら、私も全力で応援するわよ。……それに万が一、ライバルが居てもこの国は重婚が許されるわ、2番目3番目を狙いなさい。王女だからと言って、権力に甘えちゃダメよ。リアはそれを良く知ってるわよね?」
「はい、それにラルク君に選んでもらえるなら他の子とも仲良くして楽しい家族になります!」
「その意気よ」と母様から頭を撫でられた私は、絶対にラルク君に選んでもらえるような女性になると目標を立てた。
☆★☆
一方リアがそのように意気込んでいる頃、ラルクが里で出会ったリンという女の子の家に男女2人だけという甘い展開になっているとは、リアは知る由も無かった。
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