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第1章 家をつくろうと思っていたら街ができてい
26.宝玉とやらを集めたい
しおりを挟む冒険者ギルドを出た俺たちはまっすぐ宿に帰った。
なんだかんだ一日中移動していたし、結構疲れていたからな。
幸い出発前に購入した食料がまだ死ぬほど『無限収納』に入っているから夜ご飯にも困らない。
「ファナさん、宝玉とやらが高額だそうなので集めてみませんか?」
「お、マコトは討伐依頼は好きじゃないと思っていたが気が変わったか? もちろん私は強いモンスターをいっぱい倒したいし、ついでに冒険もしやすそうだし、全然かまわないが」
「別に好きじゃないわけじゃないんですけど、俺って弱いからついて行っても基本足手纏いでしかないのかなと思って遠慮してたんです。でも、今回ので遠征するなら足に荷物に、と戦闘じゃないところでならお役に立てるかなと思って」
「足手まといだなんて思わなかったぞ。後方支援は完璧じゃないか。地上相手の敵なら絶対攻撃されないし。それに防衛拠点も、料理も助かった。……まあそういうことなら納得だ。これからはたまに遠征依頼を受けて、一緒に討伐もしていくか」
ファナさんがこれでもかと褒めた上に頭を撫でてくれる。
子ども扱いされているような気がしないでもないが、美人に頭を撫でられて嬉しくないはずがない。
「儲かったらいろいろ買えますね。ファナさんはお目当てのものとかありますか?」
「ガッポガポ稼いだら、つよい武器を買うんだ!」
一気にテンション爆上げになったファナさんに苦笑する。
こう見えて、というか、まんまなんだけどファナさんは基本戦うのが大好きだし、冒険も大好きなので、武器マニア気味なのだ。
これまでは持っていられないからと自分の使う武器一本だけを厳選して、前に使っていたものは下取りに出していたらしいのだが、俺と一緒ならいくつも武器が保有できると気が付いてからはめちゃくちゃ武器を集めている。
俺もいろいろコレクションしていた時期があったから、気持ちはわかる。
『無限収納』に保管していれば場所を取らないし、金は自分で稼いでいて余裕があるし、いい趣味だと思う。何よりファナさんが楽しそうなのがいい。
「じゃあ、俺は美味しいごはんと、高級ベッドと、オーダーメイド枕とか買おうかな……」
金を稼いでほしいものを買う想像をする。
それだけでモチベーションはめちゃくちゃ上がる。
「帰ってきたばっかだけど、さっそく明日から出るか?」
「いいですね」
ファナさんと目が合うとそんな提案をされ、すぐに承諾した。
◆
朝。ご飯を食べて、サクサクと冒険者ギルドへ向かう。
冒険者ギルドのやたら重い木製の扉はファナさんが開けてくれて、俺をエスコートしてくれる。イケメンぷりが上がっている気がする。
扉を通る瞬間にそれを押さえているファナさんと至近距離で目があって、ニコリと微笑まれるとときめいてしまう。ヤダ、イケメン……。
ギルドの中に入るとさっそく受付のお兄さんと目が合う。もうすでにお姉さんの方に行くのは諦めているので、スムーズな足運びでお兄さんのもとに向かう。
「おはようございます」
「おはよう。達成してから昨日の今日で、どうしたの? 珍しいじゃない」
まさか仕事しにきたら珍しいと言われる日が来るとは思っていなかったな。
それでいて責められないなんて、なんて素晴らしいのだろう。むしろ褒められているのでは?
まあ、受付のお兄さんの驚きもわからないでもない。俺たちのような旅の方法でなかったら、移動するのも大変だし、遠征依頼から帰ってきたらもうクタクタだろう。そんな状態の奴らが翌日もギルドにきてクエストを受けようとしたらびっくりする。どれだけ金欠なんだって。
それに、俺はあんまり頻繁に依頼を受けて来なかったし。
採取依頼だけで結構な金額が稼げるし、そこまで切羽詰まって働かなくてもよかったのだ。働かなくていいなら、そりゃ働かないよね。
とは言え、異世界には小説や漫画や映画など娯楽は少なかったので、暇になって何かやってみようかなという気分になるのだけど。だから、たまに何気なくギルドに来たときは『お、おもしろそう』と思ったクエストを受けてみたりする。
だから、お兄さん曰く俺のクエスト歴は相当変わり種ばかりなのだという。
たまに受けるクエスト以外の時間は趣味の時間だ。『防衛拠点』に街をつくってみて思ったのだが、俺はものづくりが好きらしい。ファナさんのお弁当を作ったり、ご飯をつくったりも楽しいし、ファナさんが「おいしい、おいしい」と食べてくれるのも嬉しい。
あとはアクセサリーや家具なんかもつくってみたりしている。
一番何が楽しいかと聞かれると、家づくり――いや、街づくりなんだけど。
「まあ、そんなに疲れていないからな。結構マコトも楽しかったらしいから、引き続き受けてみようかと」
「遠征依頼を楽しいって相当なドMなのかとか思っちゃうけど、そうじゃないだろうし……君たちならそうなんだろうねぇ……じゃ、今日も遠征依頼?」
そんなことをつらつらと考えているうちにお兄さんとファナさんが会話を進めていた。
「うん。まあ遠征依頼かつ討伐依頼だな」
「それじゃこのへんのクエストがオススメだよぉ」
そういうとお兄さんがクエスト一覧を手渡してきた。
それを受け取ってギルドに設置されているカフェスペース的なところでファナさんと一緒に見比べる。
「このへんはどうだ? マッドゾンビの討伐依頼。ちょっと草原を抜けた先の、街の近くにある廃墟になるから遠いんだが」
「街っていうのはこの街じゃないんですね」
「ああ、隣街のラスタムズという街の近くにあるな。ただ、ゾンビだからめちゃくちゃ臭いんだ。採取できる部位もないし、人気がない。ただ、時々狩っとかないと数が多くなりすぎて危険だから街から出されてる依頼だ。私たちなら数を狩れるし、あいつら無限に湧くから効率がいいと思うのだが。宝玉は取れるし」
「でも、くさいんですよね……?」
「ああ。とても、くさい」
ゾンビって、きっと俺の想像するゾンビの通りなんだろうな。
それって肉が腐った臭いってことだよね。
しかも、廃墟にゾンビが溢れてくるって……それなんてホラーゲーム?
ちょっと光景を想像して、げんなりした。しかも大量に狩ったゾンビはどうするんだ。俺の『無限収納』に収めておいて、ギルドの解体場で宝玉を取り出すのか。地獄絵図すぎやしないか。解体する職員さんが可哀想だよ。しかも腐った肉が大量に町中にあるとか、新たなパンデミックが始まりそうで怖い。
「ファナさん。ごめんなさい、くさいのはちょっと……」
乗り気のファナさんには申しわけないが、お断りすることにした。
効率よく大量に虐殺できるくらいの強さなら、隣街の冒険者たちが働いてくれるだろう。
「そうか……まあ、マコトはそうだよな、臭いのとかだめだよな、そりゃ」
目に見えてしょんぼりしてしまったファナさん。
ああ、ごめんなさい、でもそこはちょっと譲れないんです。
ただ、罪悪感が胸に刺さって、俺は慌てて目についたクエストを手に取った。
「アルノルディイの花弁採取とかどうですか? 辺境の森を進んだところにあるみたいです。花弁なら、お花だろうし、くさくないでしょう……」
「くさいぞ」
「えっ? お花なのにですか?」
首を傾げると、アルノルディイという花の特徴をファナさんが説明してくれた。
お花と言えども、植物に寄生するモンスターらしく、全長は約1メートルほどあるらしい。そして、腐った肉のような不気味な大きな花弁が5つついており、真ん中のところからは腐った肉と『うんこ』を混ぜたような強烈な悪臭を放っているのだという。
それって、ラフレシア的なやつじゃないですかやだー。
「やめときましょう……」
「臭くなくて、汚らしくないものにしようか。森なら慣れているし、これならどうだろう」
気を取り直して、ファナさんが見せてくれたクエストを読む。
ふんふん、トレントか。直径2~3メートルにも及ぶ巨木に手足が生え、動き回るモンスター、とね。
元の世界で想像する『トレント』とほぼ変わりがなさそうだ。
で、あれば、木だし臭いということもないだろう。
「いいですね。これにしましょう!」
そういうわけで俺たちはトレントを狩る依頼を受けて、その日のうちに街を出ることにした。食料品は前の購入品がたくさん残っているから問題ない。
門番さんのハグを華麗に避け、街の外に出た俺たちはてくてくと森に向かって歩き出した。
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