異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍

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第1章 家をつくろうと思っていたら街ができてい

33.準備期間

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 俺の告白にファナさんは顔を真っ赤にした。

「そんな……マコトが、私を好き、なんて……!」

 信じられない、という表情で両手で頬を覆っているファナさん。

「俺だって、結構必死でアピールしてきたつもりだったのですが、気が付いてもらえていなかったのですね……」

 普通、好きじゃなかったら一緒に住んでいても世話を焼かないと思う。お弁当をつくったり、プレゼントを贈ったり、頻繁に容姿を褒めたりしないと思う。
 俺はこの世界に来て、はじめてファナさんに出会った時から、ファナさんに惚れていた。

「その、マコトは優しいから、誰にでもそうなのかと、思っていた……」

 そんなに優しくありません。
 でも好きな人に優しいと思われているのは嬉しいので、俺は黙っておいた。
 まあ、俺も大概同じだと思ったのもあるが。ファナさんが優しいから、一緒に暮らしてパーティーを組んで、俺の面倒を見てくれているのかと思っていた。一緒に暮らす日々では、警戒心なさすぎて心配するほどだったが、もしかして意図してやっていたのだろうか。
 あんなラッキースケベや、こんなラッキースケベは。
 ――なんで俺気が付かなかったんだ! さっさと気付けよ!
 惜しすぎることをしでかした過去に沈む。

「俺の方こそ、弱っちいし、あまり頼りにならないし、ファナさんには弟の面倒を見るような目で見られていると思っていました」

 ファナさんだけが内心を吐露しているというのもフェアじゃないと思うので、俺もそう漏らしておく。
 すると、ファナさんが若干気まずそうに目を逸らした。

「確かに。はじめはそう思っていたな。――私は、がさつだし、守ってやりたくなるような可愛さはないし、おしとやかじゃないし、家事もできないし、男より力が強い……これまでモテたことはなかったし、女らしくないと馬鹿にされてきた……」

 本当、この世界の男たちは分かっていないな。でも、きっと地球でも一昔前はそんな亭主関白的な価値観だったというし、それがこの世界でのスタンダードなのかもしれない。
 だがそれは男たちの見る目がないだけだ、とファナさんに言おうとしたところ、ファナさんは続けた。

「でも、私は冒険をすることも好きだったし、別に金を出せば家事はしてもらえるし、テメエらより稼いでるのに、なんでテメエらの面倒を見なきゃいけねえんだ、と内心馬鹿にしていた……」

 さすファナ。
 メンタル強い。

「そんな中、マコトは『女らしく』とか『男らしく』とかいうことを言わなかった。ただ、私という人間を見て、モンスターから助けられれば『ありがとう』と素直に言って、私を優しいと言って、それどころか家事が得意だからと自らそれをおこなってくれる。変わった奴だと思った。でも、同時に、多分私を女として意識していないんだな、と思ってしまった。これまであんなに『女らしくない』とか言われてたときは、『女』ってなんだよって思ってたのに」

 ファナさんは息を吸って、俺を見た。

「でも、お前は時折思い出したかのように、私を見て『美しい』と褒めそやす」

 ――それは沸き上がるパッションにこらえきれなくなって、内なる心が口から漏れ出てしまった時だな。

「それで意識しないというのは、難しいだろう」

 そう言って顔を真っ赤にするファナさんは、普段の勝気な様子と相まって最高に――

「可愛い」

 思わず内心が口から漏れたが、ファナさんにバシッと背中を叩かれた。

「~~~ッ! だから! そういうところだぞ! お前!」

 真っ赤な顔でそんなこと言われても可愛いだけだなぁ。俺はニヨニヨしながら、黙っておいた。これ以上、照れたファナさんにすごい勢いで叩かれたら死んでしまうかもしれないからな。





 結局あの後、俺はまた内心を漏らしてしまった。照れたファナさんの暴走により、モンスターたちが瞬く間に倒されていった。
 荒ぶるファナさんにその身を捧げて鎮めた、哀れな供物モンスターたちが俺の『無限収納』に収められていく。

「一瞬でものすごい量が集まりましたね……」

 イノシシっぽいモンスターとか、結構食べられるモンスターは多くいるので肉類の食品はもういいだろうというくらいに集まった。

「で、落ち着きましたか? ファナさん」
「……ああ、なんとか」

 まだ顔が赤い気がするが、それは運動したからだそう。
 うん。
 そういうことにしておこう。

 そんなわけでその後は、俺の念動力と無限収納による果物採取無双の時間となった。採取しているうちにモンスターとエンカウントすることもあるので、そのときは漏れなくファナさんの大剣によって調理され食糧として仲良く『無限収納』に入れられていった。

 日暮れまで採取を続けると、もう数え切れないくらいの食料調達ができた。
 街に帰るついでに周りの岩や土や、木も収納していく。何かの役に立つのではないかなと思って。

 街にたどり着く頃には周囲は薄暗くなっていた。
 いつも夕前には帰ってきていたので、なんだか新鮮な気持ちだ。前世では考えられない生活である。
 薄暗い中、街の中心部に向かい教会の納屋に日持ちする食料品を入れていく。モンスターの肉類や、穀物っぽい植物類だ。その他は『無限収納』にしまっておく。モンスターの肉はなぜか日持ちするのだ。
 俺の『無限収納』にしまっておけば問題ないように思われるが、いつも俺が定位置にいられるとは限らないし、俺自体死んでしまったら中に入っているものがどうなるか分からないので、外に出しておくことに意味があるのだ。皆が扱えるようになるからな。

 遅くなってしまったが、その足で冒険者ギルドに向かう。
 神父様からもたらされた予言をもとに村長が一部の人に情報を展開し、着々と準備が進められているはずだが。その中にはギルドマスターである、ルーレスさんもいたようだ。

「あは、やっぱり君たち協力することにしたんだねえ」

 冒険者ギルドに着くなり、受付でそう話しかけられたからだ。



 ルーレスさんに連れられて、ギルド奥にある『大会議室』に向かう。
 そこで避難準備を行っているようだ。避難を確実に行うため、明日からは段階的に市民にも情報を展開していくが、今は信頼のおける冒険者に依頼を出して食料品や武器等の物資をかき集めたり、村の役人も含めて作戦を立てているところだという。

「ルーレスさんがギルドマスターだったとは、知らなかったです。だって、まさかマスターが受付にいるなんて。それも毎日のように」
「ふふ、実情を見るためにたまに受付には立ってたんだけどねぇ。君たちが来てからは君たちの気配を感じた瞬間に受付に立つようにしていたんだよ」
「な、なんで」
「だって、面白いじゃない」

 ふふふ、と笑うルーレスさんはいつも通りのテンションだった。
 こんな緊急事態だっていうのに少しも驚いた様子や焦った感じがないのは、さすが組織を束ねる長という感じだな。
 しかし、俺たちが『朔の日』対策に協力するって知っているとは、神父様か村長から聞いたのだろうか。
 そう疑問に思ったのが顔に出てしまったらしい。

「どうしたの?」
「いえ……ルーレスさんにまで村長からお話が通っているのかなと思って。この大変な中、人員の管理までしないといけないなんて、大変ですね」

 それに、村からギルドのにまで話が伝わっていると思ったら、俺たちが下っ端の使いッ走りじゃなくて、補給部隊として大きな役割を期待されているんじゃないかなとか、ちょっと緊張してみたり。

「いや、あれだけ深刻な顔でアプルルの依頼をされたら、街の一大事だってすぐわかるよね。それで、その後すぐに血相変えたアラン爺さん村長が飛び込んでくるんだもん。ああ、こりゃ、優しい君たちも漏れなく巻き込まれるなと思ったわけ」

 確かに、関連が疑われて当然か……。
 バレたくなかった割に、クレト様迂闊? と思ったが、それだけ焦っていたのだろう。村長のあの反応を見るに、落ち着いた様子のルーレスさんの方が変わっているのかもしれない。

 と、大会議室の前に到着。ルーレスさんが躊躇なく扉を開いた。

「西の洞窟が適任だろう! あそこは奥に進めば大きな開けた空間がある」
「冒険者の尺度でものを考えてはいけない。あそこは一般人が徒歩で移動するには遠すぎる距離だ」

 そこでは喧々囂々と会議が行われていた。
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