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第1章 家をつくろうと思っていたら街ができてい
37.決戦
しおりを挟む地平線の向こうに沈みゆく太陽。こんな日だというのに、夕焼けは今日も綺麗だ。
月は空に浮かんではこなかった。太陽が沈み切った後、名残のような夕焼けが消えてどんどん暗闇に染まっていく平原。
そうしてシンと静まった平原が真っ暗闇になったとき。
「湧いた……」
俺は呆然と呟いた。
暗闇に一瞬、蛍のようなチリチリとした、紫色の光が発生したと思ったら、その場所からスケルトンが現れた。それを皮切りにいたるところでモンスターが湧き始めた。
スケルトンやゾンビらしき影など、アンデッドモンスターが多いが、ジャイアントスパイダーやアントなど虫系のモンスターも多い。
平原がモンスターで埋め尽くされていく。
俺たちは、俺たちのつくった防壁の上で、平原の様子を静かに見守っていた。いつもはあんなに騒がしい冒険者たちも黙りこくっている。
そうして、モンスターの発生がようやく収まったとき。
「攻撃開始です!」
クレト様の声が街に響いた。冒険者たちの雄たけびが呼応する。
怒号とともに、地上に降り立つ冒険者たちが駆け出した。近距離武器で戦う冒険者たちだ。
その中にはファナさんの姿もあった。街の周りにたかれたたいまつのあかりで、ファナさんのひときわ目立つ大剣がきらめいてみえる。
俺はというと、後方支援部隊の為、狭間に待機している。他の遠距離武器の冒険者たちが、開かれた狭間から矢や投石で攻撃しはじめた。
俺も無限収納からいくつか取り出した大岩を念動力を使ってえっちらほっちらゆっくりと上空を動かしていき、モンスターの大群の上に設置する。
そして、念動力をそこでオフにしてしまえば後は自由落下だ。
大雑把で命中率の低い方法だが、これだけ群れてくれればどこに落ちようが問題なく当たる。
くれぐれも前線で戦う冒険者たちには当てないように、冒険者たちの戦線よりも後ろの方に設置していく。
なので俺の守備位置は遠距離部隊の中でも更に遠距離を狙う、超遠距離位置になる。
しかし念動力を使っている間、全力で動かしたところでそんなに早く動いてくれないので俺は周囲を見る余裕がある。そうして視線が向かってしまうのは、やはりファナさんの方だった。
一般的な冒険者たちは一撃を入れると、その隙を他の仲間がカバーするというような、長篠の三段撃ちのごとき戦い方をしていたが、ファナさんはモンスターを斬った勢いを利用してまるで舞でも踊っているような流麗な動きで次のモンスターを斬った。流れるような動きに思わず見惚れていると、隣でバリスタを撃つ男に話しかけられた。
「ファナは相変わらずすげえな。女とは思えねえわ」
聞こえてきた無礼な言葉に思わず視線を向ける。
「いや、お前、アレ見せられたら女として見られないっていうか、萎えちまうっていうか」
睨むような俺の視線に怯んだのか、言い訳がましくそんなことを言うが。
「恐ろしくならねえか?」
なるわけねえだろうが。
俺は岩を落としながら、ファナさんの方に向かってきていた巨大な四足歩行の竜っぽいモンスターの足元の土を若干持ち上げた。
「美しいですよ! 何言ってるんですか!? 意味がわからないです!」
ファナさんは見た目だけじゃなく、動きや中身、すべてが美しい。
俺の動かした土によりコケた竜っぽいモンスターがちょうどファナさんの前に首を差し出す形になる。
その首が下から捻りあげるように回転しながら、ファナさんの大剣によりスルリと落とされた。
「……かっこいい」
かっこよしゅぎませんか、ファナ様。
「剣舞みてえですげえけどなぁ」などと未だに何か言ってるバリスタ男の音を聞き流しつつ、俺はファナさんの鑑賞とモンスターの殲滅に専念していた。
そうしてファナさんにすっかり見惚れているうちに、一つ二つとモンスターはその数を減らしていきついには最後の一匹が倒され光となって消えた。
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