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第2章 宝玉を追いかけていたら世界を救っていた
51.封印の扉のなか
しおりを挟むやらかした
これは完全に
やらかした
動揺のあまり思わず心の一句を詠む。
扉の中に吸い込まれ、悲鳴を上げた次の瞬間には真っ暗闇な空間にいた。ハッと気が付いてあたりを見回すと、ファナさん、クレト様、そしてアイレさんもこの空間にやってきてしまったようだった。暗闇の中でもみんなの身体が薄ぼんやりと光って見える。不思議な空間だ。
「ごめんなさい、俺が不用意に宝玉を持っていたから……」
「いや、私たちも楽しくなってイケイケでやっていたから、きっとマコトがやらなくても誰かがやっていた」
「そうですよ。私も入口で止めなかった時点で同罪です」
「わ、私も斥侯として罠に気が付けなかったです!」
反射的に謝ると、すぐにみんなが許したうえで慰めてくれる。
本当、俺にはできすぎた人たちがパーティーメンバーになってくれてるよ。
しかも落ち込む俺の頭をファナさんが撫でてくれるもんだから、ついつい和む。あー、ファナさん素敵。
って、和んでいる場合じゃないよね。
ここがどこかもわからないし、このまま帰れないようじゃいくら俺の『無限収納』にたくさん食糧を収めていると言っても、いつかは餓死してしまう。
「あれは……!」
アイレさんの声でハッと声を上げる。アイレさんの方を見ると、真っ暗闇の先に視線を向けて厳しい表情をしていた。
「どうされましたか」
俺たちの目には現状暗闇しか見えていないので、クレト様が首をひねるみんなを代表して訪ねてくれる。
「あそこに、黒い、大きな竜が羽ばたいています……!」
息を呑む。
「まさか、ここは……」
クレト様が震える声を絞り出した。
次第に、暗闇の中に薄っすらとシルエットが見えてくる。
それは、巨大な、巨大な竜であった。
「--古代文明では、宝玉が燃料としておおいに活躍していたそうです。しかし、文明が発達するにつれ、自然発生したモンスターを倒すだけでは宝玉の供給が追い付かず、ついに時の王は禁忌に手を伸ばしたそうです。召喚術という禁忌に」
竜の羽ばたきが聞こえる。クレト様が息を吸った。
「そして、呼び出してはならないモノを呼んでしまった」
異世界の情勢に疎い俺でも聞いたことがある。『恐ろしい悪意』が異空間に封印されていて、そこから漏れ出した悪意が世界に多くのモンスターを生んでいるのだと。
「ギュアアアアアア!!!」
竜の咆哮が全身を震わせた。
「ヨクキタ、人間。我ノ封印ガ弱マルノヲ感ジテカ来タカ!」
「シャベッタァアア!!」
思わず反射的に小声で叫ぶ。しゃべるモンスターに初めて出会ったのだ。
しかし驚いたのは俺だけではなかったらしく、みんな同様に動揺している。
「我ノ一部ヲ世ニバラ撒キ『朔』ノ間隔ハ狭マッテイタ。次ノ朔デ世ニ戻レルト、ソウ楽シミニシテイタガ……面白イ。マタ、我ヲ封印シヨウトハ」
マジかよ。事故でここに来ちゃっただけなんだけど。
なんか、完全に勇者を迎える魔王ポジションで、竜が盛り上がっちゃってる……。
でも、結果的に世界を守れる確率が上がったってことで前向きに考えるしかないよね。--封印するしかない流れですね、これ。
「ここのところ、やたらとモンスターが増えていたのはそういうことでしたか……」
クレト様が小さく呟く。なるほど。
「殺るか」
ファナさんが笑顔で言った。
俺たちは頷いた。こうして、俺たちの世界を救う聖戦は唐突に始まったのであった。
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