異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍

文字の大きさ
51 / 55
第2章 宝玉を追いかけていたら世界を救っていた

51.封印の扉のなか

しおりを挟む

 やらかした
 これは完全に
 やらかした

 動揺のあまり思わず心の一句を詠む。
 扉の中に吸い込まれ、悲鳴を上げた次の瞬間には真っ暗闇な空間にいた。ハッと気が付いてあたりを見回すと、ファナさん、クレト様、そしてアイレさんもこの空間にやってきてしまったようだった。暗闇の中でもみんなの身体が薄ぼんやりと光って見える。不思議な空間だ。

「ごめんなさい、俺が不用意に宝玉を持っていたから……」
「いや、私たちも楽しくなってイケイケでやっていたから、きっとマコトがやらなくても誰かがやっていた」
「そうですよ。私も入口で止めなかった時点で同罪です」
「わ、私も斥侯として罠に気が付けなかったです!」

 反射的に謝ると、すぐにみんなが許したうえで慰めてくれる。
 本当、俺にはできすぎた人たちがパーティーメンバーになってくれてるよ。
 しかも落ち込む俺の頭をファナさんが撫でてくれるもんだから、ついつい和む。あー、ファナさん素敵。

 って、和んでいる場合じゃないよね。
 ここがどこかもわからないし、このまま帰れないようじゃいくら俺の『無限収納』にたくさん食糧を収めていると言っても、いつかは餓死してしまう。

「あれは……!」

 アイレさんの声でハッと声を上げる。アイレさんの方を見ると、真っ暗闇の先に視線を向けて厳しい表情をしていた。

「どうされましたか」

 俺たちの目には現状暗闇しか見えていないので、クレト様が首をひねるみんなを代表して訪ねてくれる。

「あそこに、黒い、大きな竜が羽ばたいています……!」

 息を呑む。

「まさか、ここは……」

 クレト様が震える声を絞り出した。
 次第に、暗闇の中に薄っすらとシルエットが見えてくる。
 それは、巨大な、巨大な竜であった。

「--古代文明では、宝玉が燃料としておおいに活躍していたそうです。しかし、文明が発達するにつれ、自然発生したモンスターを倒すだけでは宝玉の供給が追い付かず、ついに時の王は禁忌に手を伸ばしたそうです。召喚術という禁忌に」

 竜の羽ばたきが聞こえる。クレト様が息を吸った。

「そして、呼び出してはならないモノを呼んでしまった」

 異世界の情勢に疎い俺でも聞いたことがある。『恐ろしい悪意』が異空間に封印されていて、そこから漏れ出した悪意が世界に多くのモンスターを生んでいるのだと。

「ギュアアアアアア!!!」

 竜の咆哮が全身を震わせた。

「ヨクキタ、人間。我ノ封印ガ弱マルノヲ感ジテカ来タカ!」
「シャベッタァアア!!」

 思わず反射的に小声で叫ぶ。しゃべるモンスターに初めて出会ったのだ。
 しかし驚いたのは俺だけではなかったらしく、みんな同様に動揺している。

「我ノ一部ヲ世ニバラ撒キ『朔』ノ間隔ハ狭マッテイタ。次ノ朔デ世ニ戻レルト、ソウ楽シミニシテイタガ……面白イ。マタ、我ヲ封印シヨウトハ」

 マジかよ。事故でここに来ちゃっただけなんだけど。
 なんか、完全に勇者を迎える魔王ポジションで、竜が盛り上がっちゃってる……。
 でも、結果的に世界を守れる確率が上がったってことで前向きに考えるしかないよね。--封印するしかない流れですね、これ。

「ここのところ、やたらとモンスターが増えていたのはそういうことでしたか……」

 クレト様が小さく呟く。なるほど。

るか」

 ファナさんが笑顔で言った。
 俺たちは頷いた。こうして、俺たちの世界を救う聖戦は唐突に始まったのであった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

処理中です...