52 / 55
第2章 宝玉を追いかけていたら世界を救っていた
52.それぞれの戦い方
しおりを挟む竜と戦うことを決心した俺たちは、まず空を飛び回る竜を俺たちと同じ土俵にのせることにした。
「俺が地面を引き延ばして、天井をつくるのでファナさん、クレト様は防御をお願いします」
「了解!」
「承りました」
ファナさんが背中に背負った大剣を引き抜いて不敵に笑った。しゅてき。
クレト様も両手を目の前で組んだかと思うと、祈りのポーズになって発光しだした。神かな?
「『サンクチュアリ』!」
そして、クレト様がそう叫ぶと俺たちの周囲に半円状の結界が張られた。結界は薄っすらと黄金色に輝いている。
俺はそのようすを傍目に見ながら、地面の石をぐいぐいと念動力で伸ばしていいった。幸いにもこの地面の材料である石に魔力が含まれているだとか、非破壊属性だとかそういったことはなく、通常の石と同様に動かすことができる。
「この結界は、物理的な攻撃は防げませんからファナさん、そこは任せました」
「おう、任された!」
クレト様とファナさんが熱いバトル漫画みたいな会話をしている。
かっこいい。俺もナチュラルにそんな発言をしてみたい。
「あの、あの、私は罠を張って戦うくらいしかできないですが、……ごめんなさい、今日は大規模な罠を持ってきていないのでただの足手纏いですー……」
アイレさんはというと申しわけなさそうに俺たちの間をうろうろしている。
いや、ここにたどり着くまで十二分に活躍していたし、その間俺たち3人が完全なる足手纏いだったわけだからそんなに気にしなくていいのに。
でも、罠……というと……。
「罠って、爆弾石とかでもいいですか?」
「はい! もちろん。……ッハ!もしかして、お持ちですか!?」
「うん、念動力で魔物の群れに落とすように購入していた爆弾石があります」
石で天井をつくりながら、『無限収納』から爆弾石を渡す。
爆発の魔法を使える職人が作った爆弾石だ。衝撃を与えれば爆発するので重宝している。ちょっとした衝撃で爆発してしまうので移動時に非常に気を使わなくてはいけないため、通常は鉱山などで使われていて冒険者には向かないらしいのだが、俺には『無限収納』があるので普通に便利アイテムになっている。
街で英雄になったおかげでこういったものも売ってもらえるようになった。
「ありがとうございます! これで何とか戦えますよ!」
アイレさんはそう言って意気込むと姿を消した。
ホントすごい隠密だ。本当にどこにいるかもうわからない。きっとどこかで罠をしかけてきているのだろう。
と、準備をしている間にも遠くにいた巨大な竜がこちらに迫ってきていた。
「ギュアアアアアア!」
竜が雄たけびを上げながらこちらに突っ込んできて、俺たちの頭上を通り過ぎながらブレスを浴びせてきた。
キンという澄んだ音がして、そのブレスをクレト様の結界が防ぐ。
さっすが!
ちょっとびびった俺だったが、この結界があるなら!
気を取り直して竜を覆うように、外側から天井の範囲を徐々に狭めていく。あまり薄い壁にするときっと体当たりですぐに割れて意味がないから、厚めに、厚めに。
ブレスが効かないと分かった竜は旋回したかと思うと、急降下して俺たちのもとへ体当たりをかまそうとしてきた。
しかし、そこに割り込んだのはファナさんだ。
大剣でうまく竜の身体の軌道をそらしたかと思うと、ついでとばかりに竜の横っ腹を掻っ切った。深い傷はつけられなかったが、竜は悲鳴を上げる。
竜は俺たちから逸れていったかと思うと、一旦体制を整えようとしたのか近くに見える石でできたちょっとした高台に着地しようとして――爆発した。
「やった、うまく当たりましたね!」
いつの間にか戻ってきたアイレさんがガッツポーズをとっている。いつ戻ってきてた!? 驚きすぎて思わず悲鳴を上げそうになった。
それにしても見事である。きっとすべての高台に仕掛けているわけではないだろうが、竜は疑心暗鬼になって高台に着地することができないだろう。
それからは消耗戦であった。
ブレスを防御できるとはいえ、それはクレト様の魔力を消費してのことだし、ファナさんだって防御をするたびに体力を削られる。俺も天井を作りきるには時間がかかり集中が途切れそうになる。
体力を回復させるポーションや魔力を回復させるポーションをがぶがぶ飲んで対抗する。
「――なんか、あいつ回復してないか?」
数十分後。ファナさんが訝しげにつぶやいた。
俺もそう思っていたところだ。最初は体力がものすごいタイプのモンスターなのかなと思ったが、よく見ると最初の方にファナさんが大剣でつけた脇腹の傷が薄くなってきている。
「してますね。どうしましょう、『無限収納』があるからある程度は対抗できますがこのままだと本当に我慢比べになりますよね」
「聖書の一句にもあります。――かの悪魔は悪意を集めてついぞ倒れることはなかった、故にこことは異なる空間に奴を封じた、と」
「悪意、ですか」
「ええ、世の中に満ち溢れる『悪意』を凝縮させた存在があの竜――悪魔なのだという話らしいです」
「じゃあ、人が生きてる限りなくならないってことか」
ちょっと絶望的な空気が流れる。
大昔の聖者でも倒せなくて封印した相手だもんね。そんなん倒せるのだろうか。
竜は己の体質をわかっているのか、こちらに効かないとわかっていても体当たりとブレスをやめなかった。つまり、消耗戦でこちらを殺してやろうということなのだろう。
さすが悪意を集めた存在と言われるだけある。人の嫌なところをついてきやがる。
――ん? でも、悪意を集めた存在ってことは?
「それって、あの竜はモンスターじゃないってことですか?」
「え? ええ、一説によると悪魔の悪意により効率的に魔力が凝縮され『動物』に取り付いたものが今モンスターといわれているものらしいです。昔は普通の『動物』というものとモンスターが共存していたようですが」
「つまり、あの竜は魔力で構成されていない……?」
俺はごくりと息を呑んだ。
それってさぁ……。
体当たりをかまそうとまた近づいてきた竜を見ながら、俺はファナさんを見た。
「ファナさん、俺を奴の近くに吹っ飛ばしてください」
「了解!」
ファナさんは俺の意図をすぐさま理解してくれた。俺を担ぐと軽やかに竜の体当たりをよける。
ファナさんに担がれた俺はそのまま勢いよく竜の背に向かって投げられた。
「『無限収納』!」
竜の近くに来られた俺は気合を入れて思わず叫ぶ。
竜の姿は、消えた。
32
あなたにおすすめの小説
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる