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収入
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今川家には年貢以外にも多くの収入がある。
その第一が交易。浜で採れた塩に海産物の干物といった食料を堺や近隣に売る。この時代は基本どこも軽い食糧難。なので食料はいつだって高く売れる。特に今川家では駿遠の長大な海岸線を使い塩と干物を作っているので、その量も膨大。
樽に漬けた塩漬け魚に天日でよく干した干物。烏賊や海鼠の干物もよく売れる。ただし鮑を細切りにし打ち延ばしてから干した打ち鮑だけは、売らずに保存している。
なぜならこの打ちアワビは出陣式には必須のアイテム。一に打ち鮑、二に勝ち栗、三に昆布。この三種で、打ち勝ち喜ぶといった戦勝祈願になるから。
昆布といえば蝦夷であるが、戦国時代は寒いので本州だって採れなくはない。それに基本干してから流通させるので、余程舌に自信のある者でなければ産地の違いなどは分からぬだろう。
ともかく、この打ち鮑や昆布を戰をする親類に贈ると、とても応援している雰囲気を醸せるのだ。
『さぁ、みな遠慮なく食すがよい。これは今川から贈られてきた打ち鮑よ』
なんて紹介されれば『わぁ。今川も我らが勝つこと応援してくれているんだぁ』と、同盟国内での今川家の多大なイメージアップに繋がる。
またそれだけに留まらず、その際には烏賊の干物、スルメも大量に贈る。そうしたスルメは数多くいる兵士たちに士気高揚の為、配られるであろう。ここはまぁ、今川家の名が出るかは微妙ではある。が、こぼれ話にでも兵士たち間に広まってくれれば、『今川家って気前良くて優しい家なんだなぁ』という淡いイメージアップに繋がる。
そうなれば万が一にも対立した際には、その矛先も鈍るであろうという深慮遠謀の策。
ま、贈る際には直接軍事物資たり得る米―兵糧は絞って、戦禍の拡大も抑える所存。今川義元は策士なのである。
第二には、戰蹴鞠の興行。これは今まで礼儀作法や歌の指導程度で飯を食っていた公家たちへのいい刺激となった。
彼らも元は京に居た公家たち。それがなぜ駿府に居るかというと、母である寿桂尼が父・今川氏親に嫁いできたから。母の父は中御門 宣胤。その官位は従一位の権大納言。この従一位の上は位が正一位しかないくらい、めちゃくちゃ偉いのである。
そんな偉い方のお姫様が嫁いでいくなら、お供もちゃんといないといけないよね。って、ついてきた公家たちと、その後に送られてきた便りで駿府良いとこ一度はおいで、的な話を聞き公家たちが母を頼って京から逃げて来ちゃったのだ。まぁそれだけ京の都も荒んでいたという事なのだろうけども、食わせる方は大変である。
しかしそれが、戰蹴鞠の興行で風向きが変わった。
腐っても公家だからと今まで権高く民たちとの接触を避けてきた者達。だが称賛を浴びることで民たちと積極的に触れあうように変わったのだ。無論、賭け事な面もあるので、負けると当然罵声も浴びるのだが。
ともあれそうして揉まれるうちに、公家たちも自分達の生き方を見つけられた様子。
戰蹴鞠の監督として名を馳せる者もあれば、賭けの倍率計算に長け興行の運営側に加わっていく者。そのどちらも出来なければ、相変わらず歌や礼儀作法の指導で細々と食い繋ぐ他ない。
それでも胴元は必ず儲かる仕組みになっているので、今川家はガッポガッポなのである。
第三は第二と被るが、天女隊の興行。こちらも利益にはなっているものの、寺社と人心の慰撫といった要素が大きい。すでに二代目三代目とか、別の名の天女隊が設立されていたりもするらしいが、義元ももう書面でしかその内容を知らない。
ともあれどこかの寺社が勝手に真似しようとした場合には厳しく追及妨害するそうなので、これも領内においては独占産業。お守りとか香りつき扇子といったグッズがよく売れているらしい。
第四は金山。これは金山というか安倍川流域で採れる砂金なのだが、父の頃よりこの地域を今川の直轄地として運営している。そのため採掘方法も川砂を洗って金粒を選別するという原始的な手法。
それ故に、ここには何も手を加えていない。
勝手に流れて来るとはいえ取り過ぎればすぐに尽きてしまうし、下流でも頑張れば少しくらいは砂金を採れる。これが駿府の町ちかくに住む川原者たちのセイフティーネットになっているらしいのだ。
つまり悪事に走らずとも、川に浸かる冷たい思いさえ我慢すればなんとか暮らせる程度の砂金は手に入る。なので川原者たちを仕切って利益を出そうなどと考えるヤクザ者は直ちにしょっぴくが、職のない者たちが最低限暮らせる程度に川で砂金を採るくらいならばと、黙認している。今川義元は慈悲深いのである。
そんな訳で戦国の世でありつつも、駿遠はそれなりの好景気を享受できているのであった。
その第一が交易。浜で採れた塩に海産物の干物といった食料を堺や近隣に売る。この時代は基本どこも軽い食糧難。なので食料はいつだって高く売れる。特に今川家では駿遠の長大な海岸線を使い塩と干物を作っているので、その量も膨大。
樽に漬けた塩漬け魚に天日でよく干した干物。烏賊や海鼠の干物もよく売れる。ただし鮑を細切りにし打ち延ばしてから干した打ち鮑だけは、売らずに保存している。
なぜならこの打ちアワビは出陣式には必須のアイテム。一に打ち鮑、二に勝ち栗、三に昆布。この三種で、打ち勝ち喜ぶといった戦勝祈願になるから。
昆布といえば蝦夷であるが、戦国時代は寒いので本州だって採れなくはない。それに基本干してから流通させるので、余程舌に自信のある者でなければ産地の違いなどは分からぬだろう。
ともかく、この打ち鮑や昆布を戰をする親類に贈ると、とても応援している雰囲気を醸せるのだ。
『さぁ、みな遠慮なく食すがよい。これは今川から贈られてきた打ち鮑よ』
なんて紹介されれば『わぁ。今川も我らが勝つこと応援してくれているんだぁ』と、同盟国内での今川家の多大なイメージアップに繋がる。
またそれだけに留まらず、その際には烏賊の干物、スルメも大量に贈る。そうしたスルメは数多くいる兵士たちに士気高揚の為、配られるであろう。ここはまぁ、今川家の名が出るかは微妙ではある。が、こぼれ話にでも兵士たち間に広まってくれれば、『今川家って気前良くて優しい家なんだなぁ』という淡いイメージアップに繋がる。
そうなれば万が一にも対立した際には、その矛先も鈍るであろうという深慮遠謀の策。
ま、贈る際には直接軍事物資たり得る米―兵糧は絞って、戦禍の拡大も抑える所存。今川義元は策士なのである。
第二には、戰蹴鞠の興行。これは今まで礼儀作法や歌の指導程度で飯を食っていた公家たちへのいい刺激となった。
彼らも元は京に居た公家たち。それがなぜ駿府に居るかというと、母である寿桂尼が父・今川氏親に嫁いできたから。母の父は中御門 宣胤。その官位は従一位の権大納言。この従一位の上は位が正一位しかないくらい、めちゃくちゃ偉いのである。
そんな偉い方のお姫様が嫁いでいくなら、お供もちゃんといないといけないよね。って、ついてきた公家たちと、その後に送られてきた便りで駿府良いとこ一度はおいで、的な話を聞き公家たちが母を頼って京から逃げて来ちゃったのだ。まぁそれだけ京の都も荒んでいたという事なのだろうけども、食わせる方は大変である。
しかしそれが、戰蹴鞠の興行で風向きが変わった。
腐っても公家だからと今まで権高く民たちとの接触を避けてきた者達。だが称賛を浴びることで民たちと積極的に触れあうように変わったのだ。無論、賭け事な面もあるので、負けると当然罵声も浴びるのだが。
ともあれそうして揉まれるうちに、公家たちも自分達の生き方を見つけられた様子。
戰蹴鞠の監督として名を馳せる者もあれば、賭けの倍率計算に長け興行の運営側に加わっていく者。そのどちらも出来なければ、相変わらず歌や礼儀作法の指導で細々と食い繋ぐ他ない。
それでも胴元は必ず儲かる仕組みになっているので、今川家はガッポガッポなのである。
第三は第二と被るが、天女隊の興行。こちらも利益にはなっているものの、寺社と人心の慰撫といった要素が大きい。すでに二代目三代目とか、別の名の天女隊が設立されていたりもするらしいが、義元ももう書面でしかその内容を知らない。
ともあれどこかの寺社が勝手に真似しようとした場合には厳しく追及妨害するそうなので、これも領内においては独占産業。お守りとか香りつき扇子といったグッズがよく売れているらしい。
第四は金山。これは金山というか安倍川流域で採れる砂金なのだが、父の頃よりこの地域を今川の直轄地として運営している。そのため採掘方法も川砂を洗って金粒を選別するという原始的な手法。
それ故に、ここには何も手を加えていない。
勝手に流れて来るとはいえ取り過ぎればすぐに尽きてしまうし、下流でも頑張れば少しくらいは砂金を採れる。これが駿府の町ちかくに住む川原者たちのセイフティーネットになっているらしいのだ。
つまり悪事に走らずとも、川に浸かる冷たい思いさえ我慢すればなんとか暮らせる程度の砂金は手に入る。なので川原者たちを仕切って利益を出そうなどと考えるヤクザ者は直ちにしょっぴくが、職のない者たちが最低限暮らせる程度に川で砂金を採るくらいならばと、黙認している。今川義元は慈悲深いのである。
そんな訳で戦国の世でありつつも、駿遠はそれなりの好景気を享受できているのであった。
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