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スーパー雅タイム
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「ご報告に上がりました」
「うむ、ごくろう。たしかそなたは、尾張を探りに行った者だったな」
夕暮れ時。久しぶりに姿を見せた鳥波に、義元はやさしく声をかけた。いつだって義元は下の者に優しいのである。
「はい、左様にございます」
「よし、では聞こう。なにか有益な情報はあったか?」
「ハッ、さればご報告を。実は、織田弾正忠の嫡男は…」
「うむ」
すると鳥波は、妙なところで間を持たせる。そこで義元も、これはさぞ重要な情報なのかと耳をそばだたせた。
「まだ赤子なれど、乳母の点Pを噛み千切るほど癇の虫が強いようにございます」
しかし聞き終えた途端、力が抜け膝から崩れ落ちそうになってしまった。
(いや、その情報いるッ!?)
「そ、そうか…。ほかには?」
「ハッ、さらに困った守役がほかに乳母を求めましたところ、点Pを噛み千切られるほど強く噛まれても、全く動じぬ女房がいた由にございます!」
それを聞き、またしても義元は膝から崩れ落ちそうになる。
「い、いや、それが一体なんじゃというのじゃ?」
「されば!尾張の女子のなかには鋼の点Pを持つ者も存在するのではと推察いたします!」
それを聞いた義元は『コイツこんな奴だったっけ?』と思いつつも、もしや仕事のし過ぎで疲れているのかもと考え暇を与えることにした。
「…う、うむ。それはご苦労であったの。そなたには褒美と暇を与える故、温泉にでもゆっくり浸かっての。じっくり骨休めをするがよい」
「ハッ、ありがとう存じます!」
「あまり無理せず身体をいとえよ!」
「ハッ、ありがとう存じます!」
そのまま下がっていく鳥波の後姿を見送りながら、少々こき使い過ぎてしまったかもと義元は反省した。
(う~む、そういえば織田信長もすでに誕生していたのだったな…)
天文3年5月12日(1534年6月23日)に、吉法師(織田信長)は誕生している。しかしその時には義元もまだ僧であったし、その後に続いたゴタゴタで気にする余裕もなかった。
(そうだ。ここは緊張緩和のためにも、ひとつ誕生祝いでも送っとくか)
実際に迷惑かけられてる織田信秀は嫌いだけど、出来たら信長とは仲良くしたい。そうした思いから、義元は吉法師宛てに祝いの品を贈った。
しかし突然前触れもなく時節外れの祝いの品をピンポイントで贈りつけられた織田弾正忠家では、殺すと決めた相手にプレゼントを贈るイタリアンマフィア的な受け止め方をされ酷く嫌がられたという。
…。
一日を終え後は寝るだけとなった義元がふと夜空を見上げると、綺麗な真ん丸お月様が昇っていた。
(ほう、今宵は満月か。よい月じゃ)
誘われるように庭に出て月を眺めていると、月明かりの下で笛を吹くことを思いついた。最近貰った贈り物のなかに笛があったのを思い出したのだ。
(うむ、なんとも風情よの。よし、ではこの義元のスーパー雅タイムじゃ)
しかし笛など吹いたことがなく未来の記憶がおぼろにあるだけ。それでも構わず吹き始めた。すると調子がずれたり音を外したりする度に、なにやら台所の方から物の割れる音が聞こえてきたではないか。
(はて…?)
それでも月夜に笛を吹くは楽しい。興の赴くまま身体全体を使って吹き鳴らしていると、なぜか困り顔の老臣がやってきた。
「太守様、夜風は身体に障ります。どうぞ館にお戻りください」
「だいじょうぶじゃ。大事ない」
「いえ!お風邪を召してからでは遅うございます!」
「ふむ、そうか。では今宵はこれくらいにするとしよう」
後日、また笛を吹こうと仕舞った場所を見てみると、影形も無く消えていて誰も行方を知らぬという。はて、あの笛は何処に消えてしまったのやら。
「うむ、ごくろう。たしかそなたは、尾張を探りに行った者だったな」
夕暮れ時。久しぶりに姿を見せた鳥波に、義元はやさしく声をかけた。いつだって義元は下の者に優しいのである。
「はい、左様にございます」
「よし、では聞こう。なにか有益な情報はあったか?」
「ハッ、さればご報告を。実は、織田弾正忠の嫡男は…」
「うむ」
すると鳥波は、妙なところで間を持たせる。そこで義元も、これはさぞ重要な情報なのかと耳をそばだたせた。
「まだ赤子なれど、乳母の点Pを噛み千切るほど癇の虫が強いようにございます」
しかし聞き終えた途端、力が抜け膝から崩れ落ちそうになってしまった。
(いや、その情報いるッ!?)
「そ、そうか…。ほかには?」
「ハッ、さらに困った守役がほかに乳母を求めましたところ、点Pを噛み千切られるほど強く噛まれても、全く動じぬ女房がいた由にございます!」
それを聞き、またしても義元は膝から崩れ落ちそうになる。
「い、いや、それが一体なんじゃというのじゃ?」
「されば!尾張の女子のなかには鋼の点Pを持つ者も存在するのではと推察いたします!」
それを聞いた義元は『コイツこんな奴だったっけ?』と思いつつも、もしや仕事のし過ぎで疲れているのかもと考え暇を与えることにした。
「…う、うむ。それはご苦労であったの。そなたには褒美と暇を与える故、温泉にでもゆっくり浸かっての。じっくり骨休めをするがよい」
「ハッ、ありがとう存じます!」
「あまり無理せず身体をいとえよ!」
「ハッ、ありがとう存じます!」
そのまま下がっていく鳥波の後姿を見送りながら、少々こき使い過ぎてしまったかもと義元は反省した。
(う~む、そういえば織田信長もすでに誕生していたのだったな…)
天文3年5月12日(1534年6月23日)に、吉法師(織田信長)は誕生している。しかしその時には義元もまだ僧であったし、その後に続いたゴタゴタで気にする余裕もなかった。
(そうだ。ここは緊張緩和のためにも、ひとつ誕生祝いでも送っとくか)
実際に迷惑かけられてる織田信秀は嫌いだけど、出来たら信長とは仲良くしたい。そうした思いから、義元は吉法師宛てに祝いの品を贈った。
しかし突然前触れもなく時節外れの祝いの品をピンポイントで贈りつけられた織田弾正忠家では、殺すと決めた相手にプレゼントを贈るイタリアンマフィア的な受け止め方をされ酷く嫌がられたという。
…。
一日を終え後は寝るだけとなった義元がふと夜空を見上げると、綺麗な真ん丸お月様が昇っていた。
(ほう、今宵は満月か。よい月じゃ)
誘われるように庭に出て月を眺めていると、月明かりの下で笛を吹くことを思いついた。最近貰った贈り物のなかに笛があったのを思い出したのだ。
(うむ、なんとも風情よの。よし、ではこの義元のスーパー雅タイムじゃ)
しかし笛など吹いたことがなく未来の記憶がおぼろにあるだけ。それでも構わず吹き始めた。すると調子がずれたり音を外したりする度に、なにやら台所の方から物の割れる音が聞こえてきたではないか。
(はて…?)
それでも月夜に笛を吹くは楽しい。興の赴くまま身体全体を使って吹き鳴らしていると、なぜか困り顔の老臣がやってきた。
「太守様、夜風は身体に障ります。どうぞ館にお戻りください」
「だいじょうぶじゃ。大事ない」
「いえ!お風邪を召してからでは遅うございます!」
「ふむ、そうか。では今宵はこれくらいにするとしよう」
後日、また笛を吹こうと仕舞った場所を見てみると、影形も無く消えていて誰も行方を知らぬという。はて、あの笛は何処に消えてしまったのやら。
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