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冷泉ハットトリック為和
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塩は今川に莫大な富をもたらしていた。
駿府・遠江の長大な海岸線を用い国をあげ生産に励んでいるので、その量はたいへんなものになる。それを堺・甲斐・信濃・相模と求めてくるのだから需要も多く、飛ぶように売れた。
たとえばそう、塩は贈答品としても大変喜ばれている。腐らずすぐに使えるうえ、小分けにするのもカンタン。だからちょっとしたお礼としても使えるのだ。
これが西瓜などではそう日持ちもしないうえ、半分とかで渡されても『なんだ丸々一個じゃないのかよ』と貰った方も残念な気分になってしまう。まぁ、西瓜もメロンもこの時代では記憶の中にしか無い存在だが。
だがそうした商売の付き合いで色々接していると、時におかしなお願いをされることもある。
「なに、信濃の国人たちから義父殿を何とかしてほしいと?」
「はい。直接言うても聞いて貰えぬ。息子の晴信殿も手を焼いておられる。そこでこの儀、駿府殿にお願い願えまいかと」
(ふぅむ、困ったものよのう)
この件では以前に義弟・武田晴信からも手紙をもらい、酒や八徳の手紙を送った。しかしそれでも信虎殿の乱行は治まっておらぬ様子。
そこで義元はしばし思案したのち、冷泉為和を呼んだ。
「太守様、ご機嫌麗しゅう存じます。お呼びと伺い参りました」
「おお、よく来てくれた。実はそなたに頼みがあっての。甲斐に戰蹴鞠の興行に行って欲しいのじゃ」
「甲斐、にございまするか?」
「うむ、どうも甲斐の武田親子の仲が良うないらしくての。戰蹴鞠でも観戦し共通の話題でも出来れば、少しは打ち解けられようかと思うての。そなたは歌人として甲斐武田でも指導をしておったと聞く。此度は戰蹴鞠の興行主として行って貰えまいか」
「なるほど、そういうことにございまするか。しかし甲斐はなにやら信濃と揉めておる様子。大丈夫にございましょうか?途中で襲われては堪りませぬ」
為和は治安の悪さを心配してそう言った。そこで義元は、そのような時には今川の名を使えと名の使用を許した。
「うむ、護衛の兵も勿論つけるが、そうした時は儂の名を出すが良い。我ら今川から来た者ぞ。我らに弓ひけば、塩も止まれば木も買って貰えなくなろう。その方らはそれで良いのか?以前のように飢えたいか?とな」
「おお、たしかにそれであれば迂闊に手は出せませぬな」
「それでも手を出してくるような愚か者にはの、塩を持たせる故ぶつけてやれ。さすれば鬼も退散しよう」
「ホホホ、太守様はうまいことを申される。餓鬼の類には豆より塩が効きまするか」
…。
こうして冷泉為和は蹴鞠組を引き連れ甲斐を訪れたが、案の定ただでは済まなかった。
戰蹴鞠の興行は行われた。しかし自分が賭けていた蹴鞠組が負けたことに腹を立てた信虎が、刀を抜いて選手を斬り殺そうとしたのだ。
「ええい、どけ!そやつを斬らねば気が治まらぬ!」
だが、間に入った為和が機転を利かせ意識を逸らす。
「お待ちを!この者を斬ったとて、他人の蹴鞠組に賭けていたのでは同じこと。それよりも信虎殿、ご自身で蹴鞠組を持つ気はおじゃりませぬか?」
「なに、儂の蹴鞠組だと…?」
「さよう。甲斐は山国。それ故ここで暮らす者達は足腰も相当鍛えられておるはず。その者達で蹴鞠組を作り信虎殿が指揮なされば、常勝無敗も夢ではありますまい?」
「ほお、そうか。言われてみればその手もある。面白い。よかろう為和、儂に監督とやらのコツを教えよ!」
こうして信虎が蹴鞠組を持つとその魅力にハマり、乱行親父からギャンブル狂いなサッカー大好きおじさんへと変貌した。これにより、すこしだけ迷惑の規模がダウングレードしたそうな。
晴信の苦労は相変わらずなようだが、これで近隣に迷惑をかける回数は減ったようである。
駿府・遠江の長大な海岸線を用い国をあげ生産に励んでいるので、その量はたいへんなものになる。それを堺・甲斐・信濃・相模と求めてくるのだから需要も多く、飛ぶように売れた。
たとえばそう、塩は贈答品としても大変喜ばれている。腐らずすぐに使えるうえ、小分けにするのもカンタン。だからちょっとしたお礼としても使えるのだ。
これが西瓜などではそう日持ちもしないうえ、半分とかで渡されても『なんだ丸々一個じゃないのかよ』と貰った方も残念な気分になってしまう。まぁ、西瓜もメロンもこの時代では記憶の中にしか無い存在だが。
だがそうした商売の付き合いで色々接していると、時におかしなお願いをされることもある。
「なに、信濃の国人たちから義父殿を何とかしてほしいと?」
「はい。直接言うても聞いて貰えぬ。息子の晴信殿も手を焼いておられる。そこでこの儀、駿府殿にお願い願えまいかと」
(ふぅむ、困ったものよのう)
この件では以前に義弟・武田晴信からも手紙をもらい、酒や八徳の手紙を送った。しかしそれでも信虎殿の乱行は治まっておらぬ様子。
そこで義元はしばし思案したのち、冷泉為和を呼んだ。
「太守様、ご機嫌麗しゅう存じます。お呼びと伺い参りました」
「おお、よく来てくれた。実はそなたに頼みがあっての。甲斐に戰蹴鞠の興行に行って欲しいのじゃ」
「甲斐、にございまするか?」
「うむ、どうも甲斐の武田親子の仲が良うないらしくての。戰蹴鞠でも観戦し共通の話題でも出来れば、少しは打ち解けられようかと思うての。そなたは歌人として甲斐武田でも指導をしておったと聞く。此度は戰蹴鞠の興行主として行って貰えまいか」
「なるほど、そういうことにございまするか。しかし甲斐はなにやら信濃と揉めておる様子。大丈夫にございましょうか?途中で襲われては堪りませぬ」
為和は治安の悪さを心配してそう言った。そこで義元は、そのような時には今川の名を使えと名の使用を許した。
「うむ、護衛の兵も勿論つけるが、そうした時は儂の名を出すが良い。我ら今川から来た者ぞ。我らに弓ひけば、塩も止まれば木も買って貰えなくなろう。その方らはそれで良いのか?以前のように飢えたいか?とな」
「おお、たしかにそれであれば迂闊に手は出せませぬな」
「それでも手を出してくるような愚か者にはの、塩を持たせる故ぶつけてやれ。さすれば鬼も退散しよう」
「ホホホ、太守様はうまいことを申される。餓鬼の類には豆より塩が効きまするか」
…。
こうして冷泉為和は蹴鞠組を引き連れ甲斐を訪れたが、案の定ただでは済まなかった。
戰蹴鞠の興行は行われた。しかし自分が賭けていた蹴鞠組が負けたことに腹を立てた信虎が、刀を抜いて選手を斬り殺そうとしたのだ。
「ええい、どけ!そやつを斬らねば気が治まらぬ!」
だが、間に入った為和が機転を利かせ意識を逸らす。
「お待ちを!この者を斬ったとて、他人の蹴鞠組に賭けていたのでは同じこと。それよりも信虎殿、ご自身で蹴鞠組を持つ気はおじゃりませぬか?」
「なに、儂の蹴鞠組だと…?」
「さよう。甲斐は山国。それ故ここで暮らす者達は足腰も相当鍛えられておるはず。その者達で蹴鞠組を作り信虎殿が指揮なされば、常勝無敗も夢ではありますまい?」
「ほお、そうか。言われてみればその手もある。面白い。よかろう為和、儂に監督とやらのコツを教えよ!」
こうして信虎が蹴鞠組を持つとその魅力にハマり、乱行親父からギャンブル狂いなサッカー大好きおじさんへと変貌した。これにより、すこしだけ迷惑の規模がダウングレードしたそうな。
晴信の苦労は相変わらずなようだが、これで近隣に迷惑をかける回数は減ったようである。
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