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虎千代召喚
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織田信秀から手紙が届いた。
それで先日送った祝いの品の礼でも書かれているのかと思ったら、なんの嫌がらせかという苦情の手紙だった。
ピンポイントで自分ちに祝いの品が届いたせいで、今川と通じでいるのではと疑われているらしい。図らずも吉法師へのプレゼントが、離間の計となったようだ。
そこで、それはおまえの日頃の行いが悪いせいだろうと手紙を書いて、送り返さなかった。途中で考えを改め、やめたのだ。
もしこの手紙を信秀が受け取った場合、『ほら、見てみてコレ今川義元からの手紙。ボクのこと悪しざまに書かれてるでしょ。だからボクちゃん今川となんて内通してないんだよ~』と、弁明の口実を与えてしまうこととなると考えたのだ。
それならば内通しているものと周囲から誤解されている方がよい。その方が信秀も動きがとり難くなって、三河への調略の手も緩むだろう。
それはさておき、信長のことが気になったら今度は上杉謙信のことが気になった。
将来の織田信長は生まれていた。武田信玄こと武田晴信は義弟となった。今川は自分だし、北条とは親戚関係。さて、では後この近辺で気になる武将といえば誰だろうと考えてみると、上杉謙信の名が思い浮かんだのである。
(あ~、そういえば、上杉謙信って今どんな状況…?)
そこで上杉家にも季節の贈り物と手紙を送ることにした。要約すると、こんな感じ。
『いやいやどうも、今川義元です。初めまして。まぁ上杉さんが対立してる北条家とは親戚なんですけど、うちは全然そういう、戰とか望んでないんで。出来たら両家が仲良くしてくれたらなぁ、なんて思ってるんですよ。そんな訳で、もし仲介とか必要になった時には声掛けてくださいね。決して悪いようにはしませんから。あ、それと清酒っての造ったんで贈ります。感想も聞きたいです』
するとすぐに返事が返ってきて、武田と結ぶならこっちにも話通すのが筋だろうとか、北条を後ろから攻めるなら仲良くしてやらんこともないといった事が書かれていた。
(あ~、上杉定実さん、機嫌悪そう)
そして『清酒は美味かったが、おまえんとこ塩もたくさん作ってるだろ。作り方おしえろ』とも、書かれていた。
そこで、北条攻めるのはないけど、塩の製法なら教えてあげなくもない。但し教えるなら実地で教えるから人を寄越せと、長尾家を指名した。未来の歴史知識で、上杉謙信が元は長尾家の人間だと知っていたからだ。
すると長尾家からも『いや、突然指名されたんだけど、どういう事っスか!?』といった内容で手紙が届いたので、日程や工程などを詰めるやり取りを重ねている間に探りを入れた。
我が今川には、雪斎を通じた寺ネットワークもあれば母の持つ公家ネットワーク。それにこの義元が使う鳥波までいるのだ。この3つのアプローチで同じことを探れば、かなり確度の高い情報が手に入る。
それにより虎千代なる子供が寺に入れられてるのを知ると、『かつての自分をみるようで、不憫でならぬ。こちらに寄越してくれれば新たな家を起たせ厚く遇するから送って欲しい』と、長尾家に虎千代(推定・上杉謙信)をねだった。
そしたら、『あ、じゃあ研修生おくる時にいっしょに送りますわ』ってな感じで簡単にOKしてくれた。
まぁ、時は戦国時代。どの家も家と血筋を残すのに必死。なので他家に行っても自分の血脈が残ってくれるなら、と思ったもののようである。
…。
こうして梅雨に入る前に、越後から塩の研修視察団と共に長尾虎千代がやってきた。
「お初にお目にかかります。長尾虎千代にございます!」
そう挨拶したのは、坊主頭が伸びイガグリ頭となっている童。
僧籍から還俗できたとあって、越後からの旅の間は剃らずに伸びたものらしい。駿遠の太守に面会するのにその頭でいいのか。とも思ったが、超絶青田買い大成功の義元は気にしない。自分もそんな風な頭で評定してたこともあるし。
歳の頃は6.7歳。その眼は初めての旅で興奮しきり。キラキラと虹を吐いて輝いている。
(あぁ、我が身にも経験がある。この年頃に寺での修行は、詰まらなかったからのう)
それが寺でこのまま一生を終えるのかと思いきや、突然救いの手が差し伸べられたのだ。それでは眼からも口からも虹を吐きたくなるというもの。今は開かれた前途への期待で、胸がはちきれんばかりであろう。
「うむ、よう参った。儂が駿遠の守護、今川義元である。そなたの後見となる故、儂の事は駿府の父と思うが良い」
「はい、ありがとうございます!」
で、こんなにサクッと虎千代がやってきたのには理由があり、去年の8月に、虎千代の父・長尾為景は隠居。兄の長尾晴景が家督を継いだ。この晴景の生母は為景の正室である為、当然我が子が第一。
それゆえ駿府から虎千代が欲しいとオファーがあったのにも我が子の地位を脅かすかもしれない弟を減らす為、『んまぁ、とても良いお話じゃないのぉ~!』と、物凄い援護射撃をしてくれたようなのだ。だからたくさん贈り物おくっといた。
「そしてこちらの僧は我が師、太原雪斎じゃ。そなたも雪斎から学ぶがよい」
「はい…、よろしくお願い致します」
しかし雪斎を紹介すると、虎千代は不服の様子。やっと寺から解放されたのにまた坊主かよといった思いが、ありありと透けて見えた。成長すれば名将だが、今はまだ年端もいかぬ童であるようだ。
「そうそう。雪斎の寺ではの、他にも武士の子どもが大勢学んでおる。そなたにもすぐ友達ができよう」
「はい!」
そこでそうフォローを入れてやると、機嫌を直した模様。うむ、これでまた駿府に愉快な仲間が増えたの。
それで先日送った祝いの品の礼でも書かれているのかと思ったら、なんの嫌がらせかという苦情の手紙だった。
ピンポイントで自分ちに祝いの品が届いたせいで、今川と通じでいるのではと疑われているらしい。図らずも吉法師へのプレゼントが、離間の計となったようだ。
そこで、それはおまえの日頃の行いが悪いせいだろうと手紙を書いて、送り返さなかった。途中で考えを改め、やめたのだ。
もしこの手紙を信秀が受け取った場合、『ほら、見てみてコレ今川義元からの手紙。ボクのこと悪しざまに書かれてるでしょ。だからボクちゃん今川となんて内通してないんだよ~』と、弁明の口実を与えてしまうこととなると考えたのだ。
それならば内通しているものと周囲から誤解されている方がよい。その方が信秀も動きがとり難くなって、三河への調略の手も緩むだろう。
それはさておき、信長のことが気になったら今度は上杉謙信のことが気になった。
将来の織田信長は生まれていた。武田信玄こと武田晴信は義弟となった。今川は自分だし、北条とは親戚関係。さて、では後この近辺で気になる武将といえば誰だろうと考えてみると、上杉謙信の名が思い浮かんだのである。
(あ~、そういえば、上杉謙信って今どんな状況…?)
そこで上杉家にも季節の贈り物と手紙を送ることにした。要約すると、こんな感じ。
『いやいやどうも、今川義元です。初めまして。まぁ上杉さんが対立してる北条家とは親戚なんですけど、うちは全然そういう、戰とか望んでないんで。出来たら両家が仲良くしてくれたらなぁ、なんて思ってるんですよ。そんな訳で、もし仲介とか必要になった時には声掛けてくださいね。決して悪いようにはしませんから。あ、それと清酒っての造ったんで贈ります。感想も聞きたいです』
するとすぐに返事が返ってきて、武田と結ぶならこっちにも話通すのが筋だろうとか、北条を後ろから攻めるなら仲良くしてやらんこともないといった事が書かれていた。
(あ~、上杉定実さん、機嫌悪そう)
そして『清酒は美味かったが、おまえんとこ塩もたくさん作ってるだろ。作り方おしえろ』とも、書かれていた。
そこで、北条攻めるのはないけど、塩の製法なら教えてあげなくもない。但し教えるなら実地で教えるから人を寄越せと、長尾家を指名した。未来の歴史知識で、上杉謙信が元は長尾家の人間だと知っていたからだ。
すると長尾家からも『いや、突然指名されたんだけど、どういう事っスか!?』といった内容で手紙が届いたので、日程や工程などを詰めるやり取りを重ねている間に探りを入れた。
我が今川には、雪斎を通じた寺ネットワークもあれば母の持つ公家ネットワーク。それにこの義元が使う鳥波までいるのだ。この3つのアプローチで同じことを探れば、かなり確度の高い情報が手に入る。
それにより虎千代なる子供が寺に入れられてるのを知ると、『かつての自分をみるようで、不憫でならぬ。こちらに寄越してくれれば新たな家を起たせ厚く遇するから送って欲しい』と、長尾家に虎千代(推定・上杉謙信)をねだった。
そしたら、『あ、じゃあ研修生おくる時にいっしょに送りますわ』ってな感じで簡単にOKしてくれた。
まぁ、時は戦国時代。どの家も家と血筋を残すのに必死。なので他家に行っても自分の血脈が残ってくれるなら、と思ったもののようである。
…。
こうして梅雨に入る前に、越後から塩の研修視察団と共に長尾虎千代がやってきた。
「お初にお目にかかります。長尾虎千代にございます!」
そう挨拶したのは、坊主頭が伸びイガグリ頭となっている童。
僧籍から還俗できたとあって、越後からの旅の間は剃らずに伸びたものらしい。駿遠の太守に面会するのにその頭でいいのか。とも思ったが、超絶青田買い大成功の義元は気にしない。自分もそんな風な頭で評定してたこともあるし。
歳の頃は6.7歳。その眼は初めての旅で興奮しきり。キラキラと虹を吐いて輝いている。
(あぁ、我が身にも経験がある。この年頃に寺での修行は、詰まらなかったからのう)
それが寺でこのまま一生を終えるのかと思いきや、突然救いの手が差し伸べられたのだ。それでは眼からも口からも虹を吐きたくなるというもの。今は開かれた前途への期待で、胸がはちきれんばかりであろう。
「うむ、よう参った。儂が駿遠の守護、今川義元である。そなたの後見となる故、儂の事は駿府の父と思うが良い」
「はい、ありがとうございます!」
で、こんなにサクッと虎千代がやってきたのには理由があり、去年の8月に、虎千代の父・長尾為景は隠居。兄の長尾晴景が家督を継いだ。この晴景の生母は為景の正室である為、当然我が子が第一。
それゆえ駿府から虎千代が欲しいとオファーがあったのにも我が子の地位を脅かすかもしれない弟を減らす為、『んまぁ、とても良いお話じゃないのぉ~!』と、物凄い援護射撃をしてくれたようなのだ。だからたくさん贈り物おくっといた。
「そしてこちらの僧は我が師、太原雪斎じゃ。そなたも雪斎から学ぶがよい」
「はい…、よろしくお願い致します」
しかし雪斎を紹介すると、虎千代は不服の様子。やっと寺から解放されたのにまた坊主かよといった思いが、ありありと透けて見えた。成長すれば名将だが、今はまだ年端もいかぬ童であるようだ。
「そうそう。雪斎の寺ではの、他にも武士の子どもが大勢学んでおる。そなたにもすぐ友達ができよう」
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