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津島奇襲作戦後日談
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この日、不機嫌な様子で勝幡城にいた織田信秀(26)の元に、血相を変えた柴田権六が報告にのぼった。
「申し上げます!勘十郎(信勝or信行)さま宛に、今川家から祝いの品が届いた由にございますッ!」
「なに、またか!?」
「ハッ、そのことを痛く気にされた土田御前様は、そのまま臥せってしまわれたとのことです!」
「なんだと!」
その様子に扇子で信秀に風を送っていた側室がビクリと身を震わせる。
「せ、先日には三郎五郎(信広)さまにも贈り物があったばかり。周囲の疑いの眼は、ますます殿に向くものかと…」
「ぐぬぬ、義元めェ…!」
(おのれ、三河への調略にこうした形で返してくるとは)
しかしこれは信秀のあずかり知らぬことながら、相談役となり義元といっしょに鳥波の報告を聞いていた勘助の策。織田弾正忠家の吉法師(信長)宛てに贈り物をしたら酷く嫌がられたという話を聞くと、勘助が『ではもっとやりましょう!』と勧めたのである。
信秀は織田弾正忠家(勝幡織田氏)という織田大和守家に仕える清洲三奉行の一家に過ぎない。これが力を持っていつかは上を喰ってやろうと画策している最中に、外と内通しているなどと疑われては一大事。それでは三河への調略が、みな信秀の内通の為と思われてしまう。
「しょ、商船の復旧はどうなっている?」
「ハ、幾ばくかは使えるようになったようにございますが、まだ全てとは…」
(う、うぬぬ。これでは貢物で機嫌をとることも難しいではないか…)
織田弾正忠家の強さの秘訣は、港の交易の利を牛耳っているから。それを封じられたうえ、上からも疑いの眼を向けられていては思うように身動きがとれない。
「では、また身銭を切らねばならぬな…」
先日の大蛇騒ぎで海神の怒りを静める為にと、津島神社には決して安くはない寄進を行なった。このうえさらに上のご機嫌取りに銭を使うのは、信秀にしても非常に厳しいものがあったのだった。
…。
ところ変わって駿府の造船所では、水蛇艇の封印作業が行われていた。地下の横穴掘った空間に向け、水蛇艇が兵たちに担がれ仕舞われていく。その様子を、勘助は残念に思いつつ眺めていた。
「ああ、もったいない。もっと色々と策を考えておりましたのに…」
対して並んで封印作業を見守る義元には、これ以上水蛇艇を使うつもりがない様子。
「そう申すな勘助。こうしたモノはの、ここぞという時に使うからこそ意味がある。しょっちゅう大蛇が現れておっては、怖さもご利益も薄まろう?」
「はぁ。そういうものでございますか」
「うむ、水蛇艇は弾正忠に十分打撃を与えてくれた。それで十分よ。これ以上乱用すれば、却って我らに不利益を齎すであろう」
現れた大蛇が海神の怒りでなくでまかせで、今川の差し金とバレては一大事。偽物の大蛇で神仏の名を騙ったなどと噂されたら、今川の名に傷がついてしまう。今川義元はクリーンでなければならないのだ。
「そうですな。あとに仕掛けた贈り物も、もう届いた頃にございましょう。しばらくすればその反応も聞こえて来るでしょう」
「そうか、喜んでくれていると良いがのう」
しかし、そんな義元の願いとは裏腹に、贈り物は織田弾正忠家へ大打撃を与えていたのだった。
「申し上げます!勘十郎(信勝or信行)さま宛に、今川家から祝いの品が届いた由にございますッ!」
「なに、またか!?」
「ハッ、そのことを痛く気にされた土田御前様は、そのまま臥せってしまわれたとのことです!」
「なんだと!」
その様子に扇子で信秀に風を送っていた側室がビクリと身を震わせる。
「せ、先日には三郎五郎(信広)さまにも贈り物があったばかり。周囲の疑いの眼は、ますます殿に向くものかと…」
「ぐぬぬ、義元めェ…!」
(おのれ、三河への調略にこうした形で返してくるとは)
しかしこれは信秀のあずかり知らぬことながら、相談役となり義元といっしょに鳥波の報告を聞いていた勘助の策。織田弾正忠家の吉法師(信長)宛てに贈り物をしたら酷く嫌がられたという話を聞くと、勘助が『ではもっとやりましょう!』と勧めたのである。
信秀は織田弾正忠家(勝幡織田氏)という織田大和守家に仕える清洲三奉行の一家に過ぎない。これが力を持っていつかは上を喰ってやろうと画策している最中に、外と内通しているなどと疑われては一大事。それでは三河への調略が、みな信秀の内通の為と思われてしまう。
「しょ、商船の復旧はどうなっている?」
「ハ、幾ばくかは使えるようになったようにございますが、まだ全てとは…」
(う、うぬぬ。これでは貢物で機嫌をとることも難しいではないか…)
織田弾正忠家の強さの秘訣は、港の交易の利を牛耳っているから。それを封じられたうえ、上からも疑いの眼を向けられていては思うように身動きがとれない。
「では、また身銭を切らねばならぬな…」
先日の大蛇騒ぎで海神の怒りを静める為にと、津島神社には決して安くはない寄進を行なった。このうえさらに上のご機嫌取りに銭を使うのは、信秀にしても非常に厳しいものがあったのだった。
…。
ところ変わって駿府の造船所では、水蛇艇の封印作業が行われていた。地下の横穴掘った空間に向け、水蛇艇が兵たちに担がれ仕舞われていく。その様子を、勘助は残念に思いつつ眺めていた。
「ああ、もったいない。もっと色々と策を考えておりましたのに…」
対して並んで封印作業を見守る義元には、これ以上水蛇艇を使うつもりがない様子。
「そう申すな勘助。こうしたモノはの、ここぞという時に使うからこそ意味がある。しょっちゅう大蛇が現れておっては、怖さもご利益も薄まろう?」
「はぁ。そういうものでございますか」
「うむ、水蛇艇は弾正忠に十分打撃を与えてくれた。それで十分よ。これ以上乱用すれば、却って我らに不利益を齎すであろう」
現れた大蛇が海神の怒りでなくでまかせで、今川の差し金とバレては一大事。偽物の大蛇で神仏の名を騙ったなどと噂されたら、今川の名に傷がついてしまう。今川義元はクリーンでなければならないのだ。
「そうですな。あとに仕掛けた贈り物も、もう届いた頃にございましょう。しばらくすればその反応も聞こえて来るでしょう」
「そうか、喜んでくれていると良いがのう」
しかし、そんな義元の願いとは裏腹に、贈り物は織田弾正忠家へ大打撃を与えていたのだった。
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