妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子

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 ブランデーはゆったりとした足取りで部屋に入ると、周囲を見回しながら不敵な笑みを浮かべた。
「ほう、これは面白いことになっているな」と声をあげる。
 ジェシカはその姿を見つけるや否や、すぐさまブランデーに駆け寄り、縋るように叫んだ。
「ブランデー様!姉さんが証拠を掴んだの!助けて!」
 ブランデーは余裕たっぷりに腕を組み、ジェシカを見下ろした。
「助けてやってもいいが……条件がある。」
「条件?」
 ジェシカの眉がぴくりと動く。
「私の息子の女になるんだな。」
 その言葉にジェシカは顔を真っ青にして後ずさる。
「無理よ!絶対に嫌!」
 ブランデーは肩をすくめ、にやりと笑う。
「じゃあ仕方ない。私はお前の姉君と交渉を進めよう。」
 そう言って、私の方へと向き直る。
「……待って!」
 ジェシカは震える声で叫んだ。
「分かったわ……助けて……」
 ブランデーは満足そうに頷くと、指を鳴らした。
「よし、ボルテックスミキサーを呼べ。」
 しばらくして、ずしりと床を揺らすような足音と共に、ブランデーの息子、ボルテックスミキサーが姿を現した。
 身の丈2メートルを優に超え、筋肉の鎧をまとった巨漢が、ゆっくりと近づく。額からは大粒の汗が滴り落ち、重たい息を吐くたびに空気が揺れる。
「ジェシカ……お前は、俺のもんだ……」
 ボルテックスミキサーはジェシカを見つめ、分厚い唇をゆがめるように動かした。
「やめて!!!」
 ジェシカの悲鳴が響くも、ボルテックスミキサーは彼女を両腕で抱きすくめ、そのまま強引に唇を奪った。
「う……うぐっ……!!!」
 ジェシカの体が激しく抵抗するが、ボルテックスミキサーの腕の中では、虫けらのように無力だった。
 そのままジェシカを抱え上げると、ボルテックスミキサーは何も言わずに部屋を出ていく。ジェシカは激しく足をばたつかせながらも、逃れることができなかった。
「いやああああああああ!!!!!!!」
 彼女の悲鳴だけが、長い廊下に響き渡った。

 それからしばらくすると、ブランデーは薄く笑いながら私に歩み寄り、低い声で言った。
「証拠を渡してもらおうか」
 私は腕を組み、鋭い眼差しで彼を見返した。
「断るわ」
「そういうと思ったよ」
 ブランデーは肩をすくめ、ニヤリと笑った。
「だが、そちらもお楽しみいただけただろう?」
 彼は視線を横に流した。遠ざかる廊下の奥、ジェシカが無理やり引きずられていく姿が見えた。彼女の絶叫が響く。
「ボルテックスミキサーは束縛癖が強い男でな。あいつにとって愛とは所有だ。ジェシカ嬢は、あいつの深い深い愛に包まれることだろう」
 ブランデーは鼻で笑うと、私を見据えた。
「これで復讐は完遂したといっていいのではないか?」
 私はその言葉に、一瞬思考を巡らせた。ジェシカは自らの行いの報いを受け、もう以前のように傲慢に振る舞うことはできないだろう。それで十分かもしれない。だが——
「いいえ、まだ終わっていないわ」
「ほう?」
 ブランデーは興味深そうに眉を上げた。
「私はただ復讐のために動いていたわけじゃないの。そもそも、目的はジェシカの服を売りさばくことだったのよ」
「ほう……」
 ブランデーの目が細くなる。
「服を買わない?」
 私は微笑み、商談を持ちかけるように言った。
 ブランデーはしばし黙考した後、「物によりますなぁ」と含みのある言葉を返した。
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