12 / 137
12.新たな求婚者
しおりを挟む
重ねた手を握り私を引っ張り上げた殿下が腰に手を回しがっちりホールドする。反対の手を頬に当て見つめて来る。
『かっ!顔が近い喪女にこの距離はヤバイです!』
必死に抵抗するも微動だにしない!
「このまま私の側にずっと居てくれ…」
更に綺麗な殿下のお顔が近づく私のファーストキスがぁ!
「春香!」
けたたましい音と共にミハイルさんが入ってきた。一瞬殿下の拘束が緩み、その隙に殿下を突き飛ばしミハイルさんに駆け寄り抱きついた。ミハイルさんはしっかり受け止めてくれた。
ミハイルさんに力一杯抱きつき安心したら涙が出てきた。緊張して知らない場所に来て意地悪されて、2回しか会った事ない人にいきなり迫られもうキャパオーバーしている
「春香…」
弱々しく殿下が呼び手を差し伸べてくる。
身を強張らせた私を見てミハイルさんが強い口調で
「春香が怯えいる。触れないでいただきたい!」
「ローランドどういう事か説明をしなさい」
声をする方を見るとレイモンド様位のお年のダンディなおじ様がいた。あれ?殿下に似ている。
「陛下!私はやっと見つけた『迷い人』に会っていたのです。春香は私の唯一だ」
「殿下…春香の左手手首に婚約のブレスレットが見えませんか⁈春香は私の婚約者だ。いくら王族といえど女神レイラの前で婚約を結んだカップルを割く事は許されない。婚約をお疑いならここに婚約証明証がございます。確認されますか⁉︎」
「何故だ?春香は私に触れられる唯一の女性なのに…」
溜息をついたイケオジが
「ローランド。お前の気持ちも分かるが、無理強いはいかん。春香嬢を見なさい。可哀想に怯えている。いかなる時も男は女性を泣かせてはならんのだ」
殿下を窘めたのは国王陛下だった。そして陛下が状況を知りたいようで、陛下の執務室に移動する事になった。ミハイルさんが手を繋いでくれ歩こうとしたが足が震えて力か入らず歩けない。
「ごめんなさい。少し待ってくれたら…わっ!」
ミハイルさんは少し屈み私を抱き上げだ。
「無理をしなくていい。頼れ」
「はい。ありがとうございます」
廊下は少しひんやりとしたが、ミハイルさんの腕の中は温かくて心地いい。ミハイルさんの温もりで少し気持ちも落ち着いて来た。そこでふと疑問に思った。町屋敷で待機のミハイルさんがなんでここに居るの? ジョシュさんは何処に居たの?まだ執務室に着きそうに無いから聞いてみた。
私が登城した知らせは有ったのに控室から一向に謁見の間に案内されない事に疑問に思ったジョシュさんが、町屋敷に知らせを入れてミハイルさんを呼んだ。レイモンド様は不足の事態を想定し陛下に繋ぎを取ってくれていて、ミハイルさんは直ぐに陛下に謁見でき駆けつける事が出来たらし。
レイモンド様はローランド殿下が私を囲い込む事が分かっていたようだ。シュナイダー家の皆さんに感謝×2です。
後ろを歩いていたジョシュさんが自分のマントを取りかけてくれた。お礼言うと微笑みを返してくれる
陛下の執務室に着き豪華なソファーに下された。座り心地バッチだけどミハイルさんとジョシュさんに挟まれ座ると少し狭い。
お2人共大きいから幅をとり密着していて恥ずかしい。陛下とローランド殿下そして知らない中年男性が陛下の後ろに立っている。ラノベ的には宰相か執事だろうか⁈
女官さんがお茶を入れてくれ退室し陛下が落ちついた口調で話し出した。
「まず、シュナイダー公爵家ミハイルと春香嬢の婚約は正式なものと確認できた。儂は春香嬢。貴女の事が聞きたい」
「え…と…」
ここに転移してきた時にミハイルさんに説明した通り話すと、この世界に“日本国”と言う国は無いと言われ、やはり『時空の迷い人』ではないかと疑われる。根拠はないけどまだ異世界人である事は伏せた方がいい気がして追加で説明をする
「先ほども言いましたが私は未成年で多くを教わっていません。それは昔貧しい国を見限り若者が多く国外へ移住し若者が減り国力が弱くなった事から、成人するまで教えてもらえなくなったそうです。ですから私が“日本国”だと思っていたのが、もしかしたら住んでいた地域名かもしれません。それに私が殿下に触れれるのは私の国の特異体質によるものかもしれません。私の国に行けば普通の事かもしれませんよ」
これで納得してくれるだろうか⁈ドキドキしながら陛下を見ると何か考え込んでいる。ローランド殿下はずっと私を見ていて何を考えているか分からなくて怖い。
「春香嬢。女性に聞くべきではないが貴女はお幾つなのだ?」
「18歳です。私の国では男は18歳で女は20歳で成人となります」
「この国では立派な成人女性だ」
「ローランドの加護の件はレイモンドから聞いているな。春香嬢が迷い人でなくてもローランドに触れれる貴重な女性だ。ローランドには兄弟も無く次期王が決まっている。故に婚姻し伴侶を得る必要がある。どうだろう婚約は女性が望めば破棄することが出来る。
この国の為にローランドを選んではくれぬか⁈」
ミハイルさんとジョシュさんが私の手をぐっと握りしめる。
「私はシュナイダー公爵家の領地でミハイル様に保護して頂きました。私の望みは自宅に帰る事です。それを知ったシュナイダー公爵家の皆様がミハイル様と婚約する事により身分を得て、帰る方法を探す時間を作って下さいました。もし半年後の付き合わせまでに帰り方が分からない時は、ミハイル様との婚約を破棄し付き合わせに平民として参加し、この国に根を下ろし一生をここで過ごすことを覚悟しています。
私は自国でも平民なので貴族や王族といった高貴な身分は恐れ多くて無理です。きっと精神がもちません。伴侶を選ぶなら平民の男性と縁組を望んでいます。ですから陛下と殿下の好意には添う事はできません」
私の発言にミハイルさん、ジョシュさんとローランド殿下が一斉に立ち上がった。
「「「春香!」」」
どんなに親切にしてもらってもそこはぶれません。私は平凡で普通を好むから派手な身分も生活もいらない。夫になる人と共に働き子を育て穏やかに老いて行きたい。目の前の素敵な男性とはそんな事は皆無だ。皆変わった生き物に興味があるだけ、ゴラスの美しい令嬢と縁組したら道端のたんぽぽの事は忘れるよ。
私の発言に部屋の空気が重くなり暫く沈黙が続いた。すると陛下の後の男性が陛下に発言を請い許可を得て話し出す。
「初めまして春香嬢。私はこの国で宰相を務めるモーリスと申します。お見知りおきを…春香嬢のお考えは分かりました。
ではどうでしょう⁈次の付き合わせまでの間、春香嬢は王室の資料室及び図書館で自国の事をお調べ帰る方法をお探しになり、その間に殿下やシュナイダー公爵家の方々と交流し身の振り方を考えられてはいかがですか⁈会って間もない男性をいきなり伴侶にと言われ戸惑われるのは当然の事です。
殿下も身分に頼らず一人の男性として春香嬢に求婚した方がよろしいかと…。ミハイル殿も同様です。春香嬢は高貴な身分の方との縁を望まれていない。かなり頑張らないと難しいですよ」
流石宰相!有り難い。王室の資料や図書館なら異世界人の資料があるかもしれない。もしかしたら帰った痕跡を記したものもあるかも…
少し先行きが明るくなった気がした。左に座るジョシュさんが私の前に跪き手を取り
「兄上と婚約をしたので諦めていましたが、今の話なら私にもチャンスがあるという事になりますね。姉上。いや春香嬢。私も貴女の相手候補に立候補します。飾らず家臣を思いやる貴女に引かれ恋う様になりました。貴女の心を得たい。私の事も見ていただきたい」
「ジョシュ!」
「兄上。すみません…兄上を尊敬し初めは春香嬢との婚約を心から喜びましたが、やはり自分の心に嘘は付けない。恋敵として認めていただきたい」
「・・・」
何この兄弟対決は⁈話が変な方向へ行っているよ。ミハイルさんとジョシュさんの睨み合いに挟まれ困っていたら
「春香嬢。先ほどの非礼をお詫び申し上げます。今後は時間をかけて私を知って欲しい。そして貴女の事を知りたい。どうか私に時間を下さい」
「・・・」
なんだこれ?
「すみません。皆さん私の話聞いていました?私貴族とか王子とかご遠慮したい!私の事は忘れて次のお相手を見つけて下さい」
すると陛下は笑い出した。
「春香嬢はもてるなぁ!ローランド!ライバル強敵だ頑張りなさい」
この後陛下とモーリス様は公務予定があり退室されて行き、猛獣…もとい美丈夫3人に囲まれ口説かれ精神をすり減らす事となった。
日が暮れ出しそろそろ退城しないと屋敷帰れない。シュナイダー公爵の屋敷はどうしてもあの森を通る事になる。馬車道には野獣除けの樹木を植えてあるけど絶対ではないので、遅くなるようなら町屋敷に泊まる事になっている。同じく港にも屋敷があるらしい。
これ以上遅くなると町屋敷に泊まる事になるので殿下に許可を貰い退城する。殿下が濡れたドレスや身の回り品は後日屋敷に持って来てくれるらしい。
『ん?』
て事は殿下が公爵家に来るの?いやいや王子が小娘の荷物を運ぶ?ないない!ナイナイ?嫌な感じがしたけど今はスルーする。
帰りの馬車でミハイルさんとジョシュさんに贈って頂いた品を濡らしてしまいお詫びする。2人共私のせいではないと言ってくれた。本当に優しい兄弟だ。でも馬車の中の雰囲気はすこぶる悪い。ミハイルさんとジョシュさんは話しかけたら普通に返事してくれるけど、二人はお互い目も合わさないし会話もない。屋敷に着くまで後1時間はある。沈黙恐怖症の私にはある種拷問だ。辛くて真っ暗で外が見えない窓をずっと見てたら眠ってしまった。
「・・・・!」
「・・・・!!」
男性の言い争いで目が覚めた。馬車の中には私一人で扉は開いている。外を見るとアビー様を挟みミハイルさんとジョシュさんが言い争っている。困った顔のアビー様が私の視線に気づいて笑顔で馬車に入って来た。
「お疲れさま。春香ちゃんは今日大変だったね。あの二人は放って置いて私の執務室に来なさい。美味しい食事を用意させるわ」
「アビー様ただいま戻りました。あの…お二人の争いの原因は?」
「もーつまらない事よ。眠ってしまった春香ちゃんをどちらが運ぶかで喧嘩しているのよ。ちっちゃい男たちで母は恥ずかしいわ!」
「・・・」
「さぁ~行きましょう!」
アビー様に手を引かれ屋敷に入っていく。後ろでお二人が何か言っているけどアビー様の鼻歌が大きくて聞こえない。
アビー様の執務室に入ると美味しそうな匂いが充満しお腹が大合唱を始めてアビー様が大笑いする。
席に座り食事をいただく。私が食べるのをずっとニコニコしながらアビー様が見ている。
それにしてもアビー様は酒豪だ。大きいワイングラスに入った赤ワインが一飲みで空になる。もう1本無くなる勢いだ。羨ましい私なんて缶チューハイ半分で完全に酔っぱらいになれる。
食事も終わりお茶をいただいていたら待っていたようにアビー様が今日の事を話し出した。
「おおよそはミハイルとジョシュから聞いたわ。ローランド殿下は予測通りだったけど、春香ちゃんが読めなかったわ。びっくりよ」
「(何かが分からないけど)ごめんなさい」
「謝る事ないわ。正直な春香ちゃんの気持ちと考えなんでしょ⁈」
「はい…」
「私は公爵家の人間だからミハイルと春香ちゃんが結ばれて公爵家を継いでくれるのが理想。でもねジョシュが春香ちゃん来た時から気に入っていたのも分かっていた。春香ちゃんには気さくで明るい感じだけど普段のジョシュは気難しくてね。過去に2回付き合わせに参加して多くの令嬢にアプローチされたけど誰も選ばなかった。女性嫌いかと思うくらい女性に冷たくてね。不器用だけどミハイルの方が女性には優しいわ」
「そんな感じに見えないです」
意外な話しに驚く。
「ジョシュにとってそれだけ春香ちゃんは特別なのよ。ジョシュも婿入り予定とは言え我が子。愛しているし幸せになって欲しい」
「なんかすみません。私がシュナイダー家の領地に落ちていたせいで全てを混乱させているようです」
すると微笑んだアビー様は
「そんなことないわ。レイモンドもミハイルと同じで不器用で感情はあまり出さないけど、春香ちゃんが可愛くて仕方ないのよ。この前城下で身の回り物を買ったでしょう? あの時も少なすぎると怒っていたわ。もっと春香に似合うものを用意させるって張り切っていてね。
これから話す事は内緒ね!今日港に行ったときに外国から入って来たシルクの生地を沢山買って針子にドレスを仕立てさせているの。もうすぐ社交シーズンが来るからそのドレスを着た春香ちゃんと踊りたいみたいよ」
「こんなによくして頂いても返すものがありません。明日からこのお屋敷で働かせて下さい。掃除洗濯は一通りできますから!」
「なら、笑顔でこの屋敷に居て頂だい。春香ちゃんが来てから屋敷が華やかになって家臣たちも生き生きしていてね楽しいそうだわ」
アビー様の優しさに泣けて来た。
「あらあら」と言いながらアビー様は私を膝の上に抱いて頭を撫でてくれる。
「春香ちゃんはいい子。人の事ばかり…自分本位でいいのよ。聞き分け良すぎて変な男に捕まりそう… いや捕まりかけているわね!もー母は心配!」
「変な人に引っかからない様にアビー様に相談します」
「そうして頂だいね。私の可愛い娘ちゃん!」
涙もとまり落ち付いてきたのでアビー様にお礼を述べて部屋に戻り休む事にした。
今日は色々ありすぎて夢も見ず朝まで熟睡したのであった。
『かっ!顔が近い喪女にこの距離はヤバイです!』
必死に抵抗するも微動だにしない!
「このまま私の側にずっと居てくれ…」
更に綺麗な殿下のお顔が近づく私のファーストキスがぁ!
「春香!」
けたたましい音と共にミハイルさんが入ってきた。一瞬殿下の拘束が緩み、その隙に殿下を突き飛ばしミハイルさんに駆け寄り抱きついた。ミハイルさんはしっかり受け止めてくれた。
ミハイルさんに力一杯抱きつき安心したら涙が出てきた。緊張して知らない場所に来て意地悪されて、2回しか会った事ない人にいきなり迫られもうキャパオーバーしている
「春香…」
弱々しく殿下が呼び手を差し伸べてくる。
身を強張らせた私を見てミハイルさんが強い口調で
「春香が怯えいる。触れないでいただきたい!」
「ローランドどういう事か説明をしなさい」
声をする方を見るとレイモンド様位のお年のダンディなおじ様がいた。あれ?殿下に似ている。
「陛下!私はやっと見つけた『迷い人』に会っていたのです。春香は私の唯一だ」
「殿下…春香の左手手首に婚約のブレスレットが見えませんか⁈春香は私の婚約者だ。いくら王族といえど女神レイラの前で婚約を結んだカップルを割く事は許されない。婚約をお疑いならここに婚約証明証がございます。確認されますか⁉︎」
「何故だ?春香は私に触れられる唯一の女性なのに…」
溜息をついたイケオジが
「ローランド。お前の気持ちも分かるが、無理強いはいかん。春香嬢を見なさい。可哀想に怯えている。いかなる時も男は女性を泣かせてはならんのだ」
殿下を窘めたのは国王陛下だった。そして陛下が状況を知りたいようで、陛下の執務室に移動する事になった。ミハイルさんが手を繋いでくれ歩こうとしたが足が震えて力か入らず歩けない。
「ごめんなさい。少し待ってくれたら…わっ!」
ミハイルさんは少し屈み私を抱き上げだ。
「無理をしなくていい。頼れ」
「はい。ありがとうございます」
廊下は少しひんやりとしたが、ミハイルさんの腕の中は温かくて心地いい。ミハイルさんの温もりで少し気持ちも落ち着いて来た。そこでふと疑問に思った。町屋敷で待機のミハイルさんがなんでここに居るの? ジョシュさんは何処に居たの?まだ執務室に着きそうに無いから聞いてみた。
私が登城した知らせは有ったのに控室から一向に謁見の間に案内されない事に疑問に思ったジョシュさんが、町屋敷に知らせを入れてミハイルさんを呼んだ。レイモンド様は不足の事態を想定し陛下に繋ぎを取ってくれていて、ミハイルさんは直ぐに陛下に謁見でき駆けつける事が出来たらし。
レイモンド様はローランド殿下が私を囲い込む事が分かっていたようだ。シュナイダー家の皆さんに感謝×2です。
後ろを歩いていたジョシュさんが自分のマントを取りかけてくれた。お礼言うと微笑みを返してくれる
陛下の執務室に着き豪華なソファーに下された。座り心地バッチだけどミハイルさんとジョシュさんに挟まれ座ると少し狭い。
お2人共大きいから幅をとり密着していて恥ずかしい。陛下とローランド殿下そして知らない中年男性が陛下の後ろに立っている。ラノベ的には宰相か執事だろうか⁈
女官さんがお茶を入れてくれ退室し陛下が落ちついた口調で話し出した。
「まず、シュナイダー公爵家ミハイルと春香嬢の婚約は正式なものと確認できた。儂は春香嬢。貴女の事が聞きたい」
「え…と…」
ここに転移してきた時にミハイルさんに説明した通り話すと、この世界に“日本国”と言う国は無いと言われ、やはり『時空の迷い人』ではないかと疑われる。根拠はないけどまだ異世界人である事は伏せた方がいい気がして追加で説明をする
「先ほども言いましたが私は未成年で多くを教わっていません。それは昔貧しい国を見限り若者が多く国外へ移住し若者が減り国力が弱くなった事から、成人するまで教えてもらえなくなったそうです。ですから私が“日本国”だと思っていたのが、もしかしたら住んでいた地域名かもしれません。それに私が殿下に触れれるのは私の国の特異体質によるものかもしれません。私の国に行けば普通の事かもしれませんよ」
これで納得してくれるだろうか⁈ドキドキしながら陛下を見ると何か考え込んでいる。ローランド殿下はずっと私を見ていて何を考えているか分からなくて怖い。
「春香嬢。女性に聞くべきではないが貴女はお幾つなのだ?」
「18歳です。私の国では男は18歳で女は20歳で成人となります」
「この国では立派な成人女性だ」
「ローランドの加護の件はレイモンドから聞いているな。春香嬢が迷い人でなくてもローランドに触れれる貴重な女性だ。ローランドには兄弟も無く次期王が決まっている。故に婚姻し伴侶を得る必要がある。どうだろう婚約は女性が望めば破棄することが出来る。
この国の為にローランドを選んではくれぬか⁈」
ミハイルさんとジョシュさんが私の手をぐっと握りしめる。
「私はシュナイダー公爵家の領地でミハイル様に保護して頂きました。私の望みは自宅に帰る事です。それを知ったシュナイダー公爵家の皆様がミハイル様と婚約する事により身分を得て、帰る方法を探す時間を作って下さいました。もし半年後の付き合わせまでに帰り方が分からない時は、ミハイル様との婚約を破棄し付き合わせに平民として参加し、この国に根を下ろし一生をここで過ごすことを覚悟しています。
私は自国でも平民なので貴族や王族といった高貴な身分は恐れ多くて無理です。きっと精神がもちません。伴侶を選ぶなら平民の男性と縁組を望んでいます。ですから陛下と殿下の好意には添う事はできません」
私の発言にミハイルさん、ジョシュさんとローランド殿下が一斉に立ち上がった。
「「「春香!」」」
どんなに親切にしてもらってもそこはぶれません。私は平凡で普通を好むから派手な身分も生活もいらない。夫になる人と共に働き子を育て穏やかに老いて行きたい。目の前の素敵な男性とはそんな事は皆無だ。皆変わった生き物に興味があるだけ、ゴラスの美しい令嬢と縁組したら道端のたんぽぽの事は忘れるよ。
私の発言に部屋の空気が重くなり暫く沈黙が続いた。すると陛下の後の男性が陛下に発言を請い許可を得て話し出す。
「初めまして春香嬢。私はこの国で宰相を務めるモーリスと申します。お見知りおきを…春香嬢のお考えは分かりました。
ではどうでしょう⁈次の付き合わせまでの間、春香嬢は王室の資料室及び図書館で自国の事をお調べ帰る方法をお探しになり、その間に殿下やシュナイダー公爵家の方々と交流し身の振り方を考えられてはいかがですか⁈会って間もない男性をいきなり伴侶にと言われ戸惑われるのは当然の事です。
殿下も身分に頼らず一人の男性として春香嬢に求婚した方がよろしいかと…。ミハイル殿も同様です。春香嬢は高貴な身分の方との縁を望まれていない。かなり頑張らないと難しいですよ」
流石宰相!有り難い。王室の資料や図書館なら異世界人の資料があるかもしれない。もしかしたら帰った痕跡を記したものもあるかも…
少し先行きが明るくなった気がした。左に座るジョシュさんが私の前に跪き手を取り
「兄上と婚約をしたので諦めていましたが、今の話なら私にもチャンスがあるという事になりますね。姉上。いや春香嬢。私も貴女の相手候補に立候補します。飾らず家臣を思いやる貴女に引かれ恋う様になりました。貴女の心を得たい。私の事も見ていただきたい」
「ジョシュ!」
「兄上。すみません…兄上を尊敬し初めは春香嬢との婚約を心から喜びましたが、やはり自分の心に嘘は付けない。恋敵として認めていただきたい」
「・・・」
何この兄弟対決は⁈話が変な方向へ行っているよ。ミハイルさんとジョシュさんの睨み合いに挟まれ困っていたら
「春香嬢。先ほどの非礼をお詫び申し上げます。今後は時間をかけて私を知って欲しい。そして貴女の事を知りたい。どうか私に時間を下さい」
「・・・」
なんだこれ?
「すみません。皆さん私の話聞いていました?私貴族とか王子とかご遠慮したい!私の事は忘れて次のお相手を見つけて下さい」
すると陛下は笑い出した。
「春香嬢はもてるなぁ!ローランド!ライバル強敵だ頑張りなさい」
この後陛下とモーリス様は公務予定があり退室されて行き、猛獣…もとい美丈夫3人に囲まれ口説かれ精神をすり減らす事となった。
日が暮れ出しそろそろ退城しないと屋敷帰れない。シュナイダー公爵の屋敷はどうしてもあの森を通る事になる。馬車道には野獣除けの樹木を植えてあるけど絶対ではないので、遅くなるようなら町屋敷に泊まる事になっている。同じく港にも屋敷があるらしい。
これ以上遅くなると町屋敷に泊まる事になるので殿下に許可を貰い退城する。殿下が濡れたドレスや身の回り品は後日屋敷に持って来てくれるらしい。
『ん?』
て事は殿下が公爵家に来るの?いやいや王子が小娘の荷物を運ぶ?ないない!ナイナイ?嫌な感じがしたけど今はスルーする。
帰りの馬車でミハイルさんとジョシュさんに贈って頂いた品を濡らしてしまいお詫びする。2人共私のせいではないと言ってくれた。本当に優しい兄弟だ。でも馬車の中の雰囲気はすこぶる悪い。ミハイルさんとジョシュさんは話しかけたら普通に返事してくれるけど、二人はお互い目も合わさないし会話もない。屋敷に着くまで後1時間はある。沈黙恐怖症の私にはある種拷問だ。辛くて真っ暗で外が見えない窓をずっと見てたら眠ってしまった。
「・・・・!」
「・・・・!!」
男性の言い争いで目が覚めた。馬車の中には私一人で扉は開いている。外を見るとアビー様を挟みミハイルさんとジョシュさんが言い争っている。困った顔のアビー様が私の視線に気づいて笑顔で馬車に入って来た。
「お疲れさま。春香ちゃんは今日大変だったね。あの二人は放って置いて私の執務室に来なさい。美味しい食事を用意させるわ」
「アビー様ただいま戻りました。あの…お二人の争いの原因は?」
「もーつまらない事よ。眠ってしまった春香ちゃんをどちらが運ぶかで喧嘩しているのよ。ちっちゃい男たちで母は恥ずかしいわ!」
「・・・」
「さぁ~行きましょう!」
アビー様に手を引かれ屋敷に入っていく。後ろでお二人が何か言っているけどアビー様の鼻歌が大きくて聞こえない。
アビー様の執務室に入ると美味しそうな匂いが充満しお腹が大合唱を始めてアビー様が大笑いする。
席に座り食事をいただく。私が食べるのをずっとニコニコしながらアビー様が見ている。
それにしてもアビー様は酒豪だ。大きいワイングラスに入った赤ワインが一飲みで空になる。もう1本無くなる勢いだ。羨ましい私なんて缶チューハイ半分で完全に酔っぱらいになれる。
食事も終わりお茶をいただいていたら待っていたようにアビー様が今日の事を話し出した。
「おおよそはミハイルとジョシュから聞いたわ。ローランド殿下は予測通りだったけど、春香ちゃんが読めなかったわ。びっくりよ」
「(何かが分からないけど)ごめんなさい」
「謝る事ないわ。正直な春香ちゃんの気持ちと考えなんでしょ⁈」
「はい…」
「私は公爵家の人間だからミハイルと春香ちゃんが結ばれて公爵家を継いでくれるのが理想。でもねジョシュが春香ちゃん来た時から気に入っていたのも分かっていた。春香ちゃんには気さくで明るい感じだけど普段のジョシュは気難しくてね。過去に2回付き合わせに参加して多くの令嬢にアプローチされたけど誰も選ばなかった。女性嫌いかと思うくらい女性に冷たくてね。不器用だけどミハイルの方が女性には優しいわ」
「そんな感じに見えないです」
意外な話しに驚く。
「ジョシュにとってそれだけ春香ちゃんは特別なのよ。ジョシュも婿入り予定とは言え我が子。愛しているし幸せになって欲しい」
「なんかすみません。私がシュナイダー家の領地に落ちていたせいで全てを混乱させているようです」
すると微笑んだアビー様は
「そんなことないわ。レイモンドもミハイルと同じで不器用で感情はあまり出さないけど、春香ちゃんが可愛くて仕方ないのよ。この前城下で身の回り物を買ったでしょう? あの時も少なすぎると怒っていたわ。もっと春香に似合うものを用意させるって張り切っていてね。
これから話す事は内緒ね!今日港に行ったときに外国から入って来たシルクの生地を沢山買って針子にドレスを仕立てさせているの。もうすぐ社交シーズンが来るからそのドレスを着た春香ちゃんと踊りたいみたいよ」
「こんなによくして頂いても返すものがありません。明日からこのお屋敷で働かせて下さい。掃除洗濯は一通りできますから!」
「なら、笑顔でこの屋敷に居て頂だい。春香ちゃんが来てから屋敷が華やかになって家臣たちも生き生きしていてね楽しいそうだわ」
アビー様の優しさに泣けて来た。
「あらあら」と言いながらアビー様は私を膝の上に抱いて頭を撫でてくれる。
「春香ちゃんはいい子。人の事ばかり…自分本位でいいのよ。聞き分け良すぎて変な男に捕まりそう… いや捕まりかけているわね!もー母は心配!」
「変な人に引っかからない様にアビー様に相談します」
「そうして頂だいね。私の可愛い娘ちゃん!」
涙もとまり落ち付いてきたのでアビー様にお礼を述べて部屋に戻り休む事にした。
今日は色々ありすぎて夢も見ず朝まで熟睡したのであった。
4
あなたにおすすめの小説
【完結】秀才の男装治療師が女性恐怖症のわんこ弟子に溺愛されるまで
禅
恋愛
「神に祈るだけで曖昧にしか治らない。そんなものは治療とは言わない」
男尊女卑が強い国で、女であることを隠し、独自の魔法を使いトップクラスの治療師となり治療をしていたクリス。
ある日、新人のルドがやってきて教育係を押し付けられる。ルドは魔法騎士団のエースだが治療魔法が一切使えない。しかも、女性恐怖症。
それでも治療魔法が使えるようになりたいと懇願するルドに根負けしたクリスは特別な治療魔法を教える。
クリスを男だと思い込み、純粋に師匠として慕ってくるルド。
そんなルドに振り回されるクリス。
こんな二人が無自覚両片思いになり、両思いになるまでの話。
※最初の頃はガチ医療系、徐々に恋愛成分多めになっていきます
※主人公は現代に近い医学知識を使いますが、転生者ではありません
※一部変更&数話追加してます(11/24現在)
※※小説家になろうで完結まで掲載
改稿して投稿していきます
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?
きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~
水無月礼人
恋愛
私は冒険者ギルド職員ロックウィーナ。25歳の女で担当は回収役。冒険者の落し物、遺品、時には冒険者自体をも背負います!
素敵な恋愛に憧れているのに培われるのは筋肉だけ。
しかし無駄に顔が良い先輩と出動した先で、行き倒れた美形剣士を背負ってから私の人生は一変。初のモテ期が到来です!!
……とか思ってウハウハしていたら何やら不穏な空気。ええ!?
私の選択次第で世界がループして崩壊の危機!? そんな結末は認めない!!!!
※【エブリスタ】でも公開しています。
【エブリスタ小説大賞2023 講談社 女性コミック9誌合同マンガ原作賞】で優秀作品に選ばれました。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる