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97.赤いドア
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クリスさんが床に手を当てるとテーブルが現れた。何故かテーブルには綺麗な金色の砂時計がある。
「これは?」
「ここはテクルスが創った空間です。ここで最後の決断をしていただきます。この砂時計はこの空間のリミットで、この砂が全て落ちるとこの空間は無くなり時空の狭間に取り残されます。リミットまでにこの世界に残るか春香様の世界に帰るか決めてドアを選んでください」
そう言いクリスさんは砂時計の上に手を置いた。
「ドアって来た時の黒いドアとあの赤いドアの事?」
「はい。黒いドアは町屋敷につながっていて、赤いドアは日本の春香様の部屋につながっています」
『おぉ!!異世界っぽい』
でも私『残るって』決めたのに何でここに来る必要があるの? 疑問に思い聞くと決断というより元の世界とお別れをする意味の方が大きいそうだ。
「春香様が元の世界を見て帰りたくなったらそれでも構いません。貴女は日本での全てを手放さなければならないのです。こちらの都合に巻き込んでしまった貴女へのテクルスからの謝罪なのです」
「アレックスさんはそんな話しはしなかったよ」
初耳の話に慌てると
「テクルスの使いには知らされていません。何故なら2人目の使いは迷い人を愛し、迷い人が帰る決断に水を差してしまった。だからテクルスは3人目である春香様の使い人には知らせなかったのです。もし(使いが)この事を知れば彼の方は阻止するかもしれません」
「アレックスさんは真面目だからそんな事…」
「しないと言い切れますか?」
「・・・」
彼の想いを知っている私は断言出来なかった。クリスさんは苦笑いをし、1人目の迷い人の話をしてくれた。
1人目の迷い人は里美さんと言い私と同じく日本人。私と同じく早くにレイラの加護を受けた王子に出会い、早い時期から王子の求婚を受けてここに残る事を決めていた。里美さんは物心ついた時から孤児院で過ごし親の顔を知らない。王子を直ぐに受け入れたのは里美さんが家族に憧れ、早く家庭を持ちたいと思っていたからだ。
「早くにここに残る事を決めた里美様でも最後は心動いたそうです。やはり日本でのご友人や知り合いを見たら里心が出るのでしょう」
「“友人、知り合いを見る”って?」
「あの赤いドアに触れると日本の様子が見る事が出来るのです」
「じゃあ!叔母の様子が!」
「はい」
それは気持ちが動くかもしれない…少し動揺した私にクリスさんは
「春香様。喉が渇きませんか? お飲み物をご用意いたしましょうか?」
「はい。お願いしま…へ? この何もない空間のどこに飲み物が?」
するとクリスさんは私の手を取り砂時計の上に手を乗せて
「望むものを想像してください。日本のものでも大丈夫です」
「えっ!じゃーアイスコーヒーとかでも?」
頷くクリスさん。なんてチートな! 異世界は何でもありだなぁ! 心でいつもテイクアウトしていたコーヒー専門店の水出しアイスコーヒーを想像したら…出た!アイスコーヒー!
「おぉ!凄いよ。超久しぶりのコーヒーだ!いい匂い…感動!」
「香ばしくいい香りですが、色が…真っ黒ですよ!本当に飲み物なのですか?」
「はい。苦いけどコクがあって美味しいんです。毎日飲んでいました」
嬉しくて直ぐ一口飲む…う~ん!最高!
「クリスさん!この砂時計なんでも出るの?」
「どこまで出るか分かりませんが…お試しになりますか?」
頷き今一番欲しいものを想像する…すると!
「何ですかこの小さい箱と見たことも無い道具は!」
「やった!!私のスマホとBluetoothイヤホン!マジ嬉しい!!あ…でも圏外…やっぱりね…でも本体に落とした音楽は聞け…る!」
「すまほ?ぶる??日本の物ですか?」
「はい!生活必需品です!めっちゃ嬉しい」
スマホを手に取りテンションが上がる私を微笑ましく見ていたクリスさんが咳払いをして
「この説明が最後になります。これが終われば私は退室します。先程もお話し致しましたが、あの黒いドアは町屋敷の春香様の部屋につながっています。そして求婚者の皆様に集まってもらい、春香様の帰りをお待ちしています。それから日本の様子を見るときは、ドアに触れてみたい人を思い浮かべ、決してドアノブには触れないで下さい」
ちょっと怖くなり
「何故?」
「ドアノブに触れるとドアが開き、日本へ戻ってしまいます。黒のドアも同様でドアノブに触れると町屋敷の春香様の部屋に行き、この空間に戻る事は出来ません」
「ここを出る時にしか触れたらダメなんだね」
「はい。ここからはお一人で過ごしお決めになって下さい。何度も言いますが砂時計の砂が落ち切るまでに、どちらかのドアを選んで下さい」
「分かりました。クリスさん色々ありがとう」
クリスさんは黒いドアを見て
「恐らくレイシャルは夕刻でそろそろ春香様が居ない事で騒ぎになっている筈です。私が説明に行って参ります。春香様…最後にお願いがあります」
「何?」
「貴女を抱きしめていいですか?」
「へ?はい?…」
妙に色っぽいクリスさんが目の前に来て少し焦る。
『ハグするだけ』
と自分に言い聞かすけど心臓の音が煩い。初めはふんわりハグしたクリスさんだったが… 今めっちゃ強く抱きしめられプチパニックになっている。クリスさんはパッと見い細く華奢に見えるが抱きしめられて分かった。この執事服の下には凄い筋肉が隠れている。いい匂いもするし恥ずかしくなって来た。すると…
「春香様は人を魅了する能力をお持ちだ。影として生きて来た私は人に関心を持たない。しかし貴女は別だ。小さな仕草もぼんやりしているお顔も全てが気になる。異世界人だからでしょか?」
「そうです!異世界人だからですよ!」
「そう思う事にします。ここでの事はいい思い出にさせていただきます。ですからご安心してください。この様な事は二度とありませんから」
「はい。安心します」
すると腕を解き笑うクリスさん。
「では、何度も言いますが砂時計をよく見て下さい」
頷くと綺麗な礼をしてクリスさんは黒いドアを開けて出て行った。この空間に一人になった。どうしよう…
取りあえずイヤホンを着けて推しの声優の曲を聞きながらアイスコーヒーをゆっくり味わう。クリスさんに注意された砂時計まだ2/3も残っている。しかしあまりのんびりはして居れないから、赤いドアに移動して前に来た。
「緊張してきた…」
ドアに手を当てて叔母を思い出す。するとボンヤリと何か見えてきた。映画館のスクリーンを見ている様で叔母が見えた。前に見た夢と同じで新幹線の様だ。叔父と龍也…ん?この女性はだれ?
叔母は元気そうだ。叔母はあのラノベを優しい表情をして読んでいる。するとあの知らない女性が叔母に話しかける。
「ママりんまたそれ読んでんの⁈んでさ!またハルちんが悪女にビンタされるトコで、また怒るんでしょ⁈」
「この悪役令嬢はうちの春香に手を挙げるんだよ!腹が立つわ!」
「お袋…確かにその主人公は春香に似ているけど春香じゃ無いから」
私の話をしている。皆んな元気そうだ。安心していたら叔母が龍也の横に座る女性の手を取り
「マミちゃん。本当に龍也で良いの? この子次男なのに伯母夫婦の墓守したり、失踪している春香の件も責任持つつもりよ。申し訳ないわ…」
えっ何!龍也結婚するの!ビックリだ…龍也は結構男前で硬派。モテるクセに浮いた話か無かった。それに彼女さんもイメージが違う。昔に龍也から聞いた好きなタイプと真逆だ。派手な服装にメイクも濃い。驚いていると
「ママりん!たっつんは私の容姿では無くて、中身を見てくれる。それにハルちんやママりんやパパりんを大切に思える最高の男なんだよ。だから私もたっつんの力になりたい。ママりんもパパりんも良い人だから問題なし」
「ありがとう…」
「ママりん泣くと老けるよ!お家に帰ったらハンドマッサージしてあげる」
叔母は嬉しそうに笑う。どうやら龍也が結婚し私の両親の墓守をし私が帰って来たら面倒を見るつもりだ。嬉しい…従兄弟だし叔母が言った通り次男で義務も無いのに…
龍也は見る目ある。彼女さんは見た目は派手だし言葉遣いがアレだけど、優しい人なのは分かる。だって叔母を見る目がとても優しい。こんないいお嫁さんさんが来てくれたら安心だ。
「龍也…ごめんね…ウチの両親の供養と墓守をよろしくお願いします」
本当は直接会いお礼を言いたいけど無理だから、ドアから手を離しドアに向かって最敬礼した。
砂時計を見たらまだ時間はありそうだ。どうやら私が推測していた通り、こっちの1ヶ月は向こうの1年の様で6年経っていた。そして大人になった親友の今を見てみる。仲良い4人は何と2人結婚していて、ウチ1人は妊娠中! 私がいた時は喪女仲間で彼氏も居なかったのに…結構な衝撃だった。
赤いドアから離れ椅子に座り、音楽を聴きながら保存してあった写真をみている。本当は日本の皆んなの様子が分かったら直ぐに黒いドアに行くつもりだった。
しかし少し残っているアイスコーヒーに気付き、アイスコーヒーを飲みながらスマホを触っていたら写真を見つける。古いのは中学の卒業式の写真だった。
「懐かしい…」
写真には亡くなった父と母が写っている。スマホの画面が涙でぼやける。
黒いドアを開けると、このスマホも消える。さっきクリスさんが言った様に、この後日本に居た私の全てを手放す。レイシャルに残るって決めたのに、やぱり寂しい… 私が消えてしまいそうに感じる。
でもよく分かっている。あの黒いドア向こうには大切に思い、私を必要としてくれる人が居ること。
でも… スマホの画面には笑っている私がいる。スマホを握り暫く動けなかった。
「これは?」
「ここはテクルスが創った空間です。ここで最後の決断をしていただきます。この砂時計はこの空間のリミットで、この砂が全て落ちるとこの空間は無くなり時空の狭間に取り残されます。リミットまでにこの世界に残るか春香様の世界に帰るか決めてドアを選んでください」
そう言いクリスさんは砂時計の上に手を置いた。
「ドアって来た時の黒いドアとあの赤いドアの事?」
「はい。黒いドアは町屋敷につながっていて、赤いドアは日本の春香様の部屋につながっています」
『おぉ!!異世界っぽい』
でも私『残るって』決めたのに何でここに来る必要があるの? 疑問に思い聞くと決断というより元の世界とお別れをする意味の方が大きいそうだ。
「春香様が元の世界を見て帰りたくなったらそれでも構いません。貴女は日本での全てを手放さなければならないのです。こちらの都合に巻き込んでしまった貴女へのテクルスからの謝罪なのです」
「アレックスさんはそんな話しはしなかったよ」
初耳の話に慌てると
「テクルスの使いには知らされていません。何故なら2人目の使いは迷い人を愛し、迷い人が帰る決断に水を差してしまった。だからテクルスは3人目である春香様の使い人には知らせなかったのです。もし(使いが)この事を知れば彼の方は阻止するかもしれません」
「アレックスさんは真面目だからそんな事…」
「しないと言い切れますか?」
「・・・」
彼の想いを知っている私は断言出来なかった。クリスさんは苦笑いをし、1人目の迷い人の話をしてくれた。
1人目の迷い人は里美さんと言い私と同じく日本人。私と同じく早くにレイラの加護を受けた王子に出会い、早い時期から王子の求婚を受けてここに残る事を決めていた。里美さんは物心ついた時から孤児院で過ごし親の顔を知らない。王子を直ぐに受け入れたのは里美さんが家族に憧れ、早く家庭を持ちたいと思っていたからだ。
「早くにここに残る事を決めた里美様でも最後は心動いたそうです。やはり日本でのご友人や知り合いを見たら里心が出るのでしょう」
「“友人、知り合いを見る”って?」
「あの赤いドアに触れると日本の様子が見る事が出来るのです」
「じゃあ!叔母の様子が!」
「はい」
それは気持ちが動くかもしれない…少し動揺した私にクリスさんは
「春香様。喉が渇きませんか? お飲み物をご用意いたしましょうか?」
「はい。お願いしま…へ? この何もない空間のどこに飲み物が?」
するとクリスさんは私の手を取り砂時計の上に手を乗せて
「望むものを想像してください。日本のものでも大丈夫です」
「えっ!じゃーアイスコーヒーとかでも?」
頷くクリスさん。なんてチートな! 異世界は何でもありだなぁ! 心でいつもテイクアウトしていたコーヒー専門店の水出しアイスコーヒーを想像したら…出た!アイスコーヒー!
「おぉ!凄いよ。超久しぶりのコーヒーだ!いい匂い…感動!」
「香ばしくいい香りですが、色が…真っ黒ですよ!本当に飲み物なのですか?」
「はい。苦いけどコクがあって美味しいんです。毎日飲んでいました」
嬉しくて直ぐ一口飲む…う~ん!最高!
「クリスさん!この砂時計なんでも出るの?」
「どこまで出るか分かりませんが…お試しになりますか?」
頷き今一番欲しいものを想像する…すると!
「何ですかこの小さい箱と見たことも無い道具は!」
「やった!!私のスマホとBluetoothイヤホン!マジ嬉しい!!あ…でも圏外…やっぱりね…でも本体に落とした音楽は聞け…る!」
「すまほ?ぶる??日本の物ですか?」
「はい!生活必需品です!めっちゃ嬉しい」
スマホを手に取りテンションが上がる私を微笑ましく見ていたクリスさんが咳払いをして
「この説明が最後になります。これが終われば私は退室します。先程もお話し致しましたが、あの黒いドアは町屋敷の春香様の部屋につながっています。そして求婚者の皆様に集まってもらい、春香様の帰りをお待ちしています。それから日本の様子を見るときは、ドアに触れてみたい人を思い浮かべ、決してドアノブには触れないで下さい」
ちょっと怖くなり
「何故?」
「ドアノブに触れるとドアが開き、日本へ戻ってしまいます。黒のドアも同様でドアノブに触れると町屋敷の春香様の部屋に行き、この空間に戻る事は出来ません」
「ここを出る時にしか触れたらダメなんだね」
「はい。ここからはお一人で過ごしお決めになって下さい。何度も言いますが砂時計の砂が落ち切るまでに、どちらかのドアを選んで下さい」
「分かりました。クリスさん色々ありがとう」
クリスさんは黒いドアを見て
「恐らくレイシャルは夕刻でそろそろ春香様が居ない事で騒ぎになっている筈です。私が説明に行って参ります。春香様…最後にお願いがあります」
「何?」
「貴女を抱きしめていいですか?」
「へ?はい?…」
妙に色っぽいクリスさんが目の前に来て少し焦る。
『ハグするだけ』
と自分に言い聞かすけど心臓の音が煩い。初めはふんわりハグしたクリスさんだったが… 今めっちゃ強く抱きしめられプチパニックになっている。クリスさんはパッと見い細く華奢に見えるが抱きしめられて分かった。この執事服の下には凄い筋肉が隠れている。いい匂いもするし恥ずかしくなって来た。すると…
「春香様は人を魅了する能力をお持ちだ。影として生きて来た私は人に関心を持たない。しかし貴女は別だ。小さな仕草もぼんやりしているお顔も全てが気になる。異世界人だからでしょか?」
「そうです!異世界人だからですよ!」
「そう思う事にします。ここでの事はいい思い出にさせていただきます。ですからご安心してください。この様な事は二度とありませんから」
「はい。安心します」
すると腕を解き笑うクリスさん。
「では、何度も言いますが砂時計をよく見て下さい」
頷くと綺麗な礼をしてクリスさんは黒いドアを開けて出て行った。この空間に一人になった。どうしよう…
取りあえずイヤホンを着けて推しの声優の曲を聞きながらアイスコーヒーをゆっくり味わう。クリスさんに注意された砂時計まだ2/3も残っている。しかしあまりのんびりはして居れないから、赤いドアに移動して前に来た。
「緊張してきた…」
ドアに手を当てて叔母を思い出す。するとボンヤリと何か見えてきた。映画館のスクリーンを見ている様で叔母が見えた。前に見た夢と同じで新幹線の様だ。叔父と龍也…ん?この女性はだれ?
叔母は元気そうだ。叔母はあのラノベを優しい表情をして読んでいる。するとあの知らない女性が叔母に話しかける。
「ママりんまたそれ読んでんの⁈んでさ!またハルちんが悪女にビンタされるトコで、また怒るんでしょ⁈」
「この悪役令嬢はうちの春香に手を挙げるんだよ!腹が立つわ!」
「お袋…確かにその主人公は春香に似ているけど春香じゃ無いから」
私の話をしている。皆んな元気そうだ。安心していたら叔母が龍也の横に座る女性の手を取り
「マミちゃん。本当に龍也で良いの? この子次男なのに伯母夫婦の墓守したり、失踪している春香の件も責任持つつもりよ。申し訳ないわ…」
えっ何!龍也結婚するの!ビックリだ…龍也は結構男前で硬派。モテるクセに浮いた話か無かった。それに彼女さんもイメージが違う。昔に龍也から聞いた好きなタイプと真逆だ。派手な服装にメイクも濃い。驚いていると
「ママりん!たっつんは私の容姿では無くて、中身を見てくれる。それにハルちんやママりんやパパりんを大切に思える最高の男なんだよ。だから私もたっつんの力になりたい。ママりんもパパりんも良い人だから問題なし」
「ありがとう…」
「ママりん泣くと老けるよ!お家に帰ったらハンドマッサージしてあげる」
叔母は嬉しそうに笑う。どうやら龍也が結婚し私の両親の墓守をし私が帰って来たら面倒を見るつもりだ。嬉しい…従兄弟だし叔母が言った通り次男で義務も無いのに…
龍也は見る目ある。彼女さんは見た目は派手だし言葉遣いがアレだけど、優しい人なのは分かる。だって叔母を見る目がとても優しい。こんないいお嫁さんさんが来てくれたら安心だ。
「龍也…ごめんね…ウチの両親の供養と墓守をよろしくお願いします」
本当は直接会いお礼を言いたいけど無理だから、ドアから手を離しドアに向かって最敬礼した。
砂時計を見たらまだ時間はありそうだ。どうやら私が推測していた通り、こっちの1ヶ月は向こうの1年の様で6年経っていた。そして大人になった親友の今を見てみる。仲良い4人は何と2人結婚していて、ウチ1人は妊娠中! 私がいた時は喪女仲間で彼氏も居なかったのに…結構な衝撃だった。
赤いドアから離れ椅子に座り、音楽を聴きながら保存してあった写真をみている。本当は日本の皆んなの様子が分かったら直ぐに黒いドアに行くつもりだった。
しかし少し残っているアイスコーヒーに気付き、アイスコーヒーを飲みながらスマホを触っていたら写真を見つける。古いのは中学の卒業式の写真だった。
「懐かしい…」
写真には亡くなった父と母が写っている。スマホの画面が涙でぼやける。
黒いドアを開けると、このスマホも消える。さっきクリスさんが言った様に、この後日本に居た私の全てを手放す。レイシャルに残るって決めたのに、やぱり寂しい… 私が消えてしまいそうに感じる。
でもよく分かっている。あの黒いドア向こうには大切に思い、私を必要としてくれる人が居ること。
でも… スマホの画面には笑っている私がいる。スマホを握り暫く動けなかった。
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