時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜

いろは

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130.知っていた

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気持ちよく目が覚めると大好きな夫に抱えられ幸せな気持ちになる。目が合ったアレックスは

「シド殿と話をしたよ」

そう言いアレックスは複雑な顔をした。私はベッドから降りてアレックスの手を引き部屋の方へ。そしてソファーに座りアレックスに耳を傾ける。するとアレックスは微笑んでゆっくり話し出した。

「結論から言うとワルダン商会の不正をシド殿は知っていたよ」
「!」
そう。子爵様は全て知っていたのだ。では何で放置したのだろう?

「シド殿は初め自分の記憶している事と、ワルダン商会から送られて来る書類が違う事に気付いたそうだ。しかしここでワルダン商会を追求すると、屋敷に仕える使用人が辞めてしまうと思ったそうだ。シド殿は奥方を亡くし親身に世話をしてくれる使用人を家族の様に思っている」
「だから気付かないふりを?でもそのせいで領民が苦しんでいたのに!」

自分勝手な言い分に腹が立って思わず語義が強くなる。するとアレックスは立ち上がりテーブルから書類を持ってきて私の前に置いた。それが何か分からずアレックスを見ていたら視線で読むように促される。そして手に取り書類に目を通すと…

「これって…」

アレックスは複雑そうな顔をして頷いた。そうその書類はワルダン商会と契約している農家や職人達の名簿だった。そして名前の横に名目は分からないが金額が書いてある。

「この金額は?」
「シド殿がワルダン商会が詐取した額をご自分で調べ、領主を辞める時に自分の財産を領民に分けるつもりでいたそうだ」
「!」

金額を見るとかなりの額でこれでは子爵様の資産が残らないと言うと、どうやらこの屋敷と別荘を売ったお金だけ持ち海外移住するつもりの様だ。子爵様曰く

『私は最愛の妻を亡くし子も無く、あの時点で私の人生は終わっているんです。そんな何も無い私に屋敷の使用人や領民は気遣ってくれ私の家族となってくれました。しかし、私が老い皆に迷惑をかけてしまった。そんな私が残せるのはお金しかないのです』

子爵様はそう言いアレックスに妻を大切にする様に言ったそうだ。

「“可哀想”なんて周りが言ってはいけないけど、なんか悲しいね」

そう言うとアレックスは抱き付き

「春香…俺がそうならない様に、ずっと俺の側にいてくれ…」
「当たり前じゃん。レイラの前で誓ったんだよ。アレクが嫌だと言ってもずっと付きまとうからね」

そう言うと色っぽい顔をして至る所に口付けてくる。恥ずかしくもあり嬉しい。改めてこの人アレックスと出会えてよかったと思い泣きそうになる。
こうしてムフフなムードに流されそうになったけど連日の仲良しは体がキツく、気付かないふりをしてアレックスを引っ張り夕食を食べにダイニングルームに向かった。そしてダイニングルームに着くと改めて子爵様から謝罪された。全て吐き出せた子爵様は心なしかスッキリしたお顔をされている。
この後は照れ隠しかお酒を沢山召された子爵様の昔話に耳を傾け楽しい食事となった。
そしてダイニングで子爵様と別れ、ヘルマンさんはそのまま私達の部屋に来て明日の話をする。

「私とアレックスは朝から自警団本部でワルダンと画師の尋問を行い、昼からはワルダン商会の家宅捜索を行います」
 
そう明日はアレックスもヘルマンさんも忙しく私はお留守番。一緒に行こうと思ったけど分刻みのスケジュールに私が行けば足手纏いなる。きっと一緒に行きたいと言えばアレックスもヘルマンさんも連れてってくれるだろう。でも邪魔になるからお留守番する事になった。私の手を握ったアレックスは
 
「春香の世界の交渉術で画師をこちら側に引き入れワルダン商会の不正を摘発出来た。今日の尋問で今度はワルダンに交渉しワルダン商会と結託するプライズ男爵の不正の情報を聞き出す。最終はプライズ男爵を摘発する。これは陛下からの命なんだ」
「そうなの?」
 
そう言うと頷きアレックスは私に手紙を1枚差し出した。その手紙はローランドからだった。開封し読み出すと汗が出てくるほど極甘な愛のメッセージがつづられている。顔が熱くなるのを感じながら読み進めると、2枚目から今回の説明が始まった。

『プライズ男爵はバーミリオン侯爵や他の貴族より黒い噂が陛下の耳に入っていたが、尻尾を掴めず手をこまねいていた。そして資金源がイーダン領のワルダン商会である事を突きとめていたが、領地内の事に関しては王家は手を出せなかったのだ。そしてアレクが爵位を受けたタイミングでイーダン子爵が爵位を返上したいと申し出た。陛下はプライズ男爵を断罪するためアレクにイーダン領を与えたんだ。
 
プライズ男爵は他にも色々水面下で犯罪まがい事をしており図に乗り過ぎた。ここで不正を正し国内の貴族に見せしめとして断罪する。そしてゆくゆくはプライズ男爵領はアレクが治めるオリタ領と合併する予定だ。この辺の話は後日にゆっくり話すよ。
私は愛しい春香にもう直ぐ会えると思うと胸が高まり落ち着かない。早く春香を抱きしめ愛を捧げたいよ。後少しだ待っていてくれ』
「後少し?」

ローランドはボケてしまったのだろうか? 夫達の所は3週間滞在する事になっている。でもまだアレックスの所に来て1週と少ししか経っていない。話しが合わない事に一抹の不安を持ちつつ手紙を直した。そしてアレックスがわざと大きい咳払いをすると、そそくさとヘルマンさんが退室して行った。そしてここから激甘な夫にHPを削られ夜は更けて行った。

そして翌朝。日が昇るのと同時に起床し朝食後直ぐにアレックスとヘルマンさんと騎士達は自警団へ出発しぼっちになってしまった。
暇で屋敷内を散策すると心なしか使用人達がソワソワして落ち着かない。

『そっか!使用人の殆どはワルダン商会の息のかかった人なんだ。でも確か…』

ある事を思い出し使用人の控室へ向かう。ヘルマンさんの報告では侍女長のマーサさんはシド様の奥様の専属侍女だった人で、唯一ワルダンの息のかかっていない人だ。まだワルダンの件は終わっていないから、アレックスが居ない今頼れるのは彼女だけだ。

「マーサさんいますか?」
「まぁ!奥様。この様な所へいらっしゃらなくともお部屋にお伺いいたしますのに!」

明るく和かなマーサさんはおばあちゃんって感じで話しやすい。そして暇なので屋敷を案内して欲しいとお願いする。状況を把握しているマーサさんは他の侍女に指示を出し快く案内してくれた。

シュナイダー邸やコールマン邸程大きくは無いが、それでも広く部屋も何室もあり、日本だったら大豪邸だ。端から端まで回って1階一番奥の部屋の前に来た時、部屋からシド様が出てきた。
ご挨拶すると何をしていたのか聞かれ

「暇で屋敷をマーサさんに案内してもらってました」
「そうですか。愛しい夫君がいらっしゃらずお寂しいでしょう。良ければ私のお手伝いをしてくれせんか?」
「?」

どうやら退去にあたり荷造りをされていた様だ。

「私物は大方終わり、後は屋敷の調度品のみなので多くはありません。ほぼ処分するつもりですが、お気に召した物が有れば置いておきますよ」
「ありがとうございます。是非お手伝いさせて下さい」

こうしてシド様とマーサさんと屋敷の調度品の整理を始め、シド様とマーサさんの昔話を沢山お聞きして1日はあっという間に過ぎていった。

そして日が暮れる頃にアレックスとヘルマンさんが帰ってきた。2人は疲れているけど表情は明るい。
そして馬から降りるなり抱きつき、使用人も出迎えているのに口付けてくるアレックス。

「万事上手くいったよ。詳しくは夕食後に」

そう言い私の腰に腕を回し屋敷に入ろうとすると、使用人の1人がアレックスを呼び止め

「既にご存知と思いますが、この屋敷の使用人の殆どはワルダン商会からきております。今回事があり使用人の皆は我々も裁かれると恐れております。私達はどうなってしまうのでしょうか?」

出迎えた従僕の男性が勇気を出してアレックスに質問する。使用人達はシド様が領地を去った後の身の振りが気になっているのだろう。
するとアレックスは

「詳しくはまだ決めていない。君達はシド殿を監視するだけで何かしたわけで無いが、君達の存在はシド殿の心の支えになっていた。そこは考慮しようと思う。不安だろうがもう少し私に時間をくれ」
「アレックス様。失礼いたしました」

いつもは無表情で一見怖く見えるアレックスは、使用人を安心させる為に口角を上げ微笑んだ。そんな優しい夫に心が温かくなる。
こうして部屋に戻りアレックスから、ワルダンの尋問について報告を受ける事になった。
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