闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0351話 謎の勢力、魂殿?

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城門の口では黒々と大勢の人が集まっている場所で、人々の視線が空地にいる二人を注いでいた。

この数日間で蕭炎の名は加瑪帝国全域に広まり、云嵐宗全体と対決した伝説的人物として知られていた。

しかし彼の実力が斗王級を討伐できるという噂については、多くの人々は疑いながらも興味を持って見守っていた。

二十歳にも満たない若者が本当にそのような強さを持っているのか?

木鉄は腕組みをして黒い鉄塔のように静かに立ち、自然と周囲に圧迫感を放ちていた。

彼の気質からして明らかにモウリーよりも遥かに強い。

蕭炎の推測ではこの中年男は斗霊級の頂点に達していると思われたが、その年齢を考えると驚異的だった。

当然、長年の戦場での生死を繰り返す環境が彼を成長させたのは間違いない。

木鉄も興味津々と蕭炎の巨大な黒い尺を見つめていた。

この特殊な武器は若者の象徴となり、加瑪帝国では多くの若者がそれを模倣していた。

しかし木鉄のような眼光を持つ者には、その真似事など比較にならないことは明らかだった。

先ほど黒い尺が現れた時、蕭炎の体がわずかに沈んだように感じたのは、その重量が軽視できないことを示していた。

「モンリィ副統領が直接出馬するなら、私が『鎮鬼関』の最高首長として、この場での試合には私の規則を守ってもらう必要がある」木鉄は鼻で笑いながら地面に足を踏み出した。

その瞬間大地に亀裂が広がり、二人を囲む円形の溝が形成された。

「二つの実力は確かに強いが、もし周囲に損害が出せば修復費用もかかるので、この円を境界線とする。

どちらかが圏外に出たら負けとしよう。

ただし生死を賭ける試合ではないから、無駄な死闘は避けよう。

もしモンリィ副統領が蕭炎にやられてしまったら、私は暫くの間新たな副官を見つけるのが大変だわ。

ハハ」

木鉄の皮肉たっぷりの笑いを聞いたモンリィは唇を引き結び、陰険な目つきで蕭炎を見据えた。

血染めの大刀を斜めに構え、深い黄みがかった斗気を纏わせると、淡い血腥味が漂ってきた。



「モンリゼンの怒りなど構わんよ、モリチは笑みを浮かべながら言った。

「しかしシオン、君も油断ならぬ。

モリチが修業しているのは『黄土の法』という地属性の下位玄階功法だ。

それに同じく下位玄階の血殺刀術技も、私が相手にした場合、気をつける必要がある」

「モリチ! あなたは私の内面まで覗いてきたのか!」

木鉄の言葉に反応して、モンリゼンの顔が一瞬で真っ黒になった。

爆発的に叫んだ。

「ハハ、それ以上も言わん。

」にっこりと笑みを浮かべて、木鉄はシオンに肩をすくい、手を振ってから淡々と続けた。

「始まりなよ」

深呼吸をし、シオンは『玄重尺』の柄を握りしめ、目の前のモンリゼンを見据える。

その瞬間、薬老の声が脳裡に響く。

「私がやる。

時間を無駄にするな。

ガマ帝国から早く出ていけ。

多くの枝折れ(煩悩)を避けるためだ」

「あー」

シオンは肩をすくい、『天火三玄変』の実験を諦めた。

周囲の目が驚きで固まる中、ゆっくりと目を閉じた。

「ヒヒ、この狂気な奴め」

モンリゼンはシオンの態度を見て、激怒した。

彼の地位から見れば、こんな扱いは耐えられない。

冷笑着に体から深黄の斗気を爆発させると、城門の前で黄砂が湧き起こり、その凶暴な気配が周囲の傭兵たちを後退させる。

皆は『斗霊』という憧れの境界に目を輝かせた。

黄砂が消えると、モンリゼンは黄色い斗気の鎧を纏い、血色の大刀から鋭利な刀光が飛び出す。

シオンを見つめる彼の目に、殺意が爛然と輝く。

「この男の血殺刀術はますます上手になっている。

こんな凄まじい威圧感では、普通の四星斗霊も受け止められない」

木鉄はモンリゼンの刀勢を見て眉を顰め、シオンに目を向けた。

「彼が閉じているのは単なる大師範程度の気配だ。

これが本気か?」

突然、頭上から鋭い破風音が響き、シオンの目は開いた。

その瞳孔には青と白の炎がゆらめく。

モンリゼンの殺意が一瞬で消えたが、血刀は容赦なくシオンの首に振り下ろされた。

「ドォ!」

シオンの手が上向きになり、玄重尺が血刀と衝突した。

その接触点からエネルギーの波紋が広がり、黄色い砂嵐を引き起こした。



モリチは片手で「玄重尺(げんじゅうじゃく)」を握り、血刀(けつどう)の力でその体に圧力を加えようとしたが、その短剣はまるで凍り付いたように動かない。

彼の顔は赤くなり息も荒くなっているのに、ショウエンは平静で呼吸すら乱さない。

「ふん、すごい力だね。

この男は実力を隠している方法が不思議だ。

気配だけ見ても、誰もがただの大斗師(たいとうし)としか見なしちゃうんだ」

モリチの血刀がショウエンを阻み止める場面を見た木鉄(こてつ)は眉を顰めたように言った。

城門周辺に集まっている傭兵や兵士たちが、血刀で強敵を切り裂くモンスターのようなモンリチの姿勢を見ていても、ショウエンが軽々とその攻撃を防いだ瞬間、皆が呆然とする。

ここは「鎮鬼関(ちんきかん)」という地名で、モンリチの実力は上位5位に入る。

普段は強盗を切り殺す血刀を持っているのだ。

しかし今、その血刀は若者に阻まれている。

「くそっ、こんな程度の実力で何がおもしろいんだ」

ショウエンは顔を上げ、目の中の青白い炎が揺らぐ。

彼は手早くモンリチの胸に掌を当てた。

掌心は曲げられ、その瞬間、強力な気功(きこう)が爆発した。

「プチュ」

胸に千斤の巨石が落ちたように、モンリチの瞳孔が収縮し、突然血を噴出させた。

彼は城壁に衝突し、さらに一回目の吐血で体が丸まってしまう。

その瞬間、彼の斗気(とっき)の鎧は一撃で粉々になった。

「老宗主(ろうそうしゅ)はこの男の実力が落ちたと言っていたのに…どうしてこんなに強いのか?」

城門付近が沈黙に包まれる。

モンリチを一掌で境界外に出したショウエンを見て、誰もが言葉を失う。

二十歳未満の青年が斗王(とおう)クラスの強者を瞬殺するとは…?

「呼ん、強いね。

だから族長から『機会があればこの男に恩を売る』と言われたんだ。

その実力は価値がある」

木鉄は息を吐きながらショウエンを見つめた。

ショウエンが顔を向け、目の中の炎が消える。

彼が体の制御を取り戻した直後、体内で薬老(やくろう)の声が響いた。

「ショウエン、早くここから逃げ出せ! 今すぐ!!」



薬老の声を聞いた瞬間、蕭炎は一瞬で硬直し、次に顔色が急変した。

心臓の鼓動が突然加速する。

薬老の言葉から、何か明らかに違うものが感じられた。

喉の奥がわずかに渇き、額に冷汗が滲み出てきた。

彼は頭の中で思考を駆け巡らせた。

過去に雲山という斗宗強者に対峙した際には、薬老も全く怯まず、しかし今やなぜこんな異常な感情が出ているのか?いったい何事か?

口の端がわずかに渇き、蕭炎はその場で質問する勇気もなく、重尺を納戒に戻し、木鉄大統領に向き合って言った。

「木鉄大統領、この際、私は去る許可を得たい」

「ふん、当然だ。

私が言っていた通り、蒙力を倒せば『鎮鬼関』は自由に出入りできる」

「ありがとうございます」

周囲数百人の視線が注がれる中、蕭炎は城内へと歩き出した。

漆黒のトンネル入口で突然足を止めた。

彼が現在この場の主役であるため、その動きに合わせて周辺のささやき声が静まり返り、人々の熱い視線が青年の細い背中を捉えた。

特に女性たちは、目を潤ませて見つめている者もいた。

「木鉄大統領、この恩情はいずれ償う」蕭炎は偏頭で木鉄に声をかけた。

木鉄は驚きながらも笑み返した。

「賢明な人々と話すのは楽だ」

次に目線を蒙力副大統領に向ける。

彼の顔が赤く、モンラに支えられている姿を見て、蕭炎は城門の数百人の群衆を見渡し、しばらく黙考の末、突然体を軽々と回転させた。

その洗練された動きは闇の中に溶け込み、彼の声と共に消えた。

「モンラに伝えてほしい。

二年か五年以内に必ず帰る。

その時、雲山には首を清潔にして待ってほしい。

私が直接その命を取ろう」

城門でその淡々とした言葉が響くと、木鉄は呆然として目を見開いた。

「斗宗強者でも首を清潔にするという気概は、加マ帝国ではこの若者が初めてだろう」

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