闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0654話 帝都急行!

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「嗤!」

云督の喝声が響くや否や、米特尔家を包囲していた雲嵐宗の弟子たちが猛虎のごとく殺伐な剣気を放ち、その広大な荘園に突撃を開始した。

瞬時に爆発した戦闘音は近隣の観客たちの顔色を変えさせた。

「斬れ!」

雲嵐宗の弟子が潮のように米特ル家へ押し寄せるその時、冷たい喝声が響き渡り、次の瞬間には荘園内から弓弦を引き絞る音が連続して鳴り響いた。

たちまち無数の矢が空を切り裂き、白い波のような雲嵐宗の勢いを包み込む雨のように降り注ぐ。

この矢雨は雲嵐宗の攻撃をわずかに阻んだものの、やがて明るい光の塊が次々と浮上するとその効果も薄れ、白い波はさらに荘園へ近づき、速さの早い者たちは既に荘園の門前まで迫っていた。

「咬!」

矢が雲嵐宗の弟子を貫く音と共に、突然低く重い弓弦の音が響き、荘園から赤々と光る矢影が猛然と飛び出した。

これらの血色の矢雨は先ほどの普通の矢とは明らかに異なる。

空気を切り裂く音や、雲嵐宗の弟子たちの周囲で回転する斗気もその速度には効果がなく、余勢で背後の者まで貫く凄まじい破壊力を備えた矢は遠方の観客たちに冷汗を誘った。

赤い矢影が空を横切り、雲嵐宗の弟子たちは次々と力尽きて倒れ伏せた。

加マ帝国三大家族の頂点であるミーテル家が云嵐宗の圧力を無傷で受け止められる理由はここにあった。

しかし雲嵐宗もまた、この戦いを無血で終わらせようとしているわけではない。

雲督と雲刹が一時停止した後、同時に海波東へ暴走するや、ミーテル・テンゾーが喝破した。

「ふざけるな!おれたちのことも忘れたのか!」

「ははは、テンゾーどの。

貴方様を倒すのはまだ早い。

まずは海波東様に集中していただきたい」その言葉と共に雲嵐宗の大軍から二人の影が飛び出し、ミーテル・テンゾーの近隣で浮遊した。

「フウ!フク!」

突然現れた二人を見てテンゾーは眉を顰めた。

「雲フウ?雲フク?まさかお前たちも来ていたのか……」

この二人は雲嵐宗の長老であり、雲督・雲刹に次ぐ強者だった。

加マ帝国屈指の勢力である雲嵐宗がミーテル家に対しここまで本気を出していることがうかがえた。



「宗主はミーテル家をここまで我慢させたので、こちらも気の毒とは思っていません。

私も命令に従っているだけです」二人はミーテル・テンゾウと面識があるようだ。

そのためか、無情な言葉にも一抹の諦観が滲んでいた。

ミーテル・テンゾウは顔を曇らせ、海波東(カイホウドン)の方へ視線を向けた。

雲浮(ウンフ)と雲刹(ウンサツ)がその方へ近づいてくるのを見て、三人の強大な気魄は距離を置いても彼の体内の斗気(トキ)の流れを阻害していた。

確かに斗皇(ドウオウ)とは斗王(ドウオウ)とは比べ物にならない。

「お前には注意してやる。

この二人は私が相手にするから、自分だけに気をつけてくれ」ミーテル・テンゾウが海波東の安否を心配していると、後者は低い声でそう告げた。

その言葉を聞いたミーテル・テンゾウも不安を胸にしまい、目の前の敵を見据えた。

掌(ひら)を返すと、雄弁な斗気が体内から爆発的に湧き上がった。

海波東とは劣るものの侮れない勢いだった。

「失礼します!」

海波東側のエネルギーが解放された瞬間、雲浮二人は早速動いた。

ミーテル・テンゾウに声をかけた後、背中に翼(つばさ)を広げて黒影となって襲いかかった。

光を遮るような速度で迫ってくる二人を見据えながら、ミーテル・テンゾウの心には久々に闘志が湧き上がった。

天高く笑い声を上げた。

「よし!今日こそミーテル家が滅びようとも、雲嵐宗(ウンランソウ)は傷つけるぞ」

その笑い声と共に、ミーテル・テンゾウの背中に翼が広がり、無数の視線を浴びながらも二つの影へと突進していく。

瞬間、雷鳴のようなエネルギー爆発が加マ聖城(カマセイジョウ)の空に響き渡った!帝都(テキドウ)全住民は一斉にその戦いを見つめた。

この戦いはミーテル家の存亡を左右する。

一方、皇城(コウジョウ)のある高塔で何人かの影が黙然と立っていた。

最前列には皺だらけの麻布着物の老人がいた。

普段は平静な顔に苦悩と迷いが刻まれていた。

「おじい様、本当に何もしないんですか?」

その背後から紫金鳳冠(シキンフウカン)を戴く高身長の女性が声をかけた。

彼女はかつてミーテル・テンゾウと面識のある皇室大公主(タイヨウチユウ)ヤオヨウだった。

「あー、ヤオヨウよ。

云山(ウンサン)という老害に逆らうのは危険だ……」麻布着物の老人がため息をついた。



ガーマ帝国の加老は、孫娘であるガーマの女王が云嵐宗(雲嵐宗)の野心を指摘する言葉に胸を締め付けられた。

彼女は「煉薬師公会と三大家族と連携すればまだ抗えるが、彼らを次々と潰されれば皇室も同じ運命になる」と切実な声を上げていた。

加老の心臓は云山(雲山)という存在に圧迫されていた。

その老人の実力なら彼を殺すのは容易だろう。

もし死んだら皇室が守護者を失い、より大きな危機が襲いかかると直感していた。

しかし決定できない。

「まあ様子を見ようか」加老はため息をつき、遠くの空でエネルギー爆発する雲嵐宗との戦闘を眺めた。

夭夜(夭夜)の鋭い言葉に加老が迷っていると、煉薬師公会の最上階で法マル(法犸)という老人は城中からエネルギー爆発を見ていた。

拳が時々震えるほど心配だった。

「法マル会長」後ろの同僚が声をかけた。

法マルはガーマ帝国の煉薬師公会を率いる人物で、かつて卓蕭炎(卓蒔炎)と関係があったという。

彼は「まあ様子を見よう」と首を横に振った。

「あー」同僚もため息をついた。

ナラン家族(ナルン族)の高層ビルでは、最強のナラン桀(ナルン介)が戦況を眺めていた。

「父親、どうしますか」

「待て!」

彼は厳しい顔で返した。

云嵐宗の雲山という凄まじい存在に怯えていた。

娘のナラン嫣然(ナルン艶然)も雲嵐宗の生死門に入り、消息不明だった。

「あー、云嵐宗が嫣然のためだけに我らを許すと願うしかないか」彼は暗澹な気持ちで考えた。

「だがその時はナラン家の誇りも失われるだろう」

木家(モク族)でも三大家族として同じ苦悩があった。

彼らは云山という斗宗級の強者を前に、誰も助ける勇気が出なかった。

帝都近郊の雲嵐山上にいる雲山さえも危険だった。

「まあミーテル家が勝てば、その勢いで連携するしかないか」彼らはそう考えていた。

その頃、ガーマ帝国の百里先で巨大な飛行魔獣(フライイングモンスター)が星を追うように空を駆けた。

加マル帝国全体に震撼を与える存在が近づいていた…

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