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王都への帰還
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「お嬢様、本当にこれで王都に?」
伯爵邸の玄関前の車寄せに現れた馬車につながれた二角獣を見たイオン様は、呆けた様な顔で大きな二頭を見あげました。
大人の男性が三人乗っても疾走出来る大きな黒い身体は、近くで見ると圧倒されてしまいますがそれが二頭馬車に繋がれているのですから、見慣れていない人は恐怖を感じるかもしれません。
「ええ、これなら一日で王都に着きますから」
「なんと。ですが、そんな速度に馬車が耐えられますか」
「この馬車そのものが魔道具なのです。領地で叔父様から託されたそうです」
二角獣の背に乗り領地に向かった護衛とチヌは、領地で待っていた叔父様から魔道具を渡されながらこの馬車を使う様に言われたそうです。
二角獣の走る速度に通常の馬車は耐えられません。
普通の馬の十倍以上の速度で走るのですから、普通の馬車なら途中で車輪が外れてしまっても仕方がないのです。
「そうですか。まさか私の人生で二角獣が引く馬車に乗ることがあるとは思いませんでした」
「外見に比べて中は快適だそうです。進展がありましたので、中で話をしながら行きましょう」
話をしている時間が惜しく私は言いながら馬車の中に入ると、慣れない馬車の中を見渡しました。
二角獣が全速力を出して疾走しても耐えられる頑丈な馬車は、疾走時の振動にも耐える造りをしているそうですが、内装を見る限りは普通の貴族の乗る馬車です。
「広い、ですね」
「この馬車は、領地の魔道具師達の技術をすべて込めた造りになっているそうです」
「外見よりも広いらしいぞ。簡易だが寝台もあるし、御不浄もあるらしい」
ケネスが少しうんざりした様な顔で言うのがおかしくて、私はつい笑ってしまいました。
領地で魔道具を作っている者達を纏めているのは、叔父様です。
彼はお父様の弟であるというのになぜか魔道具造りの才があり、その発想力には目を見張るものがあります。
領地の魔道具発明が発展したのは、叔父様の存在が大きいと思います。
「それは凄いですね」
「だろう。これを設計したのは俺の父だが、あの人の発想は俺の想像の斜め上をいくんだよなあ」
ケネスのうんざりしたような言い方が、何故かとてもおかしくてつい笑ってしまうとケネスに睨まれてしまいました。
叔父様は若い頃から魔道具師の才を発揮していて、父を助けてくれていたそうです。
私が常に身に着けている魔道具も叔父様の『一つに色々効果付けるのって出来ないのかな』の一言でできた物です。
それまで魔道具は、一つに一つの機能というのが定番でそれ以外は考えもしなかったそうですが、叔父様の発想から、一つの魔道具にいくつ機能を付けられるかを魔道具師の間で競うようになったそうです。
「私は不勉強でしたが、今の世はこんな凄い魔道具があるのですね」
「まあ、この馬車を注文で作ろうとしたら、王都の貴族の屋敷が三つか四つ建てられるらしいがな」
ケネスの苦笑いは、叔父様の暴走具合を暗に説明しています。
叔父様は発想は素晴らしいのですが、それを形にするまでの費用の換算の計算が苦手です。
そこをうまく補助するのは、叔父様の長男つまりケネスのお兄様です。彼が上手く叔父様の希望を聞き予算を組んでいくのです。
「王都の貴族の屋敷が三つか四つ建つのですか」
イオン様は完全に引いています。
侯爵家の令嬢として生を受け育った私でも驚く設備なのですから、普段魔道具に縁のない神殿に属するイオン様が驚くのは無理のない話です。
「この馬車の実力は、走っている時に発揮するらしいから楽しみにとおやじが言っていたらしい」
「ああ、驚く程振動が無いと言っていたわね」
この馬車を開発している時に叔父様が言っていた言葉を思い出します。
あれは数年前の事ですが、こんな風に形になるとは思っても居ませんでした。
「馬車の性能はともかく。父からきた手紙についてイオン様にお話し致します」
「あ、はい」
まだ呆けているイオン様に、私は父からの手紙の内容を告げ始めました。
伯爵邸の玄関前の車寄せに現れた馬車につながれた二角獣を見たイオン様は、呆けた様な顔で大きな二頭を見あげました。
大人の男性が三人乗っても疾走出来る大きな黒い身体は、近くで見ると圧倒されてしまいますがそれが二頭馬車に繋がれているのですから、見慣れていない人は恐怖を感じるかもしれません。
「ええ、これなら一日で王都に着きますから」
「なんと。ですが、そんな速度に馬車が耐えられますか」
「この馬車そのものが魔道具なのです。領地で叔父様から託されたそうです」
二角獣の背に乗り領地に向かった護衛とチヌは、領地で待っていた叔父様から魔道具を渡されながらこの馬車を使う様に言われたそうです。
二角獣の走る速度に通常の馬車は耐えられません。
普通の馬の十倍以上の速度で走るのですから、普通の馬車なら途中で車輪が外れてしまっても仕方がないのです。
「そうですか。まさか私の人生で二角獣が引く馬車に乗ることがあるとは思いませんでした」
「外見に比べて中は快適だそうです。進展がありましたので、中で話をしながら行きましょう」
話をしている時間が惜しく私は言いながら馬車の中に入ると、慣れない馬車の中を見渡しました。
二角獣が全速力を出して疾走しても耐えられる頑丈な馬車は、疾走時の振動にも耐える造りをしているそうですが、内装を見る限りは普通の貴族の乗る馬車です。
「広い、ですね」
「この馬車は、領地の魔道具師達の技術をすべて込めた造りになっているそうです」
「外見よりも広いらしいぞ。簡易だが寝台もあるし、御不浄もあるらしい」
ケネスが少しうんざりした様な顔で言うのがおかしくて、私はつい笑ってしまいました。
領地で魔道具を作っている者達を纏めているのは、叔父様です。
彼はお父様の弟であるというのになぜか魔道具造りの才があり、その発想力には目を見張るものがあります。
領地の魔道具発明が発展したのは、叔父様の存在が大きいと思います。
「それは凄いですね」
「だろう。これを設計したのは俺の父だが、あの人の発想は俺の想像の斜め上をいくんだよなあ」
ケネスのうんざりしたような言い方が、何故かとてもおかしくてつい笑ってしまうとケネスに睨まれてしまいました。
叔父様は若い頃から魔道具師の才を発揮していて、父を助けてくれていたそうです。
私が常に身に着けている魔道具も叔父様の『一つに色々効果付けるのって出来ないのかな』の一言でできた物です。
それまで魔道具は、一つに一つの機能というのが定番でそれ以外は考えもしなかったそうですが、叔父様の発想から、一つの魔道具にいくつ機能を付けられるかを魔道具師の間で競うようになったそうです。
「私は不勉強でしたが、今の世はこんな凄い魔道具があるのですね」
「まあ、この馬車を注文で作ろうとしたら、王都の貴族の屋敷が三つか四つ建てられるらしいがな」
ケネスの苦笑いは、叔父様の暴走具合を暗に説明しています。
叔父様は発想は素晴らしいのですが、それを形にするまでの費用の換算の計算が苦手です。
そこをうまく補助するのは、叔父様の長男つまりケネスのお兄様です。彼が上手く叔父様の希望を聞き予算を組んでいくのです。
「王都の貴族の屋敷が三つか四つ建つのですか」
イオン様は完全に引いています。
侯爵家の令嬢として生を受け育った私でも驚く設備なのですから、普段魔道具に縁のない神殿に属するイオン様が驚くのは無理のない話です。
「この馬車の実力は、走っている時に発揮するらしいから楽しみにとおやじが言っていたらしい」
「ああ、驚く程振動が無いと言っていたわね」
この馬車を開発している時に叔父様が言っていた言葉を思い出します。
あれは数年前の事ですが、こんな風に形になるとは思っても居ませんでした。
「馬車の性能はともかく。父からきた手紙についてイオン様にお話し致します」
「あ、はい」
まだ呆けているイオン様に、私は父からの手紙の内容を告げ始めました。
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