【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

二月三日(節分の夜その後)

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「とにかく覚えている内容をメモしておこう」

 雅が帰ってから、俺は新品のノートを取り出しゲームの内容を書き出した。
 ゲームの攻略対象者は五人。

山城雅:やましろみやび:侯爵家嫡男
佐々木藤四郎:ささきとうしろう:侯爵家嫡男
川島樹里:かわしまじゅり:伯爵家嫡男
谷崎信也:たにざきしんや:公爵家次男(長男が病弱な為、時期当主と言われている)
森村喜一郎:もりむらきいちろう:伯爵家嫡男

 名前を覚えている俺って凄い。
 前世の僕、グッジョブと褒めたくなるのはゲームの出来がいまいちとか言いながら、一応全部のルートをクリアして、覚えていると分ったからだ。
 ゲームは各攻略者ルートの他、逆ハーレムエンドとお友達エンドというのがあった。
 逆ハーレムエンドは一番難易度が高く、お友達エンドは誰のルートにも入れない所謂バッドエンドに近いものだった。
 このゲームは主人公が不幸になるエンドは無く、当て馬キャラも悪役キャラもいない。
 主人公と攻略対象者以外はすべてモブだ。
 その辺りからも作成にお金が掛かってないゲームなんだろうなと予想がつく。学校とか和の国の設定とかも適当だったし。
あ、一人お助けキャラ的な人はいたな。
 主人公のクラスメイトで脇田匡:わきたたすく。男爵家三男だったかな?
お助けキャラの名前を見ると、ゲームの制作者名前くらい凝ってやれよって思いたくなる。
 恋愛のライバルは攻略対象者だし、選択肢はキャラの好感度アップ用が、キャラそれぞれに十。キャラルート分岐用で十。
 つまり一人のキャラを攻略するための選択肢を二十クリアすれば、攻略出来る。
 このゲームはパソコン用の奴だった。当時BLゲームもスマホのアプリが主流になっていてパソコン用のゲームは発売される数も少なかったから、本当に制作費の予算が無かったのかもしれない。
 イベントクリアしても絵は綺麗だったけれど得られるスチルが少なくて、ゲームとしてはやっぱりイマイチだったなと今更思う。
 各イベントをクリアして貰えるスチルが綺麗だったからやったけれど、そうじゃなきゃ全ルートクリアなんてしなかった可能性もある。だけど。

「クソゲーっといったらそうだよなあ」

 前世の俺、いくら欲求不満で鬱々してたとはいえ、こんなゲームをやり込む位なら二丁目で飲んでいた方がマシだったんじゃないかと、ちょっとゲンナリした。
 まあ、当時の俺の気持ちを代弁するなら、二丁目で飲んでいる姿なんて見られたら終わりだと思ってたんだ。
 二丁目に飲みに行く人達も色々いるのは知っていた。
 飲みに行かずに、二丁目にある蕎麦屋にへぎ蕎麦食べに行くだけって人がいたのは知ってるし、ただ飲みに行って店の人と話をするのが好きっていう人もいたってのも知ってる。
でも……だ。
 前世の僕は、一人で行って一夜のアバンチュールを楽しむなんて気持ちにはなれなかったし、積極的に動いて恋人を作るなんて気にもなれなかった。
 世間体を気にして、好きな人すら作らなかった。それが前世の僕。
 そしてそんな僕がはまっていたのは、ゲームの世界だった。
スマホのゲームだと、万が一スマホを落としたり同僚に見られた時に言い訳出来ないから、気になってるゲームがあっても出来なかった。
家に誰かを呼ぶ事なんてなかったから、パソコン限定でやるゲームは都合が良かっただなんて、小心者なのが分るエピソードだと思う。

「昔の記憶にげんなりしている場合じゃないよな。とりあえず雅ルートだけ思い出さないと」

 取りあえず主人公が転校直後のイベントを思い出しておかないとまずい。
 確か雅のイベントが一番最初にある筈だ。ルート確定前に起きる奴。

「ええと、最初は。転校してきて、校内を案内する」

 ここのイベントって重要なんだ。
 転校してきた主人公に校内を案内するのは、雅かクラス委員長の川島樹里かのどちらかになる。
 雅が案内すると、雅か佐々木藤四郎のルートに入りやすくなり、川島が案内すると他の三人のルートに入りやすくなるのだ。

「転校して来た日に、放課後用事が無い方が案内するんだったかな」

 川島の場合、掃除当番になっていて放課後に主人公に頼まれても案内が出来ない。
 雅の場合、クラスメイトのテスト勉強を付き合う約束をしていて案内出来ない。
 この用事があるから案内出来ないというのはランダムで発生して、雅ルートを最初にクリアしたかった前世の俺は、何度もリセットを繰り返した。

「あれ? テスト勉強?」

 自分で言って顔が青くなる。ちょっと待て、僕さっき何の約束した?
 雅と勉強会の約束しちゃってたよね、僕。

「ちょっと待って、あの約束。あれが選択肢に影響するってこと?」

 雅の為に頑張ろうと思ったのに、すでに邪魔してるじゃ無いか僕。

「どうしたらいいの。これ。ええと転校生いつ来るんだよ」

 焦る頭で考える。
 構内案内イベントは絶対に起さないとマズいイベントだ。
 ここを逃してしまったら、雅ルートの主人公の好感度上げは一気に難しくなってしまう。

「勉強会を止める? どうやったら不自然にならずに止められる?」

 雅は律儀だから、きっと僕の約束を優先してしまうだろう。
 主人公に一目惚れしても、先に約束していた僕との勉強会を優先して断ってしまうはずだ。

「どうしよ。校内の案内に影響しない時間に変更。そうだ、それがいい」

 もしも転校生が来たら、その日の勉強会は僕の都合で中止かもしくは夜に変更。
 時間は決めてないんだから、それは出来る筈。

「大丈夫。まだゲームは始まってないし」

 これから迂闊に雅と約束出来ないな。
 雅の恋路を邪魔しかねない。
 思い出せる限りのエピソードをノートに書きながら僕は、積極的な応援は心理的に出来なくても最低限、雅の邪魔をしないよう頑張らなきゃいけないと焦っていた。
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