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本編
これは甘い
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「ケースに入れるからあんまり意味ないけど、綺麗な色だと思って」
この機種は他にシルバー、白、黒、ベビーピンクがあり、それぞれ縁の色が二種類ある。
その中で言えば、シャンパンゴールドは選択し易い色と言えなくもない。
白、黒はありきたりでイマイチでもベビーピンクはちょっと、なんて人が選びそうな色だからだ。
「ふうん、それより食べたら?」
「あ、うん」
雅の分のコーヒーカップをお湯で温めてからコーヒーマシンをセットし、買ってきたロールサンドはお皿に移すとフォークを添える。
食堂でサンドイッチにナイフとフォークが出る学園内の店らしく、ロールサンドは一本(食パン一枚分)が三等分されていて、それが二本分がプラスチックパックに入れられている。
「美味しそう。あ、苺もちゃんと入ってる。嬉しいな」
苺クリームロールサンドの名前の通り、食パンの中に包まれているのはピンク色のクリームだ。その中に小さくカットされた苺が沢山入っている。
「ふ」
雅のコーヒーをテーブルに置いてから、自分のロールサンドのお皿とスープを置き可愛いロールサンドの見た目に喜んでいたら、雅が笑った。
「何?」
「いや、嬉しそうだなって。コーヒー貰うぞ」
「どうぞ。僕の好みのコーヒーだけど、口に合うかな?」
雅はソファー、僕は向かいのソファーには座らず床にぺたりと座る。
ソファーセットのテーブルは低めだから、床に座った方が食べやすいのだ。
「うん、美味い」
「良かった」
一口コーヒーを飲んだ後、雅にそう言われて安心して僕はロールサンドにフォークを突き刺す。
一口大にカットされたロールサンドは、苺味のクリームにカットされた苺の果肉という夢の組み合わせだった。
これをケーキじゃなくロールサンドにするのが有り難い。
コンビニ内のベーカリーは置いてあるどのパンも美味しいのだけれど、僕の一押しは色々な果物を使ったロールサンドだった。
一口大にカットされているから食べやすいというのもあるし、使った果物に合わせたクリームが美味しいのだ。
スープも美味しいし、幸せだ。
「ふっ」
「え」
カシャリ。機械音が部屋の中に響く。
あれ、今のスマホのカメラの音?
「雅?」
「悪い。あんまり幸せそうに食べるから。写真撮りたくなった」
「え」
まって、まって、現実を受け止められない。
喜んで良いのか悪いのか。
僕はフォークを握りしめたまま、雅の顔を見上げる。
「あの」
「ほら、幸せそうだろ?」
幸せ、それはそうだ。
だって好きな人と、誰にも邪魔されない場所で二人きりで、美味しいものを食べる。
それが幸せじゃなくて、何が幸せだ。
「雅、それ消して」
「なんで」
「だって、恥ずかしい」
写真の僕は、無防備な笑顔でロールサンドを食べている。
しかも唇の端にクリームがついた状態で。
「恥ずかしい?」
「だって、クリームついてる」
雅のスマホの中に自分の写真があるのは、正直嬉しい。
雅が僕の写真を撮ってくれたという事実がそこにあるのは、嬉しすぎる。
だけど、クリーム付けた間抜けな写真はちょっと嫌だ。
「ああ、これはハルらしいな」
「え、らしいって何? 雅の中で僕ってどんな存在なのつ」
貴族の間で、テーブルマナーがちゃんとしているのは当り前、それが出来ないと侮蔑の対象になってしまう。
テーブルマナーで、クリームをつけたままの食事はあり得ない。それがフルコースでも軽食でも、マナーがなってないという侮蔑の対象だ。
「あ、そういう意味じゃない。ただ、ハルはいつも美味しそうに食べるなって」
「消して」
「なんで」
「だって、そんなクリーム付けた写真恥ずかしいよ」
雅が僕の写真を撮って、自分のスマホのデータに保存している。
それって、ただただ嬉しいけれど。
行儀の悪い写真が残っているのは恥ずかしすぎる。
「どうしても駄目?」
「だって」
「誰にも見せない。約束する」
「う」
そう言われたら駄目って言えない。
だって本心では、スマホの中のデータだとしても雅に持っていて欲しい。
「じゃあ、雅の写真僕のスマホで撮ってもいい?」
隠し撮りとそうでない写真の差は、視線がどこにあるかだ。
隠し撮りは当然、視線がカメラに向いていない。
だって、それが隠し撮りだからだ。
「ハルのスマホのカメラで?」
「うん。だってそうしないと不公平だよ。僕だけ写真に撮られるなんて」
なんでもない振りで、雅と交渉する。
雅の写真が欲しい。雅に撮って良いよと許可を貰った写真。
こんなのきっと最初で最後だ。
「写真撮らせたら、この写真消さなくていいのか?」
「誰にも見せないって約束してくれるなら」
「約束するよ。勿論、誰にも見せたりしない」
だったら嬉しい。
雅だけが持っている写真なんて、僕がただ嬉しいだけだ。
「撮らせてくれる?」
「いいよ」
「ありがと」
雅の写真が撮れるのは嬉しい。
雅公認の写真。
こっそりじゃなく、雅が認識している僕が撮った写真だ。
「約束だよ。写真撮らせてね」
「ああ。でも一人は嫌だな。ハルと一緒に撮ろう」
「え」
何それ、どんなご褒美?
雅とツーショットなんて、鼻血出そう。
「一人で写真撮られるの苦手なんだ。ハルの写真は一人だったから不公平になるかな?」
「一緒でいい。ちゃんと撮らせてくれるなら」
ツーショットだよ。初のツーショット。
隠し撮りで満足していた僕には、夢の写真だよ。
ああ、興奮しすぎてロールサンドの味がしなくなって来た。
「ハルが納得するまで、何枚でも撮って良いよ。だから、もう一枚撮っていい?」
「え」
「ハルが笑った顔。撮らせてよ」
うわ。なにその笑顔。
スマホで写真を撮るポーズをしながら、雅は「もう一枚撮りたい。出来ればハルの笑顔」
なんて言うから、僕は恥ずかしくなって俯いてしまうんだ。
「ハル」
「ちょっと待って、心の準備が」
すーはーと深呼吸を繰り返し、笑顔で雅を見つめる。
「うん、笑顔。撮るよ」
笑顔のまま、カシャリと機械音を聞いてふうと息をつく。
き、緊張した。
「うん、上手く撮れた」
「見せて」
「駄目、これは見せない」
「なんで、ずるいよ」
どんな風に撮られたのか、気になるんだけど。
さっきの写真よりはマシだろうか。
「見せない替わりに、写真何枚でも撮って良いよ。ただし二人でね」
「え、いいの? じゃあ、ええと。じゃあ良いよ」
ツーショットを何枚でも撮って言い。雅の提案に僕はあっさり了承する。
こんな嬉しい提案、浮かれるなって方が無理だ。
「まだ撮れないから、後で約束だよ」
フォークを握りしめたまま、雅に念を押す。
写真欲しいんだ。雅の写真が欲しい。主人公を本気で好きになる、主人公のものになる前の雅の写真が。
「ああ、約束だ。いくらでも撮って良いよハル」
雅は笑顔で了承してくれたんだ。
この機種は他にシルバー、白、黒、ベビーピンクがあり、それぞれ縁の色が二種類ある。
その中で言えば、シャンパンゴールドは選択し易い色と言えなくもない。
白、黒はありきたりでイマイチでもベビーピンクはちょっと、なんて人が選びそうな色だからだ。
「ふうん、それより食べたら?」
「あ、うん」
雅の分のコーヒーカップをお湯で温めてからコーヒーマシンをセットし、買ってきたロールサンドはお皿に移すとフォークを添える。
食堂でサンドイッチにナイフとフォークが出る学園内の店らしく、ロールサンドは一本(食パン一枚分)が三等分されていて、それが二本分がプラスチックパックに入れられている。
「美味しそう。あ、苺もちゃんと入ってる。嬉しいな」
苺クリームロールサンドの名前の通り、食パンの中に包まれているのはピンク色のクリームだ。その中に小さくカットされた苺が沢山入っている。
「ふ」
雅のコーヒーをテーブルに置いてから、自分のロールサンドのお皿とスープを置き可愛いロールサンドの見た目に喜んでいたら、雅が笑った。
「何?」
「いや、嬉しそうだなって。コーヒー貰うぞ」
「どうぞ。僕の好みのコーヒーだけど、口に合うかな?」
雅はソファー、僕は向かいのソファーには座らず床にぺたりと座る。
ソファーセットのテーブルは低めだから、床に座った方が食べやすいのだ。
「うん、美味い」
「良かった」
一口コーヒーを飲んだ後、雅にそう言われて安心して僕はロールサンドにフォークを突き刺す。
一口大にカットされたロールサンドは、苺味のクリームにカットされた苺の果肉という夢の組み合わせだった。
これをケーキじゃなくロールサンドにするのが有り難い。
コンビニ内のベーカリーは置いてあるどのパンも美味しいのだけれど、僕の一押しは色々な果物を使ったロールサンドだった。
一口大にカットされているから食べやすいというのもあるし、使った果物に合わせたクリームが美味しいのだ。
スープも美味しいし、幸せだ。
「ふっ」
「え」
カシャリ。機械音が部屋の中に響く。
あれ、今のスマホのカメラの音?
「雅?」
「悪い。あんまり幸せそうに食べるから。写真撮りたくなった」
「え」
まって、まって、現実を受け止められない。
喜んで良いのか悪いのか。
僕はフォークを握りしめたまま、雅の顔を見上げる。
「あの」
「ほら、幸せそうだろ?」
幸せ、それはそうだ。
だって好きな人と、誰にも邪魔されない場所で二人きりで、美味しいものを食べる。
それが幸せじゃなくて、何が幸せだ。
「雅、それ消して」
「なんで」
「だって、恥ずかしい」
写真の僕は、無防備な笑顔でロールサンドを食べている。
しかも唇の端にクリームがついた状態で。
「恥ずかしい?」
「だって、クリームついてる」
雅のスマホの中に自分の写真があるのは、正直嬉しい。
雅が僕の写真を撮ってくれたという事実がそこにあるのは、嬉しすぎる。
だけど、クリーム付けた間抜けな写真はちょっと嫌だ。
「ああ、これはハルらしいな」
「え、らしいって何? 雅の中で僕ってどんな存在なのつ」
貴族の間で、テーブルマナーがちゃんとしているのは当り前、それが出来ないと侮蔑の対象になってしまう。
テーブルマナーで、クリームをつけたままの食事はあり得ない。それがフルコースでも軽食でも、マナーがなってないという侮蔑の対象だ。
「あ、そういう意味じゃない。ただ、ハルはいつも美味しそうに食べるなって」
「消して」
「なんで」
「だって、そんなクリーム付けた写真恥ずかしいよ」
雅が僕の写真を撮って、自分のスマホのデータに保存している。
それって、ただただ嬉しいけれど。
行儀の悪い写真が残っているのは恥ずかしすぎる。
「どうしても駄目?」
「だって」
「誰にも見せない。約束する」
「う」
そう言われたら駄目って言えない。
だって本心では、スマホの中のデータだとしても雅に持っていて欲しい。
「じゃあ、雅の写真僕のスマホで撮ってもいい?」
隠し撮りとそうでない写真の差は、視線がどこにあるかだ。
隠し撮りは当然、視線がカメラに向いていない。
だって、それが隠し撮りだからだ。
「ハルのスマホのカメラで?」
「うん。だってそうしないと不公平だよ。僕だけ写真に撮られるなんて」
なんでもない振りで、雅と交渉する。
雅の写真が欲しい。雅に撮って良いよと許可を貰った写真。
こんなのきっと最初で最後だ。
「写真撮らせたら、この写真消さなくていいのか?」
「誰にも見せないって約束してくれるなら」
「約束するよ。勿論、誰にも見せたりしない」
だったら嬉しい。
雅だけが持っている写真なんて、僕がただ嬉しいだけだ。
「撮らせてくれる?」
「いいよ」
「ありがと」
雅の写真が撮れるのは嬉しい。
雅公認の写真。
こっそりじゃなく、雅が認識している僕が撮った写真だ。
「約束だよ。写真撮らせてね」
「ああ。でも一人は嫌だな。ハルと一緒に撮ろう」
「え」
何それ、どんなご褒美?
雅とツーショットなんて、鼻血出そう。
「一人で写真撮られるの苦手なんだ。ハルの写真は一人だったから不公平になるかな?」
「一緒でいい。ちゃんと撮らせてくれるなら」
ツーショットだよ。初のツーショット。
隠し撮りで満足していた僕には、夢の写真だよ。
ああ、興奮しすぎてロールサンドの味がしなくなって来た。
「ハルが納得するまで、何枚でも撮って良いよ。だから、もう一枚撮っていい?」
「え」
「ハルが笑った顔。撮らせてよ」
うわ。なにその笑顔。
スマホで写真を撮るポーズをしながら、雅は「もう一枚撮りたい。出来ればハルの笑顔」
なんて言うから、僕は恥ずかしくなって俯いてしまうんだ。
「ハル」
「ちょっと待って、心の準備が」
すーはーと深呼吸を繰り返し、笑顔で雅を見つめる。
「うん、笑顔。撮るよ」
笑顔のまま、カシャリと機械音を聞いてふうと息をつく。
き、緊張した。
「うん、上手く撮れた」
「見せて」
「駄目、これは見せない」
「なんで、ずるいよ」
どんな風に撮られたのか、気になるんだけど。
さっきの写真よりはマシだろうか。
「見せない替わりに、写真何枚でも撮って良いよ。ただし二人でね」
「え、いいの? じゃあ、ええと。じゃあ良いよ」
ツーショットを何枚でも撮って言い。雅の提案に僕はあっさり了承する。
こんな嬉しい提案、浮かれるなって方が無理だ。
「まだ撮れないから、後で約束だよ」
フォークを握りしめたまま、雅に念を押す。
写真欲しいんだ。雅の写真が欲しい。主人公を本気で好きになる、主人公のものになる前の雅の写真が。
「ああ、約束だ。いくらでも撮って良いよハル」
雅は笑顔で了承してくれたんだ。
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