ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

お父さん……じゃなくて、お爺ちゃん？

お風呂で大泣きして、サイラスに此処に居ていいってお許しももらって。

ずっとサイラスの側に居てもいいんだって思ったら、私の心のモヤモヤが嘘みたいにスッキリして、心と体がとっても軽くなった。


心と体が軽くなった私は、今まで以上にサイラスのお手伝いを頑張っている。

サイラスは「そんなに頑張らなくてもいいよ」と言ってくれているけど、体が勝手に動くんだからしょうがないよね。


サイラスのお手伝いも、言葉の勉強も、頑張れば頑張るだけドンドン身に付くのが分かるから、もう少し、もう少し、と、思っちゃって、ついついやり過ぎてしまう。

最近では、心配したサイラスに「頑張り過ぎ」と止められることも珍しくない。


そして、その頑張り過ぎた結果、私の体が限界を迎えてしまったらしい。



「おはようユーカ。今日は俺より起きるのが遅いなんて、珍しいね？」


サイラスがカーテンを開けながら私に声を掛けて起こしてくれる。

けれど、今日の私は体が鉛のように重く感じてなかなか起き上がることが出来なかった。

「……う～……」

「……？ユーカ？」


ベッドの上でモゾモゾとして一向に起きない私に首を傾げつつ、サイラスがベッドの脇に腰掛ける。


「どうした？まだ眠いのか？」

「…………あたまが、ガンガンする。」

「どれ？…………あ～、熱いな。熱がある。」


寝たままの私のオデコに手を当てて、サイラスが眉間に皺を寄せた。


「頑張り過ぎたんだよ。だから言っただろ？」

「だって～」

「だってじゃない。今日は一日ベッドから出るの禁止。」

「え～……」

「え～じゃない。禁止。」


眉間に皺を寄せて言うサイラスが怒っているのは明らかだった。

でもそれが、私を心配して怒ってくれているのが分かるから、私は思わず顔がニヤけてしまう。

私を心配して怒ってくれる人がいる、という事が、こんなに嬉しいなんて知らなかった。

サイラスは、こんな時にでも私を嬉しくする天才なんだね。

ニヤニヤしている私を見て、サイラスの眉間の皺が更に深くなる。


「なんでニヤけてるのさ。俺は怒ってるんですけど。」

「はーい、しつもんでーす。おトイレはどうするんですかー。ベッドからでるのきんしだといけませーん。」


私がニヤけたまま手をあげて質問すると、サイラスも、そんな私にニヤッとして見せる。


「それは心配ない。俺がユーカを抱っこして行くから。トイレに行きたくなったらいつでも言うんだよ？」

「うおっ……。それって、おひめさまたいぐうじゃん。」


私が目を丸くすると、サイラスはクスクスと笑いながら寝ている私の布団を掛け直してくれた。


「あれ、知らなかった？ユーカは俺のお姫様なんだよ。」

「…………サイラスが、わたしにあまい……。」



ーーサイラスさんや。怒ってるんじゃなかったんですか。


サイラスは最近、私に甘々だよね。

まるで、孫を溺愛して甘やかすお爺ちゃんのようだよ。

お父さんみたいだとは思っていたけれど、ここにきてお爺ちゃんにレベルアップするとは。さすがだね。


…………怖いから言えないけど。


「……ユーカ、何か変なこと考えてない？」

「な、なにもかんがえてない。」

「…………ふ～ん。まあ、いいけど。」


ちょっと動揺してしまった私に、サイラスがジト目を向ける。

エヘヘッと笑って誤魔化す私の頬に、サイラスがハァ～と溜息を吐いてそっと触れると、心配そうに眉尻を下げた。


「頭以外に痛いところはない？朝ご飯は食べられそう？」

「だいじょーぶ。すこしなら、たべれる。」


掛け布団を顔半分まで被って上目遣いで見上げれば、サイラスは目を細めて、触っていた私の頬をスリスリと優しく撫でてくれる。


「待ってろ。すぐ作って持ってきてやるから。それまで、少し寝てな。」


私が小さく頷くのを見届けて、サイラスが部屋を出て行った。