ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里

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突然ですが…………バカンスです!

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「サイラス、見て見て!!お魚がジャンプしてる!!」

「こら、ユーカ!そんなに身を乗り出したら危ないだろ!」


はしゃぐ私の姿を見て、慌てたサイラスが大声を上げながら駆け寄ってくる。


豪華な船の甲板で手摺りから身を乗り出して海を見ていた私は、サイラスに勢いよく後ろへ引っ張られ抱き竦められてしまった。


「海に落ちちゃったらどうするの。」

「え~?大丈夫だよ、あれくらい。」

「大丈夫じゃないよ!絶対にやめて。」

「だって~、海なんて初めてなんだもん。もっと見たいよ~。」


頬を膨らませて怒るサイラスに、私もプクッと頬を膨らませて言い返す。

私が言い返すと、サイラスは「うぅっ」と呻きながら胸を押さえ悶えていた。


「ユーカ!そんな可愛い顔、俺以外には見せないでよ!?」

「えぇ?……って、痛い痛いっ!!」


言いながらギュウギュウと強く抱き締めてくるサイラスに、私は離してくれるよう必死にサイラスの背中をタップした。


ーーーーえ?なんで私達が船の上で騒いでいるのかって?

それはね、一週間前の国王様の誕生日まで遡るのでありますーーーー







「これ……は?」

「はいっ!サイラスの手作りオムライスとビーフシチューです!」


サイラスと私が国王様の誕生日プレゼントとして用意した料理を見て、国王様が目を丸くしている。


「ユーカも手伝ってくれたでしょ。2人で作ったんだよ。」


私の頭を撫でながら,照れているのかサイラスは国王様を見ずに素っ気なく答えた。

国王様は料理をジッと見つめたまま動かなくなってしまった。


「国王様?」


ーー大丈夫ですか?


「…………これを、私に?」

「はい!誕生日って、やっぱり特別な日だと思うんです。私も,自分の誕生日にサイラスがお祝いしてくれた時はとっても嬉しくて……だから、私もサイラスと一緒に何か国王様へお祝いがしたかったんです。」


私がそう言うと、国王様はボロボロと大量の涙を流し嗚咽し始めてしまった。

人目も憚らず号泣する国王様にオロオロと慌ててどうしていいか分からない私。


そんな私を見かねて、国王様の側に立っていたメイソンさんが、スッと自分のハンカチを手渡す。

夜ご飯を作りに行く途中、廊下で会ったメイソンさんに国王様の誕生日をお祝いする旨を話したら、面白そうだからと執務が終わった後なんだかんだ理由をつけて国王様について来たのだ。


国王様はハンカチを受け取ると、涙を拭い鼻水をズビビ~ッとかむ。


「……それ、返さなくていいですから。」


メイソンさんは眉間に皺を寄せて国王様を見下ろしていた。


…………メイソンさん、ありがとう。ハンカチを犠牲にしちゃってゴメンナサイ。

おかげで国王様の涙も止まったみたいです。


泣き止んだ国王様が、オムライスをスプーンで掬いパクッと口に入れた。

途端に国王様の目がウルウルとしだして、また大粒の涙を流しながらもスプーンを口に運んでいる。

「美味しい美味しい」と言って食べ進める国王様は涙で顔がグシャグシャだけど、本当にとっても嬉しそうで、幸せそうで。

その姿に、私と……そしてサイラスも、ちょっと照れ臭いけれど、なんだかとっても胸がいっぱいで。

国王様へのお祝いが成功したことに、私とサイラスは安堵し、顔を見合わせてガッツポーズをした。



「こんなに幸せな誕生日は初めてだ。ありがとう。」


オムライスとビーフシチューをペロリと完食した国王様から満面の笑みでそう言われて、私とサイラスは、もうそれだけで充分だったのだけれど。


国王様はそうじゃなかった。


「ということで、メイソン。こんなに素晴らしいプレゼントをくれた子供達に、私も何かお返しがしたいのだが。」


ジッとメイソンさんを見据える国王様に、ヤレヤレ、と言ったような深い溜息を吐くと、メイソンさんは胸ポケットからスケジュール帳らしき物を取り出し、パラパラとめくる。


「そうですね……これからの組まれている予定を、少しずつ前倒ししてこなされるのであれば、一週間後には2日……いや3日はお休みが入れられます。この機会に、ご家族で離島の別荘へ行かれてはいかがですか?」

「ふむ、良い案だな。どうだい?サイラス、ユーカ?」

「離島!?別荘!?」


なになに!?その素敵ワードは!?


思いもよらないワードが飛び出してきたのにテンションが上がり、思わずその話しに食いついてしまった。


「行ってみるかい?」

「行く行く!行きたいです!!」

「ユーカが行くなら、俺も行く。」


ハイハイ!!と、勢いよく手を挙げて答える私の頭を、国王様がクスクスと笑いながら撫でて頷く。


「よし。では決まりだな。」

「予定を組み直しますので、陛下は頑張って働いて下さい。」


スケジュール帳をパタンと閉じ「良かったですね」と、メイソンさんは私の頭を優しくひと撫でして部屋を出て行った。


ーーメイソンさん。アンタ、ええ人や。


その後、国王様は本当にメチャクチャ頑張ってくれて。

メイソンさんには、


「普段からこのくらい頑張って仕事をしてくれたらいいのに」


ってジト目を向けられながら言われていたけど。


見事、お休みをゲットしてくれたのでした。



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