ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里

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閉ざされた記憶 2 〜サイラス〜

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翌日。


「我は水遊びに抵抗は無いが海水は好まぬ。体がベトベトするのが耐えられない」

と、フータが言ったことで、海とは別荘を挟んで反対側の森に散策に来ている。


「え~?海が嫌なら旅行について来なくてもよかったじゃん。ねえ?サイラス」

「なんと!?我を置いて旅行に行くなど、あってはならぬ事だぞ!我はお主らについて来てやったのだ!」


声を荒げ文句を言うフータにジト目を向けながら抗議しているユーカ。

それを見て、俺は苦笑するしかなかった。


フータはユーカを海に入らせないように、敢えてそう言い海から俺達を遠ざけているのが、俺には分かるから。

「我も連れて行け」と、駄々をこねてこの旅行に来たのも、昨日、ユーカがあんな状態になるのを、きっと予測していたからなのだろう。


散策の途中、大きな木の下で皆と昼食をとった。

早々に食べ終えたユーカは木の上に向かってジャンプし、不死鳥の姿に戻ったフータと共に、辺りを見渡せるくらいの高さにある枝に座って景色を堪能している。

海から吹いてくる風に心地良さそうに目を細め、フータと楽しげに話しているユーカ。


そんなユーカの姿を確認する為に上を見上げていた俺の横では、同じく木の下でユーカ達を見守っていた国王が、ホッとしたように深く息を吐いた。

視線を下げ安堵した様子の国王を見ると、俺の視線に気付いた国王は俺を見てフッと微笑む。


「ユーカが元気になって良かった。フータ様のお陰だな」


その言葉に渋々頷く俺を見て、国王が更にフフッと微笑んだ。

笑われた事にムッとしながら、俺は昨日のフータとの会話を思い出していた。







ーー昨日。



「…………我と宿り木は、一心同体なのだ。宿り木が見たもの、感じたものは全て我と共有される。逆も、また然りだがな。宿り木には、宿り木に触れた者のを見通せる力があるのだ。ユーカはいつも宿り木に寄り掛かって日向ぼっこをしておるでな」


そう言って眠っているユーカの頭をそっと撫でるフータの手と眼差しは、とても優しかった。


確かに、ユーカは裏庭へ行くと宿り木の下へ行き、手で撫でたり寄り掛かったりして必ず宿り木に触れている。

宿り木から出ているオーラに癒されているのだろう。


ーーでも、そうか。

宿り木に触ると、全部を見透かされるのか。

俺は、まだ宿り木に触ったことがないからそれは無いはず。

ユーカがいつもいつも宿り木に寄り添っているのに嫉妬してしまって、触らなかっただけだけど。

これからも触るのは遠慮しておこう。


そんな事を考えていたら、フータがこっちを見てニヤリと笑った。


「なんだよ」

「ユーカの中では、お主を想う気持ちが大半を占めておる。ユーカの記憶でもお主の登場回数がダントツに多いし、ユーカの頭の中は常にサイラスでいっぱいになっておるわ。それゆえ、お主が宿り木に触れずとも、お主の情報は我もそこそこに持っておるぞ?」


ーー俺、ユーカにメチャクチャ愛されてるな。

まあ、それは俺もだし。っていうか、このポジションに俺以外の誰かがいるなんて、考えられないし、考えたくもない。

これから先もずっと、俺の一番はユーカだし、ユーカの一番も俺であってほしい。


「……お主はユーカが関わると本当に表情が豊かになるのう。普段の無表情とのギャップがあり過ぎて恐ろしいわ」

「…………ユーカ以外、どうでもいい」


ユーカをギュッと抱き締めてそう言う俺を、フータはクックッと可笑しそうに、けれどどこか嬉しそうに笑って見つめてくる。


「サイラスのその重たいくらいの愛情で、ユーカを本当の意味で救ってやって、ずっと側に居てやってくれ」

「…………そんなの……」


言われなくても、するし。

言われなくても、ずっとずっとユーカの側から離れるつもりもない。



ーーフン。


そんなの、フータに言われるまでもないから。
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